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Brugge Style
onegin 2020
昨夜もロイヤル・バレエOnegin 『オネーギン』を見た。
主役の地味な本の虫、のちに社交界の華となるタチアナはMarianela Nunez、タチアナの理想の具現でひねた青年オネーギンは平野亮一さん。
彼らの対照として描かれる素朴で幸福なカップル、タチアナの妹役は高田茜さん、フィアンセの詩人で純な青年はNicol Edmonds。
おとといのNatalia Osipovaが主役の日もすばらしかったが、昨夜もまた別のキャラクターアプローチが見られ、本当によかった!
Marianela Nunezのタチアナ、地味。どこまでも地味。
Natalia Osipovaのタチアナが、恋に落ちてやり場のない激しい情熱(彼女はフランスの恋愛小説を読んで恋愛予行演習を何度も繰り返していたから、なおさら)に苦しむとしたら、Marianela Nunezのタチアナは恋に報われぬ深い深い悲しみと絶望、静かな怒りを表現していたと思う。
他にも例えば引き裂かれた手紙を手に受けるシーン一つとっても、受け取り方や落とすタイミングもダンサーによって全然違う。
演じるダンサーによってこうも違い、しかもすべてがその役柄に収斂していく様がバレエのおもしろさのひとつである。
オネーギンの平野さんは、1幕目は世の中や社交界や人間関係、タチアナに対する「無関心」というより「無存在」。内にこもり、自己の存在を消してしまったような感じ。
それが3幕目に立場が逆転し、自分がタチアナに恋するようになると、まるで打ち捨てられた子犬のようになって彼女にすがっていく様子がコントラストとなり、わたしのまわりの観客も「すごかった!」と大絶賛だった。
Marianela Nunezはもちろんすごかった。
彼女もカーテンコールの時に大泣きしていたので、タチアナという役柄はのりうつってくる「そういう」役なのだな、と。
高田茜さんはガラスの細工のように繊細で透明感があって美しく、しかも強靭さが他の誰よりも目立っていてすばらしかったです。
国籍でダンサーをくくるつもりはないが、日本人バレリーナの美しさはまるで天上の女人のようだ。
(写真はROHより拝借。数年前のもので、ここでは平野さんはタチアナと結婚する公爵役に扮しておられる)
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