私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

松屋文集 その2

2007-11-04 18:58:22 | Weblog
 10日間の中欧を旅して帰ると、なんだか知らないのですが、日本の古典だやたらと恋しくなり、高尚先生の『松屋文集』を紐解いてみました。

 「秋の暮れ方は、空の景色むら雲迷い、おりおりに雨打しもみぢのかつがつ散り行くなど、ものさびしきにとじむる日となりては、わかれの近づくほどそぞろ悲しく風の音虫の音につけてもしのびがたき事なむおおかりける。さるはうき秋に名だたしういいわたりしかど、今はとなりてはいづち行くらむとなごりおしう眺め、心だすに野も山も夕霧の立満ちたれば、いとどおぼつかなくて心細うて胸さへふたがるやうになむ」

 声に出して読んでみると、日本人の心が、周りの自然に溶け込みながら、微妙に繊細な感受性を育てていったかと言うことが分るような気分にさせられます。西洋の人たちには到底理解できないものではないかとも思いました。

    おおかたの 秋来るからに わが身こそ
             悲しきものと 思ひ知りぬれ
                      (古今集 読人しらず)