ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

重版しないかな~

2016年09月12日 09時18分06秒 | 雑記
中井にある「伊野尾書店」店長の伊野尾宏之さんが『漂流』のオリジナルポスターを作ってくれて、先日のラカグのイベントに持ってきてくれた。非常にうれしかったので昨日、家族でお店を訪問したが、残念ながら店長は不在。店員さんにあいさつして、せっかくなのでケヴィン・ケリーの『〈インターネット〉の次に来るもの』と『サピエンス全史』、あと子供の写真絵本を購入して帰宅した。ポスターはしっかりとお店に掲示されており、『漂流』も堂々と平積みされていた。ありがとうございます!

伊野尾さんはブログでも『漂流』のことを紹介してくれている。
http://inoo.cocolog-nifty.com/news/2016/09/post-6caf.html

冒頭、本の雑誌の杉江さんとこの本について語り合うシーンからはじまっており、二人とも「この本が売れなかったら、もうダメだ」という点で意見が一致したとの内容だ。『漂流』のことを非常に熱く書いてくださり、とても感激した。感激したのだが、しかし、この本ってそんなに売れなさそうな雰囲気を醸し出しているのだろうか……とも思ってしまった。

というか、出版社の営業担当と本屋の主人がそう言っているということは、すでに売れていないということなのだろうか……。

ほかにもツイッターでのつぶやきを見ていると、無明舎出版という秋田の出版社さんがこんな感想をかき込んでいて、やはりうれしかったが、やはり気にもなった。

〈久々に本格的ノンフィクション作品を読ませてもらって満腹感が残っている。これだけの長期取材をし、何度も沖縄や海外を訪ねていると、1900円のこの本が何冊売れれば元が取れるだろうか。〉

すでに赤字ライン前提で語られている感じである。この本、そんなに売れなさそうに見えるのだろうか? 

たしかに人の関心を引きそうなテーマではないうえ、文字のフォントも小さく、ぎっしりと詰まっており、430pもの厚さがある。それに私自身、読者の共感を誘うような書き方があまり好きではないので、この本の読後感も爽快なカタルシスを得られるようなものにはしていない(というか内容的に無理なのだが)。なので、売れるような本ではないと自覚していたが、しかし中身の深さには圧倒的な手応えがあったので、なんだかわけのわからないすごい本があるという評判が広がって、もしかしたら重版するかもという期待もあった。しかしこれら本を売る人たちの「面白いけど売れなさそ~」という率直なご意見をたまわっていると、やはり厳しいか……と感じてしまう。

この本で重版できなかったらショックだなぁ。そういえば重版って言葉、もう何年聞いていないだろうか……。最後に重版したのはアグルーカの文庫だったか、なんだったか。いや、アグルーカは単行本は重版したけど、文庫はしていないんだっけ? もう忘れてしまった。

追記 そういえば新潮社の波に掲載した小野正嗣さんとの対談がネットにアップされていた。『漂流』の狙いがよくわかるので、ぜひご一読を。
http://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2016/09/201609_14.php
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