「いじめと自殺の因果関係を認める可能性が高い」。
大津市の市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、遺族が市と加害者とされる同級生3人らに損害賠償を求めた大津地裁での訴訟で、市側は17日の第2回口頭弁論で「いじめを苦にしての自殺と断じることはできない」としたこれまでの主張を一変させた。
男子生徒の父親(47)は閉廷後、代理人を通じて「息子は学校に見殺しにされた気がしてならない」と改めて学校側を批判した。
この日の法廷には父親も出廷。
淡々と市の主張を読み上げる市側代理人の話を熱心に書き留めていた。
遺族の「教員はいじめを現認していた」との主張に対し、市側はこれまで教諭の認識について「具体的な事実の摘示(提示)がない。
誰がいじめの事実を目撃したのか明らかにされたい(してほしい)」などの主張を繰り返していた。
しかしこの日、市側は「法廷に積極的に資料を出し、真相解明のため丁寧に調査したい」とし、外部調査委員会の調査や情報開示にも誠実に対応する姿勢を示した。
父親は閉廷後、「越直美市長の因果関係を認める発言は評価する」とコメントしたが、沢村憲次教育長が訴訟継続の意向を示しているため、「市長と教育長の発言に相違があり、信じていいのか」と不信感を示した。
市側代理人は「学校、市教委の調査、公表が不十分だったため、ご遺族様や、絶望のふちにあって死を選ばざるを得なかったご本人様に大変ご迷惑をおかけした。
市長に代わって深くおわび申し上げます」とのメモを報道陣に読み上げた。
大津地裁では341人が傍聴券を求めて列を作り、いじめの被害者や子供を失ったことのある父親の姿もあった。
09年5月に長女を自殺で亡くした滋賀県守山市の小林恵さん(45)は、「親は子を失って自分を責めているのに、周囲から『なんで異変に気付かない』と言われるとつらい」と遺族の心情をおもんぱかった。
また、いじめ問題に取り組む市民団体「全国学校事故・事件を語る会」のメンバーで、いじめを受けたことのある小西史晃さん(36)=兵庫県姫路市=は「裁判で市教委や学校のいじめに対する認識の甘さを明らかにしてほしい」と話した。
【加藤明子、村瀬優子、前本麻有、石川勝義】