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フランドル・スタイル




ブリュッセルの友達が、ブルージュで宿泊中のホテルへ来てくれ、ランチ前にホテルでコーヒーを飲んだ。

彼女は美しいものが大好きで、とてもセンスのいい人だ。




もちろん彼女はこのホテルも好き...

しばしキッチンやドローイング・ルームを見てまわり、目の保養をする。

そしてライブラリー(図書室)に落ち着き、ベルギーのフランダース地方に独特なインテリア、「フランドル・スタイル」について話し合った。

最近ではインテリアの世界もグローバル化が進み、昔ほどは差異も大きくなく、共通点の方が多いのかもしれないが。




フランドル・スタイルは、やはり魅力的な例えばフランスのフレンチ・カントリー・スタイルのインテリアや、イタリアのトスカニーのスタイルとは似ているようで違う。

モダンとクラシックの絶妙なミックス、時には過剰なくらいの装飾をほどこしつつも絶妙なバランスとハーモニー。

あれ、それはフレンチ・カントリー・スタイルにもトスカニーのスタイルにも共通していることか...

ということは何が違うのだろう。
各地の風土に合った生活に根ざした「用の美」や、土地の人々が昔から当たり前と思っていることの違いなのだろうか。

共通点はどこもカトリックだということ...

もちろん、「国民性」というのは近代の理念にすぎず、衣食住の好みや美意識にしても、国境を境にきっぱりと異なったりするわけではない。




何が違うのだろう...とあれこれと。

ランチの後は、最近ではぐっと減ってしまった個人のアンティーク屋さんをのぞいたり、またコーヒーを飲みに行ったり。


以下、わたしの超個人的な印象をまとめてみた。根拠はない。

フレンチ・カントリー・スタイルは、柔らかな色調と自然な素材、ロココのカジュアル化、ゆるいロマンティックさが特徴。

トスカニーのスタイルは、自然の豊かさと親しさを反映し、大きな窓や扉などが開放的、アースカラーが中心。直線的なモダン・デザインにも合う。

フランドル・スタイルは、光のなかに沈むような深みがあり、安らぎと敬虔さ、歴史を感じさせるが、色のトーン次第でかなりモダンになる。




さらに詳しく...

フレンチ・カントリー・スタイル (French Country Style)
洗いたてのリネンの色。
フラゴナールの絵の色。

ベージュ、エクリュ、浅いグレー、ソフトでナチュラル。
ナチュラル素材、木材、石材、リネン、コットン、レース、絹など、軽さを好む。

家具などの基調は、アンティークやヴィンテージ風が中心で、曲線的で優美なデザイン。あるいは脱構築された田舎風。

花柄やチェック、ストライプなども取り入れ、素朴でありながらおしゃれで居心地のいい雰囲気。

ゆるいロマンティック、温かみがあるエレガンス、リラックスしたロココ。


イタリアのトスカニーのスタイル (Tuscan Style)
漆喰の白や鉄の黒に、シックなアースカラー、はちみつ色の石材、テラコッタ、レンガ、オリーヴ・グリーン、キャンティの色など。
マザッチオの色。

外部に親しく開放的につながった大きな窓や扉、葡萄棚やオリーヴの樹々の雰囲気。
タイル、モザイク、手描きの陶器。

開放的でありながら同時に暖かい雰囲気を持ち、自然との調和を意識しつつ、絶妙にモダン・デザインと合う。

素朴でモダン。それはつまり洗練。




ベルギーのフランドル・スタイル (Flemish Style)
漆喰の白に木材の梁の色。ややダークな色合い、グレー、ベージュ、黒、ブラウン、ダーク・ブルーに補色を大胆に合わせたりする。

北の国の太陽が、運河や海に反射した靄(もや)のような光。光と翳り。フェルメールの色。

重そうな木材、梁、石材、リネン、ウール、絹、精巧なレース。

歴史を感じる家具のシンプルで力強いライン、ゴシック的な装飾や、タペストリー、ゴブラン織り、カーペット、重厚なドア、鉄の金具などは大きな暖炉とよく合う。
田舎の大別荘の雰囲気。

中世、ヨーロッパで最も繁栄した最先端都市の夢の残骸。

色のトーンを下げたならば、一気にモダン・クラシックに。


と、考えて、わたしが一番好みなのは、イスラム美術のスパイスを振りかけたヴェネツィアン・スタイル、かな。
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