Ed's Slow Life

人生終盤のゆっくり生活をあれやこれやを書き連ねていきます。

危険な仕事

2014年10月23日 | Weblog

              

会社の仕事をしていて身の危険を感じたことは滅多にないのだけれど、30代前
半で従事していた舶用ターボチャージャーのサービスでは、港から通船で数千
から数万トンある本船まで行ってタラップに乗り移るか、最悪縄梯子を伝って昔の
海賊みたいによじ登ることもあるので、波が少しでも高いときは緊張した。


船も1万トンを超える大型船になると傍に行けば小山のようだし、エンジン・ルー
ムに入って下を見下ろせば目もくらむ高さである。高所恐怖症の人では務まらな
い。^^!


大きさで云えば、Edが経験した最大級の船は何と言っても8~10万トンのタン
カーである。全長300m、幅60mくらいはあるからデッキ(上甲板)は広い運動
場さながらで、船員は前後の移動に自転車を使っていた。^^!


                                             

大型舶用エンジンは当時2サイクル・ディーゼルが主流で、勤めていた会社は外
国籍の船を専門に扱っていたから、スルザーやバーマスタ・ウェイン、マンなどの
欧州メーカー製ばかりで、それらのエンジンに勤務会社のBBC製ターボ・チャー
ジャーが搭載されていた。


車や小型飛行機のエンジンしか目にしたことがない者にとっては、全ての部品が
バケモノみたいに大きくて圧倒される。ターボ・チャージャーも然り、ローター(ター
ビン+コンプレッサー)は直径1mを超え重さ500キロもある。ローター・ハウジン
グは中に人間が十分入れる位大きいい。


                                            

仕事はターボ・チャージャーの分解掃除や点検で、重量物を扱う仕事なので、実
際の作業は専属の下請け業者の作業員を5、6人連れていって行う。Ed(監督)
は船の機関長との打ち合わせと最終組立作業の確認、そして心臓部であるメイ
ン・ベアリングの締め付けボルトの安全ワイヤ掛けと試運転の立ち会いだった。


謂わば船の煙突掃除みたいな汚れ仕事だったけれど、北から南まで日本全国
の港、それに時たま台湾や韓国(出張)など、あちこち旅が出来たから仕事は楽
しかった。


そんな中、一度だけ新日鉄千葉の私設バースに停泊中のノルウェー船で若い
下級船員に脅されたことがある。


                                         

帰り間際に「チョッと自分の部屋に来て。見せたい写真がるから」と誘われて彼に
ついて行った。するとアルバムを取り出し写真を見せられた。それにはナイフを
持って仲間とふざけているような彼の姿が映っていて、似たような写真が他にも
数枚あった。酔っているようで「恰好いいだろう」とか「俺がどう見える?」とか同
じことをしつこくくり返す。適当に返事しながら帰ろうとしたら、「まだ、帰さない!」
と云って壁に備え付けの緊急用斧を手に持った。吃驚仰天。


Edは緊張のあまり脇の下から冷や汗が出てきた。成るべく彼を刺激しないよう、
云う通り椅子に座り直し、またアルバムに戻ってクドクドと、怪しい呂律で話しか
ける彼の不毛の話に付き合った。斧を握ったままなので逃げ出すわけにもいか
ず途方に暮れていたが、やがて外からドアが開いて別の船員が入ってきた。
渡りに舟で、Edはそれを契機に酔った船員から解放されたのだった。


後から聞いた話では、件の酔った船員は前の晩陸にあがってバーで呑み、日本
人と諍いを起こして袋叩きにあったという。その腹いせに日本人なら誰でも構わ
ないから脅しをかけて、憂さを晴らすつもりだったのである。飛んだ災難だった。


                                             

後から考えると唯の「脅し」だったに違いないのだが、その時は斧が凶器に思え
て心底怖か
ったのである。^^!

                   



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