Ed's Slow Life

人生終盤のゆっくり生活をあれやこれやを書き連ねていきます。

流転

2014年10月30日 | Weblog

   

企業は利益追求が目的だから製造拠点も手狭になればより広いところへ移り、あ
るいは新しい事業が始まれば新たに別の拠点を設けたり、常に拡大、縮小、設備
の更新など時代とともに変化し続けている。


Edの勤務先の会社でも、欧州製品の一つは当初Manchesterで製造を開始しや
がて生産が増えて手狭になると北の田舎町Aycliffeへ工場を移した。10年後、企
業がより安い人件費を求めて製造拠点の海外移転が流行りだすと、工場はイギリ
スからポーランドへ移った。今また会社は更に人件費の安価なインドへ工場を移転
中である。


工場が替わる度に我々QC部門が苦労するのは、品質が安定するまで数年間を要
することで、これまでの経験では「ようやく安定して来たな・・・」とホッとするのも束
の間、安定期を数年経過するると大抵次の移転計画が持ち上がってくる。エンドレ
スなのである。


                                                 

物造りは図面があって造る人がいれば何処で造ろうが同じものが出来る、と思った
らお間違い。ましてや地域、国が違ったらそれこそ一から始めないと設計通りの製
品は出来上がらない。メーカーは心得ていて、規格や基準、検査、確認手順まで事
細かに決めているけれど、所詮は人間のやる仕事。必ず間違い、手違い、誤解は
付きもので、我々購入する側が本当に満足するような製品になるまでには紆余曲
折があるのである。


一つの物を造るという行為の中には、書いたり記録したりすることが出来ない沢山
の経験が生かされている。だから図面とか規格、手順書の類は唯の指針に過ぎな
くて、実際の作り手はベテランがこれまで積み上げてきた技を学び、自ら修練を積
んで初めて製品を作れるようになる。


                                                 

例えば先日、極めて単純なHHCという部品を新しいインド工場からサンプルを取り
寄せてみた。プレス成型した鉄板にテーパーネジを切ったボスを溶接してあり、最
後に全体に黒の塗装を施してある。これまでのポーランド製と比較してみたら、溶
接が凸凹して滑らかでなく塗装も艶がなくてくすんでいる。使用上差し支えないとは
いえ、外環品質では一ランク落ちる。単純な製品であるだけに、こういう違いは理
解してもらえないこともあるし、理解できてもなかなか差が縮まらない場合もある。


実際、新しい製造拠点からの製品に品質クレームが発生すると、客先も我々サプ
ライヤーも対応に追われててんてこ舞いする。日本では不具合が生じた場合、対
策への客先の要求は内容、時間ともに厳しいから、不慣れな新工場にとっては厳
しい経験になる。


ま、トラブルの繰り返しが品質の向上につながるという面があるから、歓迎はしない
けれどお互いに必要な経験なのかもしれない。QC(品質管理)の仕事は、品質問
題があればこその存在価値だから問題ゼロでは仕事が無くなってしまう。因果な商
売でもある。(笑)


                



最新の画像もっと見る

コメントを投稿