ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

永山則夫とサード。

2009-10-12 16:29:03 | 独り言
きのうETVで「永山則夫特集」を放映していて、ついつい見てしまった。
そういえば、中上健次のエッセーに
「犯罪者永山則夫からの報告」というのがあり、改めて読んでみた。

永山則夫の家族は、青森の板柳から網走に一家揃って行き、
そこで父親の博打などによる散財から家族は離散し、
母は網走から永山則夫をホームに置き去りにして、青森へ帰ってしまう。
そのときの悲しさ、母親への愛などについて語っていた。
また永山則夫は、長距離ランナーとして学校で優秀な成績を残していたらしい。

永山則夫は、青森を離れて東京に集団就職で出てきたが職場になじめず、
自殺未遂、海外への密航などを企てるも失敗。その後も転々と職を変える。
そして連続ピストル射殺事件は、東京、京都、北海道、
名古屋で起こり、東京で逮捕される。
事件を起こしているさなか、故郷へ帰ることをせず、
故郷を通り越して北海道へも渡る。
中上健次は、それは、あたかも故郷を中心として、
円周運動をしているようだと書いている。

その文を読んで、東陽一監督の映画「サード」を思い出してしまった。
サード(永島敏行)は、高校生男女4人で売春を行うなかで
客となったヤクザを殺し、一人少年院に入ってしまう。
少年院では、サードが野球グランドをベースランニングするシーンがあり
ホームへ戻ってみると、ホームベースがない。
サードは、再び1塁ベースへ向かって走り出す。
しかし何度ホームに戻って来ても、ホームベースがない。
何度まわっても、追われるように、また走り出すシーンが印象的だった。

長距離ランナー選手であった永山則夫とサード。
どちらも、目標が見えない焦りや喪失感がつきまとう。
どこへ向かって走っていけばいいのか、
どこに自分の居場所を見つければいいのかわからない。
集団就職後、仕事で挫折をして殺人を犯し
故郷へ帰ることができずに、犯罪を繰り返していった
永山則夫とサードが、オーバーラップしてしまった。

たしか友部正人は、この歌を
永山則夫に捧げると言って歌っていたことがあった。
誰も僕の絵を描けないだろう/友部正人
http://www.youtube.com/watch?v=O3ttbdSWOt4&feature=related


サード.jpg

コメント
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