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日々のつれづれ・アート・音楽・衣食住。好きな言葉はゲーテ「いきいきと生きよ」デグジュペリ「大切なことは目に見えない」。

次郎物語 下村湖人

2010-09-19 | 本・映画・名言
次郎物語〈上〉 (新潮文庫)
下村 湖人
新潮社

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下村湖人著の次郎物語。今では読む人も少なくなってしまったでしょうが、ぜひ思春期の子供たちに読んでほしい本です。

特に1部、2部は子供であっても、また子供ならではの複雑な心の動きが繊細に描写されています(新潮文庫の”上巻”に収録)

たとえば、主人公の、わんぱくな次郎は、おとなしく成績の良い長男を偏重する母親(長男が家を継ぐと決まっていた時代だったので仕方ないのですが)に愛されず、飢餓感を抱いています。

後に母が結核をわずらい実家に帰されて(これもまた時代を反映。同居の姑嫁問題もあり)、母の実家に預けられていた次郎は初めて母と密に交流し、母に関心をもたれる喜びを感じます。

そこで、牛肉を売りに来た業者から、次郎はためていたお小遣いを全部使い牛肉を買います。ほんのわずかな肉を母に差し出した次郎。
「どうして牛肉を買ったの?」と尋ねられ
「母さんが、鶏のスープは飽いたと言っていたから」
と次郎は答え、母は感涙し、同席していた祖母たちも胸を打たれる。

しかし、叔母の連れ合いの男性はさらっと「調理場に持って行くとよい。他にもたくさん買ってあるから一緒にしたら」と流す。
次郎は彼に、自分の偽善を見抜かれたように感じて恥ずかしく感じる。

というような、母の愛を乞いながら、同時に「”いい子”ごっこをしている自分」を客観視するという複雑な心理描写が、当時次郎と同じ年代だった(小学生高学年?)、それほどの複雑さを持ち合わせていない私には非常に印象的でした。
いまだにこのエピソードを覚えているくらいだから相当印象深かったのでしょう。

ようやく心の通い合った母の死とともに実家に帰り、次は継母が来ます。継母は三男を溺愛。父方の祖母とは相変わらずうまくいかず。以前は距離のあった兄が、実家になじめない次郎に気を遣ってくれ兄弟関係は好転するものの、父の「武士の商法」により家が没落するという苦しい局面を迎えます。

さらに3部、4部、5部と進むと、話がよりシリアスになっていきます。青年にさしかかった次郎は当時台頭してきた軍国主義に対し反感を抱きます。将校に目をつけられ、次郎は苦難の道を歩むことになります。

一連のシリーズを通して、著者の下村湖人は次郎という、時代、および環境にそぐわないなかで一本気に生きる人間の生きざまを描きたかった、そういう人たちにエールを送りたかったのではと思います。

しかしながら私は、読み進めながら「正義感が強いのも良し悪し。正直に思っていることを言うとこういう羽目になるのだ・・」という反面教師的な教訓を得ていたような気がします。自分も次郎と同じタイプなので。

その割にはちっとも直っていず、次郎に共感を覚えた子供のころからちっとも成長していないことに、自己嫌悪を覚えます・・・。

これまでの仕事の経験からいうと、上司に媚を売って得しようとする人、ライバルを陥れて出世しようとする人たちの嫌らしさを指摘したりして敵を作り、色々損してきたなあと反省しきりです。

でも得しない性格だけに、その分ピンチのときに良くしてくれる人もいて
"A friend in need is a friend indeed"(窮地に陥ったときに助けてくれる友こそ本当の友人である)
とよくわかりましたし、プラスマイナスゼロってことかなあと楽観的に考えています。

まあ、この年になって直らないものを「私って何てダメなの・・・」と落ち込んでいても人生つまらないですしね。

下村湖人にはぜひ、6部以降を書いてほしかったなあ。
「世渡りが下手な次郎だけれど、それがかえって幸いして、仕事も恋愛もうまくいっている」みたいな明るいストーリーになれば、多くの若者に夢と希望を与えたことでありましょう。

時期的に、続編は第二次戦争が始まり、かつ日本が敗戦し混沌の時代を迎えるころになるでしょうから、次郎みたいな人が活躍できたのか、というのははなはだ疑問ではありますが・・・・。

(おまけ)
鶏肉の話が出てきますので、創業明治35年の築地の宮川食鳥鶏卵で買った鶏もも肉の写真を載せました。
上で書いたのは「鶏のスープは飽いた」という話なので恐縮ですが、”肉を竹の皮で包んである”という共通項があるのでお許しを。

この宮川さんは、スーパーの値段くらいで、くさみのなく鶏の味の濃いお肉が買えます。ブロイラーで、比内鶏、名古屋コーチン、などの銘柄鶏ではないけれど十分おいしいですよ。新しいからかなあと思っています。おいしい今治の焼き鳥屋さん世渡もブロイラーとのことでしたし。

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