ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

若尾文子の「氷点」。

2009-10-18 12:43:33 | 音楽・映画
映画、「氷点」観ました。笑点じゃないです。
原作は三浦綾子の1964年のデビュー作で、
大ベストセラーになった国民的作品。
タイトルだけは知っていたが、はじめて内容を知りました。
映画化されたのは1966年で、若尾文子の本領発揮といった作品。

物語は、旭川で開業医をしている夫・辻口とその妻・夏枝の娘が
誘拐されて殺されるところから始まる。
事件のあったとき夫は留守で、妻は同僚の眼科医と浮気をしていた。
夫は、浮気中の妻が娘をみていなかったことで殺されたと思い
静かに復讐を企て、殺人者の娘・陽子を養子として妻に育てさせる。
(この夫の神経も異常や!)

何年かして、妻は夫の部屋を掃除をしているときに、
夫の書き残したメモから陽子の出自を知ることとなり、
錯乱するも、その後はしたたかになって、
陽子に嫌がらせしたり、どこか距離をおいて育てていく。。。

そしてある日、母は年頃になった陽子と交際中の彼氏に向かって、
殺人者の子供であることを告げる。
陽子はそれを聞いて「氷点」状況になってしまう。。。

「氷点」とは、自分がギリギリの極限状況にまで
追い込まれたとき、心が凍り付いてしまうこと。
完全に打ちのめされて「凍りついた・・・」という心の状況を指している。

娘は、殺人者の子供として生まれたという
自分がどうあがいても避けられない運命であることと
キリスト教でいうところの「原罪」意識を強く感じてしまう。
出自については、殺人者の娘ではないとわかるが、
真実は、それはそれでエッというもので、
どっちにころんでも、ダメ押しみたいな出自が、なんともやるせない。

DVDパッケージには、キリスト教の「汝の敵を愛せ」とか
「原罪」を主題にした映画とか書かれているが、
オイラとしては、もっと日本的な、親と娘の愛憎話というか
殺人者の娘でも頑張れよ!的な感覚によって
受け入れられたのではないかと思った。
キリスト教に強い影響を受けた原作者の
意図しない部分で、共感を得たのではないか。

それは、たしか芥川龍之介の短編にも、
日本でキリスト教を布教させていく宣教師が
布教の悩みを打ち明けるという話があり、
そこでも、日本では何でも来るものは吸収してしまうが、
別のカタチになって定着する文化がある、みたいなことが
書かかれていたが、それとどこかつながるなぁと感じてしまった。

しかし若尾文子の恐ろしいほどの目ヂカラと、凄みのある演技、強い存在感!
とくに長男が「妹はもらい子なの?」と聞いて振り返るところとか
陽子に向かって出自を語るシーンは戦慄を覚え、
こちらの目も見開いてしまいました。
若尾文子つながりで観た「氷点」だったが、素晴らしい映画でした。
原作も読んでみたいと思います。

旅路/風車
http://www.youtube.com/watch?v=742rbMddwwc

氷点.jpg

コメント
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