私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

吉備津神社社家、堀家(ほりけ)氏の誕生の物語

2011-03-11 12:46:26 | Weblog

 数尺も、咄嗟に空中に飛び上がられた吉備津彦命は、その刀で一刀両断の元に突進してきた1丈もある巨大な猪を討ち取り、此の死骸を、早速、家来に吉備の中山に埋めさせます。
 「これでやれやれ。一段落だ」とばかりに命は、その晩はゆっくりと眠られます。そして、何事もなかったように一夜が明けます。翌朝早く、お泊りになっている命の仮御所の周りが何やら騒がしい人声に包まれます。その声に、ふと、お目覚めになられたのだそうです。

 「如何したことだ。何かあったのか」
 「はい。よく分からないのですが、今朝方から、この吉備津の町一帯が、急に何やら変な臭いが立ち込め、息をするのもくるしいのでございます」
 命は戸を開けます。すると、どうでしょう、今までついぞ嗅いだことのなかったようなプンと鼻を突く、嫌な臭いがお部屋の中に流れきます。
 「ううむ、これは一体いかがしたものか。今までになかった臭いが、今朝になって流れてくるとは、誠に不可思議な事である。何かあるに違いない。調べてまいれ」
 と、家来に命じます。早速、その家来は、臭いが流れてくる場所を捜します。そして、突き止めた場所というのは、昨夜、命が退治したあの巨大猪を埋めた場所だったのです。
 嫌な臭いは、猪を埋めた土饅頭の上からもくもくと立ち上っています。
 「どうなっているのか」と、不思議に思った家来は、昨夜、埋めた土を掘り起こします。すると、どうでしょう、死んだとばかりに思っていた命が討取った猪が、のっかと、体を起こしたかと思うと、その大きな体を風のように突進して、向こうの畑の方に目指して飛ぶように消えて行きました。
 するとどうでしょう。今までに立ち込めていた嫌な臭いはどこかに消えて、元の爽やかな朝の空気になるではありませんか。

 それ以後、その逃げ去った所を「向畑」と呼と呼ぶようになり、また、猪が埋められた吉備の中山には、獣は一匹も住まなくなったのだそうです。まして、獣を殺してその肉を食べようものなら、その獣の祟りがそん人に乗り移ると信じられ、吉備津の人たちは、一切、ウサギであろうと、鹿であろうと、獣の肉は口には入れないと言い伝えられています。

 なお、此の猪の死骸を掘った家来を、命は、その功として、特に、「堀家(ほりけ)」という姓をお与えになり、吉備津神社の神主に任命したそうです。


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