ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

雪崩記事

2009年11月18日 23時32分45秒 | クライミング
 以前、このブログでも紹介した不帰Ⅰ峰尾根で遭遇した雪崩のルポが、東京新聞が発行している山岳雑誌「岳人」の一月号に掲載されます。カラー5ページ、白黒8ページ、原稿用紙にして約40枚とかなり書き込みました。雪崩の記事としては過去に例を見ない詳細な「埋没ルポ」と、3人の雪崩体験者にインタビューした内容を中心にまとめています。どうして僕たちは雪崩にあうのだろうという素朴な疑問を大事にし、雪崩対策的な教訓めいた話は一切書いてません。

 現在、書店に置いてあるのは12月号。1月号はたぶん12月上旬に発売されると思うので、興味のある人はぜひ読んでみてください。ちなみに現在、外国旅行中なので、忘れないうちに書いておきました。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テンジン・ノルブ絵画展

2009年11月07日 11時06分35秒 | 雑記
 元テレ朝の大谷映芳さんに先日お会いした。秘境番組のディレクターとして有名だった大谷さんだが、現在は自然環境保護や辺境に暮す人たちを援助する「アース・ワークス・ソサイアティ(EWS)」というNPO法人を立ち上げ理事長として活動しているという。

 そのEWSが今度、札幌から群馬、東京、名古屋、大阪と順ぐりで、ネパール・ドルポの天才画家テンジン・ノルブさんの絵画展を開くという。パンフレットによると、奥ドルポのティンギュー村で生まれたノルブさんは子供のころからチベット仏画を描いてきた。現在はカトマンズに在住して独創的な美の世界を展開し、ヒマラヤを描く画家としてヨーロッパでも高い評価を受けているという。ドルポは大谷さんが数ある辺境の中でも最も通いつめたところで、僕もぜひ行ってみたい場所の一つだ。

 札幌で始まるのは11月11日、東京は26日から。無料。残念ながらぼくはもう日本にはいないので行けないが、興味のある人は足を運んでみたらいかがでしょう。

http://www.earthworks-j.com/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガチンコ横綱

2009年11月01日 11時16分19秒 | 書籍
 最近、テレビの情報番組などで元横綱大乃国の芝田山親方が「スイーツ評論家」として登場するのをたびたび見かける。こんな著書もあるらしく、「スイーツ王子」というあだ名もつけられているようだ。まったく大福もちみたいに甘そうで柔和な顔と体の大乃国ならではのはまり役で、これが目つきの鋭いウルフ千代の富士(現九重親方)や、頭を丸めて昔の関東軍高級参謀みたいな強面になった北勝海(現八角親方)が「スイーツ大好き」なんて言ったら気持ち悪くてしょうがない。

 現役時代は優勝二回。千代の富士、北勝海の陰に隠れまったく印象の薄い横綱だった。だが八百長に手を染めていたと言われる千代の富士とは違いガチンコ(八百長をしないで実力勝負)だったとされ、大相撲に八百長疑惑が取りざたされる時などは週刊誌にフェアな力士として取り上げられたこともあった。千代の富士の54連勝を止めたのが大乃国で、それが彼の力士としての最大の見せ場だった。ただ、ガチンコ力士の悲しさか、下位力士に対する取りこぼしが多く、とりわけ有名な注射(八百長)力士だった板井は苦手だった。なんで星を買わないのかとばかりに板井に顔面を張られまくり、泣きそうな顔で土俵に這いつくばる大乃国の姿を見て、「こんな情けない大人にはなりたくない」と幼い頃思ったものだ。歴代の横綱数多くあれど、情けない相撲っぷりで全国の子供たちの同情を広く集めたのは彼くらいのものだろう。

 ガチンコといえば、有名なのは横綱貴乃花。現役では稀勢の里、安美錦がそうだとされている。七月に引退した出島もガチンコだったという。この3力士が八百長の疑いがあるとされる朝青龍にたびたび勝つことをみても、なかなか説得力を感じさせる話である。そういえば数ヶ月前、朝日新聞の記事に貴乃花のインタビューが載っていたが、今後期待する力士として稀勢の里と安美錦の二人を挙げていた。若手の有望株である稀勢の里はまだしも、年齢的にもとうがたった安美錦はなぜ?と思ったが、ガチンコ力士に対する応援と八百長相撲が一掃されない角界に対する皮肉のメッセージだったと考えればうなづける。

 貴乃花が現役だったのは、曙、武蔵丸という二人に加え、若乃花、貴ノ浪、魁皇などの実力派がずらりを顔を並べる、大相撲史上最強の時代だったと言われる。その中で優勝22回、しかもガチンコだったということが貴乃花が「平成の大横綱」と呼ばれる大きな理由なのだろう。いくら朝青龍が優勝回数で上回っても大横綱と呼ばれないのは、少なくてもイメージとしては八百長の疑いがまとわりついている上、土俵上でのガッツポーズなどパフォーマンスが過度に注目されトリックスターとしの側面ばかりが強調されるからだ。ただ、貴乃花については八百長などよりもっとショッキングな噂を聞いたことがあるが、事実かどうかも分からないし、あまりにも生々しい話なのでここにはとても書けない。

 話が完全に脇道にそれたが、大乃国のこのスイーツ本、読んだこともないし、これから買う予定も今のところない。それにしてもこんなに太ってるのにスイーツなんて、勇気あるよな。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南アルプスと富士山

2009年11月01日 01時02分33秒 | クライミング
 十年来の計画である探検を冬に行うため、そのトレーニングとして南アルプスで縦走してきた。下半身を鍛えるのが目的なので、食料いっぱい、燃料いっぱい、本もいっぱいザックに詰め込み、要するに部屋ごと山の中に持ち込んで、仙丈から聖岳まで歩いてきた。

 初日こそ、台風が来ていることを知らずに突っ込んだので全身びしょ濡れでひどい目にあったが、その後は連日の小春日和に恵まれ気持ちのいい登山だった(ただ寒くて、持ちこんだ本は読む気にならず、おもりとしての役割しか果たさなかった)。予定より二日ほど早い31日、聖岳登山口に下山。齢33と中高年登山者に片足を突っ込んでいる私ではありますが、ひとたび長閑な学生登山者を装うと、親切な人たちの手によりあれよあれよという間に静岡駅まで運ばれてきたのでありました。

 おしりの筋肉がカッチカチに固くなるくらい鍛え上げられたこと以外に、収穫らしきものが二つあった。一つめは富士山がきれいだったこと。雲海に浮かぶ富士、霞がたなびく富士、靄に浮かびあがった富士と、毎日のように違う顔を見せてくれ、思わず見とれてしまい登山道から滑落しそうになったのも一度や二度ではなかった。やはり富士山は登るものではなく見るものですね。



 もう一つは体が若返ったような気がしたこと。結構ハードな行動をした次の日の朝も、全然疲れが残らなかった。記者時代は山に入ると連日のように疲労が蓄積し、アミノバイタルを飲まないとやってられなかったが、筋肉が若返ったのだろうか? でも、関節系はそううまいこといかず、腰痛もひざの痛みも年々ひどくなるばかりだ。テントの中で寝袋にくるまれながらラジオのCMを聞き、そろそろ痛散湯を買おうかなとついつい思ってしまった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする