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krystian zimerman @ klavier-festival ruhr 2019





アメリカ旅行から帰宅して翌々日にドイツへ飛んだのはひとえにクリスティアン・ツィマーマンのエッセンでのピアノ・リサイタルを見たいからだった。

ちなみにロンドン・ヒースローからエッセン最寄りのデュッセルドルフまでは飛行時間55分、レンタカーでエッセンまで30分ほどの距離だから、大阪から東京にコンサートを見に行くくらいの感覚...そう聞くと大したことないでしょう。


昨日は宿泊中のケルン郊外のホテルからエッセンまで、デュッセルドルフをかするようにして車で50分ほどの距離だった。

20時の開演よりもとにかく早めに到着したかったので、午後はプールで泳いでスチームサウナに入り、十分デトックスして念入りに厚化粧してから17時にはホテルを出た。

反対車線は渋滞がひどかったが、エッセン行きはすいすい行き、18時には劇場近くの駐車場に車を入れて劇場に隣接しているホテルのロビーでお茶を飲んだ。
わたしたちの他にも、いかにも観客らしくおしゃれをした老夫婦が何組もいて、ウエイトレスさんは「リサイタル、楽しんでくださいね」と声をかけてくれた。


この劇場は写真のようにとてもこぢんまりしているが、綺麗に整備された公園の中に建っていて、こういうのを見ると大陸ヨーロッパの地方都市の文化度の高さが(英国に比べて)うらやましくなる。エッセンの街自体も、比較的新興の工業都市と聞いていた割にはかなり小綺麗で、また機会があればゆっくり訪れてみたいと思わされた。




今年もペライアがロンドンのリサイタルをキャンセルし、去年から連続でとても心配している。
ツィマーマンも東京公演をキャンセルとか友達が言っていたので、今、ショパンのスケルツォ4曲とブラームスのソナタ3番で大陸ヨーロッパをツアーしているらしいと知り(気のせいかもしれないが、彼はなかなかロンドンへ来ない。去年はバーンスタインのコンチェルトを。)、来ないなら会いに行くのみ、とスケジュールを追ってはいた。

ドイツやスイスの大都市では早くから完売し、チケットの値段も高く、そんな中でエッセンの公演はとても安価で前日まで券が残っていたのである。さらに会場が小さいのに惹かれる。ケルンとデュッセルドルフの近くで便利だし、これは夫の仕事についていくしかない。

ちなみに一番安い席と一番高いチケットは早く売り切れていた。わたしの買った二番目に高い席は81ユーロで約1万円ほど。二番目に安い席などは37ユーロ。驚きの価格設定じゃないですか。
席次は15列目の左側だったので、上の写真で見るよりももっと近く、彼の手の動きがばっちり見え、例のハミングもよく聞こえた(笑)。

アンコールの前の彼自身の話によると、昨夜使ったスタインウェイのピアノは3年間修理に出して帰って来たばかりのもので、3年ぶりに最初に弾くのだと。

そのせいなのかどうかはわからないが、アンコールの3曲を含めて最初から最後まで楽譜を使った。
スケルツォの3番と4番で暗譜が怪しくなり(譜をめくるのも忘れておられた)、まあ誤魔化すのも上手かったのだが(笑)こういう方にもそういうことがあるのかと。
もちろんそんなことは全く問題にならないくらい素晴らしい演奏で、生演奏の楽しさの神髄が炸裂!!!!

ソナタはこのソナタの良さが、えもいわれぬほど際立っていた。
スケルツォの一番はシロウトのわたしにも曲の構成がきっちりわかるような気がするほど一つ一つの音がこの上なく美しく、全体としてもこの上なく美しく、ものすごく下手な例え(誤解を招きたくないの)をするとすれば、ヒューストンで見たハリー・ウィンストンのダイヤモンドのネックレスのようだった。エリザベス女王がつけておられるようなネックレス。


来月、ソコロフがこの近くでリサイタルを開くそうで、こちらもとても行きたいのだ。


さて、ドイツは今日でさようなら。今夜からは...
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althof grandhotel schloss bensberg

 





アメリカ南部ヒューストンからロンドン・ヒースロー(と自宅)を経由し、裏側に飛んできた(はい、凄まじい時差ボケです...眠れません)。


ドイツの西部、ケルンとデュッセルドルフ(この間わずか39キロ、車で40分)に夫の仕事の関係で来、ついでにエッセン(デュッセルドルフから車で30分)で、クリスティアン・ツィマーマンのピアノ・リサイタルを見ようという魂胆なのである。


ところで、当初、ケルンとデュッセルドルフに宿泊する予定だったのだが、ドイツ・オフィスの人の熱いおすすめでケルンから10キロほど先の小さな街、ベルギッシュ・グラードバッハ(Bergisch Gladbach)へ来た。

実は全く気が進まなかった。
わたしは美術館や教会を訪れたり、街歩きをするのが大好きなので、とにかく便利な街中に宿泊したい。しかも宿の質はとても大切に思っていて、趣味がよくシックで恭しいホテルが大好きだ。

この、ケルンから10キロ先にあるホテル、プファルツ選帝侯ヨハン・ヴィルヘルム(在位1690ー1716)が築城した後期バロックの建築物を改装したホテルで、威風堂々とした姿は象徴的でさえある。


予約時に写真で見たところ、あまりよく思わなかった。よくある、田舎の、オープン当時は超高級で華やかだっただろう類の大きなホテル。今は手入れも行き届かず、されど投資されるあてもなく、間に合わせが続き、寂れゆくままになったがっかりホテル。そんな先入観で、ホテルの内容は見もしなかった。


ところが、だ。

まず、なんと敷地内にミシュラン3つ星のヴァンドームというレストランがある。チェックイン時に聞いて驚いた。

これだけでもどんな内容のホテルかが知れようというものだが、場所柄と時期もあるのか、レストランは明日の予約がすんなり取れた。

あちこちに設えられた屋外のテラス席やロビーのスペースのデザイン、部屋のデザインや内容も素晴らしい。
廊下が広く、天井が高い。大階段は美術館のそれのようだ。
隅から隅まで手入れが行き届いている。

もともとドイツの効率は素晴らしいと思っていて、例えばドイツ風のダブルベッドのデュべ(掛け布団)が大きな一枚ではなく、シングル2枚になっているのの大変なファンだ。コンセントの場所や、タオルラックの多さ、収納の広さと工夫も素晴らしい。
いくらデザインが優れていたり、高級な設えや贅沢なスペースがあっても、バスルームにトイレタリーを置く場所がまず計算に入れられていなかったり、化粧鏡の角度が悪かったり、ミネラル・ウォーターをふんだんに置いていなかったりするのはよろしくない。

そしてスタッフの気持ちの良さ。わたし(と夫も)がどこへ行っても「とっても良くしてもらった!」とすぐに機嫌をよくするおめでたいタイプだとしても。

夜、8時半過ぎに到着したばかりなので(それが上の写真)、まだ他に探検の余地があるものの、このホテル、何と言ってもたいへん値ごろなのである!!! 
高価でいいホテルならいくらでも紹介できるが、この質でこの料金はまずあまりないですもんね...

ケルンやデュッセルドルフでチェーンの5つ星に泊まるのなら、こちらをちょっと考えてみてはいかがかと書いてみた。

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テキサス共和国






たった今、アメリカのテキサス州から10時間の飛行でロンドンへ戻って来た。

洗濯物を電光石火で仕分け、シャワーを浴び、トーストを焼いてコーヒーを入れた。


アメリカへ行くのは2年半ぶりだった。
友人家族が至れり尽くせり世話をしてくれたおかげが大きいが、アメリカ南部、期待以上にとても楽しかった。

ニューヨークやロサンゼルスといった世界都市よりも、ヒューストンくらいの地方都市の方が好みかもしれない。

人がよりフレンドリー、食べ物はおいしいく(ステーキハウス万歳)、天気はよく、緑豊かな自然は美しく...
駐車場を探し回る必要などひとつもなく、スペースの大きさやそれが無料なこと、高速道路の車線の広さ、どこまでも続く一本の道路、トイレの広さ、スーパーマーケットの大きさ、豊かな品揃え...
大きいことはいいことだ! 大きいことはすなわち豊かさだ! です。

写真はヒューストンはバイユーのいわゆる「邸宅」美術館で、ヒューストンの名士(美術館やオーケストラを設立した一家)の元お宅。アーリー・アメリカン以来の家具コレクションを収めている。この家族が設立したファイン・アート・ミュージアムも想像以上によかった。メムリンクのとても素敵な絵があった。

このアメリカの独特の懐かしいような、そして同時に新しいような雰囲気。
凛々しい独立心と、そして同時に何かから切り離されて寂しいような雰囲気。
これはどういうものなのだろう(これをアメリカの美と呼んでもいい)。

ヒントになるおもしろい話を思い出した。
川北稔『世界システム論講義』によると、「『アメリカ人』のアイデンティティは、砂糖入り紅茶とそれにまつわる文化-茶の作法から、ティー・タオルやカップ、スプーン、砂糖壺など-の、『イギリス生活文化』を真似ることでいったん統合され、今度は、これを『共同して』拒否することによってかたちづくられたのである」「『イギリス商品』が植民地の各地にくまなく行き渡り、その消費がひとつに統合された価値観で結びついていたからこそ、それをボイコットすることで全体の強化されることになったのである」



明日からはドイツへ行く。
デュッセルドルフとケルンへは夫の仕事関係で、そしてエッセンへはクリスティアン・ツィマーマン(Krystian Zimerman)のピアノ・リサイタルを鑑賞に行くのです...

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houston calling





NASAでは超優秀な人々のひたむきさといじらしさに心を打たれた
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