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Brugge Style
クララの別の夢
クララの、ライト版とはまた違った夢の話。
イングリッシュ・ナショナル・バレエの「くるみ割り人形」は比較的新しいWayne Eagling版だ。
プロットだけを取り上げれば、わたしはこちらが好きだ。
幸せな幼い少女がクリスマスの夜に夢を見る。
自分が美しい女性に成長し、憧れの男性が王子様として現れ、夢の国で踊る。
全てが彼女の素敵な夢の話として語られているので、助長な説明もない(夢の国では誰かが魔法によって人形に変えられているなど普通のハナシなのである)。
ドロッセルマイヤーさんは魔法使い(この時代の時計技師は科学者扱いでからくり人形なども製作しており、不思議な能力を持った「魔法使い」とみなされていた)というよりも、ただの手品師・人形使いのおじさんとして登場する。クララの夢の世界もパペット・ショウの形をとっている。
ライト版とは大きく違う。
ライト版では、魔法使いたるドロッセルマイヤーは全てのなりゆきを計算しつくし、計画する。
少女は魔法使いによって選ばれた者であり、魔法使いの息子がかけられた呪い(人形の形にされている)を解く使命を負って夢の世界へ誘われる。
少女の活躍で呪いは解け、夢の国でその女王と出会った少女は功績をたたえられて華やかな踊りの宴に誘われる。
ドロッセルマイヤーこそが狂言回しであり、不思議な能力を備えた彼なしではこのハナシが語られることはないのである。
ただ、振り付けやストーリーの「語り方」になるとイーグリング版は助長で全然ぱっとしない。
2幕目のパ・ド・ドゥでは、プチパの振り付けが丸ごと残っているのがありがたいほどだ。
うちの娘はライト版の、若くナイーブな少女が夢の国の女王に会うというのが妥当だというが、わたしは少女が若くナイーブだからこそ、彼女自身が夢の国で女王になって妥当、という意見。
......
アリーナ・コジョカルがクララだと思い込んで取った、今シーズンロンドンでの初演だった。
わたしがひそかに贔屓にしている金原里奈さんが雪の精を踊っていて、ほんとうに目立っていた。
彼女はアーティスト(バレエ団では最下のランク)でありながら、今シーズン、クララを踊るので、タマラ・ロホの期待を担っていると考えて差し支えないだろう。来年もご活躍を心から祈っている。
子供のクララを踊っていた小学生Sophia Muchaが驚くほど上手だったし、やっぱりオーケストラがものすごく素晴らしかった。
今夜の夜間飛行で行くニューヨークで、ニューヨーク・シティー・バレエのバランシン版「くるみ割り人形」も見てきます!
(写真はballet.org.ukから、シュガー・プラム妖精の女王に扮したアリーナ・コジョカル)
ここに書くのもなんだが、アメリカといえば、
森本あんり著「反知性主義 アメリカが生んだ『熱病』の正体」(新潮社)を
おもしろすぎて一気読み。
なぜアメリカが「トランプ」のような大統領を選ぶのかを歴史を検証しながら
(この本は2015年8月出版の本)詳しく書かれている。
お正月休みに超オススメです!!
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