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Brugge Style
レストランと都市伝説
ニッパチとはよく言ったもので、観光地ブルージュも正月と復活祭に挟まれた2月は比較的閑散とする。
もちろんホテルやレストランも普段より静かだ。
昨夜のためにレストランに予約を入れた夫は、もしその時間帯の客が通常のレストランスペースに比して少なすぎる場合は、そこにではなく、小部屋にテーブルを用意するように頼んだほどだ。
21時頃訪れると客はわれわれだけだった。それで馴染みのウエイター氏がいろいろ細やかに世話を焼いてくれるだけでなく、世間話で盛り上げてくれ(笑)、とてもカジュアルな夕食になった。
その時に聞いた話だが、ベルギーのとある三つ星レストランは、ある種のお客たちに後日手紙を出すそうである。
「マナーの悪かった人」
「服装がイケてなかった人」
「十分なお金を使わなかった人」
そこには二度と来店なきようにと、慇懃無礼にしたためてあるという...
これは悪質なデマだそうだ。オーナーシェフ自身がTVで怒り心頭、冤罪を訴えていたとか。
欧州(の一部)では、棲み分けがある。
例えば三つ星レストランは、記念日に無理をして行くところではなく、普段からそういうところを利用している人たちのものである。つまり極端なハナシ、「何を着ていけばいいのか」「フォークはどう使えばいいのか」などと不安になったり緊張したりする人が行くところではない。
一般には、人々は自分たちに緊張や違和感を強いる場所ではなく、居心地がいいと感じられる場所に行く。
また、例えば高級ブランドのバッグは、高校生がバイトをして貯めたお金で買うものではなく、生活全体のレベルが「高級」な人たちのものである。
わたしはそれがいいとか悪いとか言っているのではない。日本の子どもが高級ブランドのバッグを持って歩いているのは「王様は裸だ」と言った少年のように痛快であると思うし、ベルギーの人が収入に見合った格好をしているのも地に足がついていて好ましいと思う。
そういった環境下、ベルギーでは星が三つもある「高級」レストランに行き慣れていない人が行くのは、前人未到の魔境、オルフェウスやイザナギが冥府に立ち入ったほどの度胸を要するのかもしれない。
帰還後の彼らがエクスクルーシブな体験談を大げさに語ったように、「自分はこの場になじんでいない」と感じたレストランのお客が、上記のようなまことしやかな「ストーリー」を特殊な体験談あるいは笑い話として語ったとしてもおかしくはない。「高級」なものが「高級」たりえるのはそれが神秘的で曖昧で珍奇なストーリーを幾重にもまとっているからであるし。
このレストラン(名前は臥せておく)、公共交通手段では行けないロケーションにあり、そういった浮世離れしたところも「レストランからのお手紙」という都市伝説を生むことにつながっているのだろう。
都市伝説をふくめ、伝説の正体にすごく興味があるので、こういうハナシは大好き。
このデマを広めたのはレストランの成功をねたんだ同業者、とも言われているが、わたしは「特殊な体験談」説を支持したい。
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