日本の某大手トラック・メーカー向け半自動トランスミッションの開発に携わっていた頃、英国イートン本社から頻繁にやってきた技術者の一人に、メカニック出身のサイモンがいた。
彼は、大学卒のエンジニアたちのように難しい理論を展開するわけではないが、半自動の心臓部であるメカトロ二クス装置のチューニング(微調整)で、他のエンジニアたちが真似のできない卓越した能力を発揮した。
装置の最終設定を行う微調整段階では、客先の要求は難しさを増し、装置能力の限界に近づいてくるので、並のエンジニアでは時間ばかりかかって一向に要求に近づけないのだが、彼はそれを持ち前の鋭い感性で短時間のうちにこなしてしまう。驚くべき能力といえる。
彼は外見も一風変わっていて、耳には穴をあけて耳飾りをつけており、技術者というより芸術家のような雰囲気を漂わせていた。
開発が終わって一段落したころサイモンはイートンを辞め、友人の整備工場で働いていたが、数年してタイに移り住んだと元同僚から聞いた。
2004年10月、我々は社員旅行でタイのプーケットへ行った。サイモンがバーのオーナーになって住んでいる所が、偶々プーケットだということは予め知っていたので、夕方電話してみた。すると運良く彼は自宅に居て、突然の電話にとても驚いた様子だったが、夜彼のバーで待ち合わせることにした。
その晩8時ころ彼は数年前と少しも変わらず、元気そうな姿を現した。それからは皆で彼を囲んで、遅くまで飲んで騒いで旧交を温めたことは言うまでもない。
ここ数年はサイモンから音信がなかったが、先日突然彼からメールが舞い込んだ。内容は何の変哲もない安売りサイトの紹介だったけれど、折り返しその後どうしているか訊ねてみた。
直ぐ返事がきて現在は英国に戻ってトライク(3輪自動車・バイク)の取り扱いディーラーを目指しているのだという。タイ人の奥さんとの間に2人の子供がいるので、いずれはシンガポールでトライクの販売を手がけるつもりだとのこと。器用な彼のことだ、大好きな機械いじりも出来るし、きっと成功するにちがいない。
私が相変わらずバイクに乗っていると聞いて、趣味で旧車(49年Harley Davidson)をベースにリアに200mmの太いタイヤを履かせたマッチョなバイクを造っていると教えてくれた。
この49年式WRを・・・
こういう風に造り変える
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その仕事は彼にあってるようなきがするね。
相撲が好きで休憩所でよく一緒に見たよ。
貴乃花が大好きだった。曙 達がいたんだけど好きかと聞いたら I hate him.
と言ったのを覚えてる。
元気そうで何よりです。
サイモンとは、不思議と忘れたころにつながりが復活する。
人生、楽しんでいるように見受けました。