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リールの移動祝祭日



リール名物、薄焼きで柔らかいゴーフルで有名なMeert。
東京にも最近、リールのゴーフルのスタイルのお店ができたそう。


在ブリュッセルの仲良しと、ベルギー国境を南へ超えたところにある北フランスの街、リールへ遊びに行った。

北ベルギーにあり、オランダにほど近いアントワープに行くかリールへ行くか迷いに迷った挙句の決断だった。


適度な大きさがあるリールの街、「北のパリ」と呼ばれて親しまれ、のんびり落ち着き、人も多くなく、庶民的でカジュアル、手頃でおいしいお店が多く、しかもパリにある高級ブティック(エルメスやルイ・ヴィトンなど)も軒を並べ、日帰りで行くにはもってこいなのだ。
ブルージュから車で50分、ブリュッセルから1時間15分ほどの距離。

かたやオランダとの国境間近にあるベルギーのアントワープは、洗練されておしゃれ、シックなレストランの数々は星つきがリールよりはるかに多く、それなりの物価である。

この2つの街、フラマン圏の街だけあって、雰囲気が似ているところがある。わたしは両方とも好きだ。


さて、ブルージュからわたしが先に到着すると、リールののどかな街にしては混雑している様子。目抜き通りは歩行者天国になっている。
今日はフランス名物のデモであるのかしら...と中心へ近づくと、これはいけない、大変な日に来てしまった! や、やばい、やばい、ブラデリなのだ、今日は!

おそろしきブラデリ。



夫に「こういう状態だから約束の時間には帰れそうにもない」と送った写真。


ブラデリとは商店街のお祭りである(笑)。

開催地域の住人が、老若男女手に手を取り全員押し寄せるのではないかと思われるほどの混雑になるのが常だ。

店は割引や安売りをし、屋台が出、屋根裏の不用品を商いする個人がピクニックシートを広げて片方の靴だけをも売ろうとする...
移動遊園地、音楽隊、ダンスグループ、大道芸人、コンサート...

それだけ混むかというとですね、エルメスなんかは人の来襲を恐れてブラデリの週末は閉店してしまうほど!

ビールやワインを片手に練り歩く人々で路上は立錐の余地もなく、こちらから行く人と向こうから来る人、立ち止まって踊り出す人で満員電車のようだ...誰かがつまづきでもしたら将棋倒しの悲惨が待っているのが想像できる。もういやー!

それでもわたしの友達は、始終にこにこしておられた。
興味の範囲がものすごく広く、ノリが良く、センスもいいこんな人、わたしの友達に多い。

人ごみをかき分けてわたしを駅まで送って行ってくれた後も、激混みの街に戻り、パンとお菓子を買ってブリュッセルへ帰ったそうである。最後まで楽しんでおられてなにより。


夫にベルギー側の国境の街、コルトレイクで拾われ、直で英国へ戻るためカレーへ向かう途中、リールの街をかすめた。
と、激しい雷雨。
リールのブラデリに集う人々はずぶ濡れだろう、それでも彼らは夜更けまで路上のパーティーで踊り明かすのだろう...

また行きたいなー
リールがのどかさを取り戻した時に。



このランチのデザートが最高だった...
3種類のいちじくが3種類の方法で調理され(キャラメライズ、コンポートとか)、
ソルベはなんとビールのソルベ、そしてチョコレートのソース
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魔法の領域 @ブルージュ





ブルージュ、ブルグ広場 22時半。

この時間、ここを通りがかるたびに、ベルギー出身のシュルレアリスムの画家ルネ・マグリット『光の帝国』The Empire of Lightシリーズを思い出す。

"the night landscape enigmatically includes a bright daylight sky"

「夜景には不可解に明るい昼の空が含まれている」

あれである。


「絵の概念、つまり理念(あるべき姿)は絵の中には見えません。理念(あるべき姿)は目で見ることができません。
(一方で)絵に表現されているのは目に見えるものであり、それらは観念化(人間があるものについて心中にもつ表象、イメージ)されたものに違いありません。

このように、『光の帝国』The Empire of Lightの中に表現されているのは、私のイメージとしての夜と昼の空であり(中略)
この風景は夜を連想させ、空は昼を連想させます。
私はこの力をこう呼んでいます。詩、と。」




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夏休み明けのブルージュ



何はなくともVan Mullenのクロワッサン。


インドネシアからイングランドへ帰り、夏休みのしめくくりは帰省先、ベルギーのブルージュで。




新型コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻によって、観光都市は大打撃を受けたようなのが、商店街の歯の抜け方からもうかがえる。
薄汚れたショウウインドウに貼られた「賃貸」の張り紙が侘しい。

営業中の店内は、店によっては、季節の商品の並び替えをしているのか物が少ないのか、よく分からないところもある。
棚には、「この店ってこういうものを扱っていたっけ?」というような安物を置いてあったりし、もの悲しい。
売り手も買い手も懐具合が寂しいのか...

マーケットが縮小する中、企業は利益を追求するため賃金などのコストをカット、結果、生活が苦しくなった労働者=消費者はさらに安い商品を求める、という負のスパイラル。

この負のスパイラルは、グローバル・サウスの労働者(国内にもグローバル・サウスはある)を搾取し、彼らの暮らしや地球環境を破壊し続けている。これが「豊かな先進国」の現実だ。




ホテルは経営陣を変え、化粧直しし、客の復帰を狙って部屋を増築したり、これから取りかかる向きもあるようだが、大丈夫なのだろうか。

銀行が入り、投資されるとなるとコンサルが入り、「この大きい庭は何のカネも産まないけれど、ここに25室を新築したらそれだけのカネが入ってきますよ...」「”ブルージュ”がブランドであるうちに、あとひと儲けしませんか」てな悪魔の囁きをしたのだろう。


ブルージュといえば、14世紀以降は忘れられた地方都市に成り下がってしまったが、ベルギー国内ではいまだに最も経済状況や生活水準の高い地域ではある。その街で余所者のわたしがそんな心配をしてしまう、秋の入口。




それでも9月1日は学校が一斉に始まる日だった。
放課後の日に焼けた子供たちが、三々五々ワッフルやアイスクリームを立ち食いしていたり、雑貨屋さんで可愛いペンやノートを物色しているのとすれ違うのは大変好ましかった。



義理の母のおすすめのCantine Copin。
アタクシが飲んでいるのはノンアルコールのベルギー・ビール。大変美味であった。


しかも今回は久しぶりに手頃でおいしいレストラン、「明日にでもまた食べに来たいくらい!」というレベルのお店を発見。オープンキッチンで女性オーナー・シェフ!
ブルージュの旧市街の外ではあるが、足があるなら(歩いたら30分くらいかかる)超おすすめです。



こちらのタコ、最高だったよ...



旧ブラシ工場という建物もいい。どんなブラシを作っていたのかなあ...絵筆? ホウキ? ヘアブラシ? タワシ? 歯ブラシ? 
こういう産業がブルージュにもどってきたらいいなあ。
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日はまた昇る




前回の「日没を引き継いで、今回は月夜」と書いたのを読まれて、「あ、次回は絶対に夜明けだ」と思われた方、いらっしゃるに違いない。




レヴィ=ストロース大先生は『悲しき熱帯』の中で、「朝日」にはそっけない。

「曙光は人間に、寒暖計や気圧計や、文明化されていない人々にとっては月の満ち欠けや鳥の飛翔、あるいは潮の干満などの補いになる指示を与えるに過ぎない」
(レヴィ=ストロース著 川田順造訳『悲しき熱帯』中公クラシックス 97ページ)

わたしはつい拝みたくなるけど。「希望」だから。
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