ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

シオラパルクにて&お知らせ二件

2015年04月17日 05時07分27秒 | 探検・冒険


今年も3月22日に日本を出て、25日にシオラパルクに到着した。ブログでの報告がこんなに遅くなってのは、インターネットの回線が全然つながらなかったためだ。シオラパルクでは民家を一カ月二万円ほどの家賃で借りて暮らしており、そこにモデムを取り寄せてネット回線をつなぐのだが、そのモデムがなかなか届かなかったのである。仕事関係など、どうしても連絡をとらなければならないときは大家さんであるヌカッピアングアの家で借りるか、今年もシオラパルクに滞在している山崎さんに借りるかしていたが、こっちのネットは容量が制限されているので、ブログのアップなどという緊急性の低い用件でその容量を食ってしまうのも申し訳ないので、今まで控えていた。

モデムが届かないまま、11日にいったん村を出て、冬の極夜探検のための荷物をデポするため、アウンナトックの小屋に向かった。ところが氷河をのぼりきって四日目、これから氷床を越えるぞ、という段階で、なんと橇が壊れてしまった。今年の木橇は厚さを2・5センチとかなり薄くし、しかも肉抜きして軽量化をはかった。去年の感じだととても壊れそうな気配はなかったので、大胆に軽量化したのだが、ちょっと大胆にやりすぎたらしい。160キロもの荷物を載せて、固い、洗濯板のように激しく波打ったサスツルギの雪面をトラバースしているときに、肉抜きした部分があっけなく板が折れてしまったのだ。

正直言って橇が壊れるとは思っていなかったので、呆然とした。橇が壊れたら進めないので、仕方がなく釘と針金で応急処置し、必要なものだけ橇に乗せて氷河を駆けおり、その日のうちに村に戻った。村には去年つかった橇がのこっていたので、昨日、今日とランナーを張り替えて、改修をすすめていると、ようやくモデムが届いたのである。

ちなみに、去年、一緒に40日間、旅をしたウヤミリックとはカナックの町で再会した。去年よりは橇も引くようになっているし、非常に扱いやすい犬に成長していた。おそらく今年は去年のような愛憎劇を繰り広げる心配はないだろう。ちなみにウヤミリックとの再会の話は、ナショナルジオグラフィックのウェブサイトで簡単に報告しています。


角幡ウヤミリック 2歳


お知らせがあります。

小説新潮で連載が始まります。一昨年から取材をすすめていた沖縄の宮古佐良浜のマグロ漁師さんのルポです。タイトルは『ある鮪漁師の漂流』。北極出発直前まで執筆に忙殺されており、600枚ほど書き上げましたが、完成にはいたりませんでした。したがって、9、10月にこのシオラパルクで執筆を再開して、なんとか連載分は完成させて、4、5カ月にもなる極夜探検本番に出発すると、そういう予定でいます。

もうひとつ、文藝春秋のほうから出ていた『探検家、36歳の憂鬱』が『探検家の憂鬱』とタイトルを若干変更して、5月上旬に文庫本として販売されます。単行本の内容に加えて、文庫版ボーナストラックとして、私が今まで書いた原稿のなかで最も恥ずかしい「極地探検家の下半身事情」(「エロスの記憶」収録)と文庫版あとがき、あとブログの記事がプラスされています。

文庫本のカバーが先日送られてきましたが、かなりインパクトのある表紙になっています。

なお、また明日、アウンナトックの小屋に再出発します。村に戻るのは5月中旬の予定です。

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