私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

匹夫の志奪ひがたし

2011-07-10 10:24:30 | Weblog

 「腹いせにすべしと」二百人ばかりで押し寄せた窮民共に対して、その家の者は、てんでに鉄砲や弓を以てそれに対処しようとしたのです。しかし、すんででの所で、あわや騒動になるかと思われたその時でした。この屋の主人が、

 「今つくづくおもへば匹夫の志奪ひがたし。争ふとも必勝はえがたげなり。ゆりつぶされ火もてやかれたりとおもひなして、渠等が心にまかせておけ」
 
 と云って、家の者たちを押しとどめて彼らの為すがままにさせていたのだそうです。すると、その押し入った二百人もの者たちは、てんでに、その家の蔵を開けて、そこに有った穀物と言いますからお米でしょうか、それを残らず奪って「いにけり」と。書いております。要するに、歴史の教科書などに出てくる江戸時代の都会で起きた「打ちこわし」と、他ならない出来事だったのだと云うのです。

 此の事件が大きく「深川辺りの狼藉」と伝わったのだろうと云うのです。現在でも、このような災害時に、他の諸外国で見られるような、何処でもいい、手辺り次第にそれも無差別な乱暴狼藉ではないのです。ある程度その事件の背景には、このような、何らかの理由があって発生するのだと云うことが分かります。この時とばかりに狼藉を働く者はいなかったと云うのが正しいのかもしれません。
 今回の東北地方の大震災の時でも、震災直後の見事なばかりの社会秩序の良さ、そうです、このような大惨事の災害時にでも、人々の徹底した冷静な行動が見られる国は、世界でも珍しいと、海外のほとんどの国の報道陣の間で、大きく話題になたと聞いていますが、日本の歴史を見ると、皆無とは云われないのかもしれませんが、そのような考え方は、既に、平安の世の中から、そのような非常時の当り前な行動となって人々の間に定着していたのではないかと思われます。その辺りにも、また、世界にはない日本人だけが持っている特色だと言えるのではないでしょうかか?????

 なお、狼藉とは、目的も手段も無く、てんでバラバラに手当たり次第に繰り広げられる無秩序な暴力行為の事を言います。また、「渠」と云う字は<かれ)と読みます。
 蛇足ですがちょっとだけ。「いらんことたあ せんでもえんじゃ。、そげんなことあ でえでもしっとるんじゃあ」と、筆敬先生からお叱りを受けるかもしれませんが。


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