私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

曹源公の歌紀行

2010-03-19 17:18:13 | Weblog
 「不学文盲」と。酷評された綱政侯「曹源公」の江戸から岡山までの歌紀行です。少々私自身その内容を把握しきれない部分もありますが、書いてみます。間違いがありましたら、寶泥氏のように、ご指摘いただければと思います。

 明暦三、神無月初の比、大樹仰事給る。今より羽林と替えしめし、国に帰やらで、おほくのかづけ物(贈り物)たぶ、誠に袖に包し嬉しさも身にあまりぬ。同月初の十日なん首途歩、神無月時雨ふり、おくならの葉の散もみじ葉のにしききてなど思へば、また知らぬ道の山かさなり、川かさなりて雲をしのぎ、霜をわけつつ、しばらく前途はるかなるにすすまじ、かれといひ、是といひ、一方ならぬ別ならんほど心ぼそく、折しもいと時雨のふりければ、

 かきくらし 涙と共に 旅衣 立出るそらに 降るしぐれ哉
 
 と、綱政侯の歌紀行が始まります。


  
 これが綱政侯です。
 
 この歌紀行は明暦3年ですから、綱政19歳の御時でありました。「不学文盲」どころの話ではありません、此の書き出しだけから見ても、大変文学的な才能の持ち主であったと言わざるを得ません。
 なお、大樹とは将軍、羽林とは、要するに、参勤交代で大名が江戸に住まっていることを意味します。それが許されて初めて岡山へ帰ることになったのです。袖に包しと言うのはこの上ない喜びで、首途歩は初めて旅に出たぐらいの意味でしょうか?
 旅に出る前のあわだたしいさや、まだ見ぬ山川との遭遇への期待と言った、19歳と言う、誠に初々し若殿の初旅のこころが、この文章の中から、ひしひしと伝わって来るようです。