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「モンテクリスト伯」の映画を作り直せ

2024-06-30 06:31:53 | 映画


先日「モンテクリスト伯」5回目の読破が終わりました。
19世紀のフランス、イタリア、地中海を舞台にした壮大なドラマ。
復讐が主題の陰鬱な小説とはいえ、そのスケールの大きさ、優雅さに圧倒されます。
読み終えた後の、まるで魂を抜き取られた様な虚脱感。
私はきっと6回目の読破(愚行?)をやってしまう気がするのです。
でも、何かで見たのですが、その本のタイトルは知りませんが、その人はその小説を、
20回、あるいは30回以上読破したそうなんです。
同じ様な人はやはり居るんですね。
素晴らしい文学というのは、その人にとってはかけがえのない唯一無二なんです。

この長編小説を、1998年にフランスが総力をかけてテレビドラマにしました。
20億円をつぎ込んだ6時間半に及ぶ大作です。
しかしこれは世紀の大失敗作だった、私はそう思っています。
それは河童の歌声ブログ、2019年1月6日「嗚呼、ミスキャスト!」に書いています。
一度書いたのに又書くのかよと思いますが、
それほどこの映画を大失敗作にしたのが、口惜しいのです。
20億円をドブに捨ててしまったのが許せないのです。





「風と共に去りぬ」
1939年、ハリウッド映画の頂点とも言える大作です。
この名作を書いた、マーガレット・ミッチェル女史は、
主人公の男性、レッド・バトラーを、
俳優クラーク・ゲーブルを思い浮かべながら書いたので、
彼が、彼しかない最高の適役である事は、絶対に無い唯一無二なんです。
そしてその相手役となる、スカーレット・オハラは誰が演じるか?
殆ど無名に近かったヴィヴィアン・リーが抜擢されました。
それが「風と共に去りぬ」を永遠の名画にしたのです。



私が映画の最高傑作のひとつとしているのは「ローマの休日」です。
主演の男性は、グレゴリー・ペックになったのですが、
相手役の王女役が決まりません。
そんな時に、殆ど無名ともいうオードリー・ヘプバーンが見いだされ、
彼女が抜擢されたのでした。
「ローマの休日」が映画界の最高傑作となれたのは、
ひとえに彼女の魅力だったと、ハッキリ言えます。
映画というのは、適役俳優でないと名画には絶対になれません。



そして「モンテクリスト伯」
もう絶望のため息しか出ません。
20億円は何の為?
決定的な大失敗作です、それはひとえに主人公俳優の失敗に尽きます。
主人公以外の俳優達は、「フランスにはこんな名優がいたのか」という、
素晴らしい俳優達がめじろ押しだったんです。



エドモン・ダンテス(モンテクリスト伯)父子の大恩人であるモレル氏。
ダンテスはモレル氏親子の船会社を破産の危機から救い、恩返しを果たします。
そこから、いよいよダンテスの壮大な復讐が始まるのです。



ダンテスの忠実な執事となるベルツッツィオ。
彼はダンテスに心酔し、ダンテスの手助けを忠実に果たすのです。



19歳で逮捕され、死ぬまで出られない地下牢に閉じ込められたダンテス。
その許嫁のメルセデスはまだ17歳でした。
それから24年後、43歳の変装したダンテス(モンテクリスト伯)を、
一目でダンテスだと見破ったのは、かつての許嫁メルセデスだけでした。
彼女以外の人達は、誰も彼をダンテスだとは見抜けませんでした。
彼女はダンテスが死んだものだと絶望し、恋敵のフェルナンと結婚したのです。



そのメルセデスに横恋慕しダンテスを罠にはめたのは恋敵だったフェルナン。
後に彼は軍人となって大出世し、モルセール伯爵となっていました。



ダンテスと一緒の船で会計士をしていた、ダングラール。
この男は自分より若いダンテスが自分を差し置いて船長になった事に嫉妬し、
フェルナンを巻き込んでダンテスを罠におとしいれます。
全てはこの卑怯な男の企みから始まったのです。
彼は銀行家になり男爵となって、大金持ちになります。



カドルッス。ダングラールとフェルナンの企みをたまたま知ってしまったのですが、
我が身の保身の為に見て見ぬふりをしたのでした。
この小ワルは、後に悪仲間の手により殺されてしまいました。



ヴィルホール検事総長。
若かった彼はダンテスに同情し一旦は許すのですが、
ダンテスが持ち帰った手紙の宛先が、自分の父親(ナポレオン派)で、
反ナポレオン派な自分にとっては、出世の道が永久に閉ざされてしまう事から、
無実のダンテスを永久に出られない地下牢に封じ込めてしまうのです。



フェルナン(モルセール伯爵)の裏切りにより奴隷として売り飛ばされた、
かつてのギリシャの王女、エデ(アイデー)
法廷での彼女の証言が、モルセール伯爵を決定的に破滅させます。
彼は、己の地位、名誉、家庭、財産の全てを失い、
自分がダンテスに決定的に復讐された事を知り、絶望し自殺します。



ヴィルホール検事総長には、再婚した妻がいました。
その妻は我が子に財産が無い事を危惧し、
財産目当てに3人の身内を毒殺する悪魔でした。
しかし、夫であるヴィルホールに見破られ、自殺する事を強要されます。

ヴィルホール検事総長は、そういった家庭内の問題を抱えながら法廷に行きます。
そこで己の犯した(我が子を地下に埋める)という悪行を暴露され、
地位も、名誉も何もかもを失い、呆然として我が家に帰り付きます。
そこに居たのはモンテクリスト伯。
まるで意味が解らずだった彼は、モンテクリスト伯の正体(エドモン・ダンテス)
と知り、地位、名誉、財産、家庭、その全てを失った事を悟り、復讐の恐怖を味わいます。
その結果は・・彼は、気が狂ってしまうのです。
気が狂ってしまったヴィルホールの姿を見たダンテスは、
いくら復讐とはいえ、やり過ぎだ、俺は神の領域を犯してしまったと後悔します。

そして、この復讐劇の発端となった、ダングラール男爵を許すのです。
ダンテスの計略により財産を減らし続けていた銀行家、ダングラール男爵は、
全てがダンテスに計算づくで、肥らせるだけ肥らされ、
天国から地獄へと一気に叩き落とされるのです。
もう、破産しか無くなった彼は50億円という全財産を身に、逃避行をはかります。
しかし、ダンテスの忠実な部下である山賊に捕らえられてしまいます。

牢屋に入れられたダングラール。
その内、腹が空き、咽が乾いて水が欲しくなります。
しかし、そこでは最高級の料理などいくらでもあるのですが、
最高級であろうが、普通の料理であろうが、一食1億円なのです。
飲み物は高級ワインであろうが、コップ一杯の水だろうが1千万円なのです。
「おいおい、私がそんな大金を持っているかと思っているのかい?」
「はい、閣下の懐には50億円あります」
ダングラールは初めは、本当の自分の姿を隠し通せると踏んでいたのが、
山賊どもから全てがお見通しだった現実を知らされ、愕然とします。

そして、残った金が愛おしくなり断食をするのです。
もう耐えられなくなった彼に、天の声が聞こえます。
「貴方は後悔していますか?」
「ハイ、後悔しています」
だったら貴方を許しましょう、私はエドモン・ダンテスです。
ダングラールも復讐の恐ろしさに、己の犯した悪事に恐怖します。
残ったのは、地位も、名誉も、家庭も、財産も、一切を失った悲しい孤独な老人でした。


これほど壮大でドラマチックで、美しくもある小説、
これを映像に出来る事なら、私だってやりたい。
20億円をかけての6時間半だったら、
50億円かけて10時間の映画に、小説を忠実に再現したい。
フランス映画界には、あれほど素晴らしい俳優が居るのだったら、
主人公のモンテクリスト伯は、誰にしたらいいのか?



空前の傑作が、主人公の人選を誤ったが為に、台無しになってしまいました。
20億円をテレビではなく、映画にしたら、
50億円かかるかもしれません。
そして、小説に忠実なら6時間半は、10時間になるかも知れません。
ですが、私はこれをやりたかった。
この世界的な名作を、忠実に劇的な名画にしたいなら、
主演俳優が、的を射る、後世に名を残すくらいの名優でなければなりません。
当時、フランスでは人気だった(?)とかの愚劣な人選などでは話になりません。
あの小太りの団子鼻の金髪の・・黒髪、長身痩躯の原作とは違い過ぎます。

ヴィヴィアン・リーを見なさい、オードリー・ヘプバーンを見なさい。
クラーク・ゲーブルを見なさい。
いつまでも、いつまでも後世に残る、印象に残る人達です。
あんな、背の低い肥った愚優などでは、全く話にもならないのです。

世界一美しい軍艦、ドイツ戦艦シャルンホルストの実物大レプリカを造る。
それには1000億円以上かかるでしょう。
それに比べりゃ50億円なんて安いものです。
フランス映画界よ、もう一度作り直してほしい。
国家的名作を国家の誇りをかけて作り直してほしい。


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