私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

延養亭鶴

2009-10-21 12:16:52 | Weblog
 後楽園十勝の、その二は「延養亭鶴」です。
 延養亭は園中第一の約七十七坪の広さを持つ建物です。その大広間は44畳もあり、往時、その家臣に儒教を受講させたり、他藩の使節などを饗応したりしたところでもあったのです。又、津田永忠が園内に建てた最初の建物でもあります。
 ここからの眺望は格別です。岡山城は勿論、芥子山などの諸山が東に屏列していて、「朝夕紫翠を送り来る」と、書かれています。また、瓶井山の多寶塔も、園中の樹々の間より見え隠れして、その眺めを一層明媚なるものにしています。
 また、この亭の前には奇石が多く置かれ、短き樹が点綴し、曲水がその間を潺湲と流れ廉池に落ちています。その前は総て平地で、芝があり、そこで年数回の丹頂鶴の翺翔を見ることもできるのです。
 その鶴と延養亭の組み合わせが、後楽園十勝の一つに数えられたのです。

  

 ここでも、綱政侯は、次のような歌を詠んでいます。

   幾千代を かさねやすらん 庭の面に
             きつつ馴れにし 鶴の毛衣
  
 
 「丹頂の鶴たちは真っ白な羽を翺翔(こうしょう)しながらあの庭を悠々と飛んでいるなあ。
 悠久と言う時の流れの中に見える瞬間の何というゆったりとした美しさなのだろうか。周りの景色も何にもいらない。ただ、あの真っ白な毛衣が周りの何物にも染まらないで飛んでいる。本当に愛しいなあ」

 「毛衣」と言う言葉の中に潜んでいる、何か母親の温かみみたいなものが感じられ、そっと抱きしめたいようなそぞろなる愛しさを、懐かしさと言ったほうがいいかもしれませんが、詠みこんだ歌ではないでしょうか。名歌です。凡庸な人の歌では、決して、ないと思います。