ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

ガチンコ横綱

2009年11月01日 11時16分19秒 | 書籍
 最近、テレビの情報番組などで元横綱大乃国の芝田山親方が「スイーツ評論家」として登場するのをたびたび見かける。こんな著書もあるらしく、「スイーツ王子」というあだ名もつけられているようだ。まったく大福もちみたいに甘そうで柔和な顔と体の大乃国ならではのはまり役で、これが目つきの鋭いウルフ千代の富士(現九重親方)や、頭を丸めて昔の関東軍高級参謀みたいな強面になった北勝海(現八角親方)が「スイーツ大好き」なんて言ったら気持ち悪くてしょうがない。

 現役時代は優勝二回。千代の富士、北勝海の陰に隠れまったく印象の薄い横綱だった。だが八百長に手を染めていたと言われる千代の富士とは違いガチンコ(八百長をしないで実力勝負)だったとされ、大相撲に八百長疑惑が取りざたされる時などは週刊誌にフェアな力士として取り上げられたこともあった。千代の富士の54連勝を止めたのが大乃国で、それが彼の力士としての最大の見せ場だった。ただ、ガチンコ力士の悲しさか、下位力士に対する取りこぼしが多く、とりわけ有名な注射(八百長)力士だった板井は苦手だった。なんで星を買わないのかとばかりに板井に顔面を張られまくり、泣きそうな顔で土俵に這いつくばる大乃国の姿を見て、「こんな情けない大人にはなりたくない」と幼い頃思ったものだ。歴代の横綱数多くあれど、情けない相撲っぷりで全国の子供たちの同情を広く集めたのは彼くらいのものだろう。

 ガチンコといえば、有名なのは横綱貴乃花。現役では稀勢の里、安美錦がそうだとされている。七月に引退した出島もガチンコだったという。この3力士が八百長の疑いがあるとされる朝青龍にたびたび勝つことをみても、なかなか説得力を感じさせる話である。そういえば数ヶ月前、朝日新聞の記事に貴乃花のインタビューが載っていたが、今後期待する力士として稀勢の里と安美錦の二人を挙げていた。若手の有望株である稀勢の里はまだしも、年齢的にもとうがたった安美錦はなぜ?と思ったが、ガチンコ力士に対する応援と八百長相撲が一掃されない角界に対する皮肉のメッセージだったと考えればうなづける。

 貴乃花が現役だったのは、曙、武蔵丸という二人に加え、若乃花、貴ノ浪、魁皇などの実力派がずらりを顔を並べる、大相撲史上最強の時代だったと言われる。その中で優勝22回、しかもガチンコだったということが貴乃花が「平成の大横綱」と呼ばれる大きな理由なのだろう。いくら朝青龍が優勝回数で上回っても大横綱と呼ばれないのは、少なくてもイメージとしては八百長の疑いがまとわりついている上、土俵上でのガッツポーズなどパフォーマンスが過度に注目されトリックスターとしの側面ばかりが強調されるからだ。ただ、貴乃花については八百長などよりもっとショッキングな噂を聞いたことがあるが、事実かどうかも分からないし、あまりにも生々しい話なのでここにはとても書けない。

 話が完全に脇道にそれたが、大乃国のこのスイーツ本、読んだこともないし、これから買う予定も今のところない。それにしてもこんなに太ってるのにスイーツなんて、勇気あるよな。
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