私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

雨に西施の桜花

2010-03-25 10:45:14 | Weblog
 「雨寄晴好」の例として、綱政侯がその旅紀行で、富士の裾野を過行く時、それまでの時雨模様の天気が、突如として晴天、そうです「霽」になり、「晴れもまたよし」と、事の他に喜ばれて記したのですが、この好い例が私の町吉備津にも見られますので、綱政侯の事は2、3回ほっておいて、吉備津の桜についての私の見たまま、感じたままを書き綴ってまいります。
 と、言うのは、我が町「吉備津」には桜の名木として、この近辺では見られない珍しい桜が数本あります。それを順次紹介していきます。
 
 まずは、吉備津駅にある
 「晴れもよし 雨又よしの 桜かな」
 の桜の木です。
 此の木は、昨年でしたか、駅の駐輪場建設に伴い、すんでのところで切り倒される運命にあったのですが、市の予算がないと言う理由で、大々的な駐輪場建設が、急遽、小規模なものへと変更になり、そのために助かった木なのです。
 そんな幸運を此の桜の木が感じ取ったのでは無いでしょうが、今年も大変見事に、岡山市の開花宣言前に、蕾をそっと開きました。今は、既に3分咲きまでになっています。でも、この雨で少々は長持ちしそうですが????  見ごろは30日ごろか????
     
 此の木は本当に不思議な木です。何時ごろ、誰が、そこに植えられたのか何も分からないのです。また、何という名前の桜の木かは分からないのです。しかし、律儀にも、3月の初めごろから、毎年の事ですが、その蕾が膨らみかけてから、木全体がほんのりとした桜色というか、清少納言が愛した紅梅色に染まり始めるのです。その色がいよいよ匂いなき匂いを奮いたてると、そうです、あたかもその木独特の「春の装い」を深めると、決まって、開花するのです。志村ふくみが言うように、此の木には不思議なことですが「色に音がある」のです。一寸聞いてみたくなりませんか。
 昨日今日は、あいにくの雨です。しかし、その雨に濡れた桜木が晴れの時に見るのとは、また、違って、芭蕉があの象潟で感じた「恨むがごとし、寂しさに悲しみをくはへて、地勢魂を悩ますに似たり」その物です。晴れの時とは大変趣を異にした風景を展開しています。まさに「雨寄晴好」その物です。
 今日も、その色は音となって「春が来たよ」と歌いながら大空に、静かに静かに舞い広がっています。
 聞きにいらっしゃいませんか。声なき名歌です。晴雨いずれも吉野に負けない、吉備津の一本の桜です。