ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

ふくしましUFOふれあい館

2011年08月31日 21時07分27秒 | 雑記
29日からわずか3日間だが、被災地を車で駆け抜けた。岩手県大槌町を出発、今日、南相馬市原町区まで南下し、福島第一原発半径20キロ圏内の立ち入り制限区域の入り口まで行ってきた。そこから飯舘村を経由して福島市でレンタカーを乗り捨て、新幹線で帰京したのだが、福島市に向かう途中、「UFOふれあい館」という看板を目撃。思わず、吸い寄せられるように車をUターンさせた。

道のわきに千貫森という標高462・5メートルの、ピラミッド型の山があり、UFO館はその山頂近くに立っていた。途中の道案内には、銀色のリトルグレイ風の宇宙人が、気持ち半笑い気味で半身をのぞかせている。ピンク色の小さな円盤型の施設で、見学料は400円。一階はUFO研究者から寄贈を受けた、おびただしい数のUFO関連書籍が並び、その先のミステリーゾーンに入ると、暗い中、青いイルミネーションが怪しげに瞬いていた。スイッチと書かれたボタンを押すと、プラスチック板の向こうでリトルグレイが黄色い光に照らされ浮かび上がった。さらに佐藤栄佐久前知事本人が書いたUFO目撃談などを紹介したゾーンや、千貫森におけるUFO現象についての短い3D映画もある。

職員の女性に聞くと、千貫森では昔からUFOの目撃例が多発しており、この施設は竹下内閣のふるさと創成事業で作ったのだという。2階には休憩室と、お風呂がある。

「でも、原発の事故があってから、お客さんはぜんぜん来ないの。本当は連休の時なんか、100人以上が来るのに」
今日のお客はわたしで4人目で、残りの3人は二階のお風呂に入りに来たらしい。原発事故のことなどについて雑談を交わした後、わたしは、ものを書く仕事をしてるんですと、簡単な自己紹介をした。
「探検や冒険をして、それを書いているんです」
「ドキュメンタリーですか」
「そうですね。この間はカナダの北極圏に行ってたんです」
「へえ、その他にはどんなところに行ってるんですか」

そう女性が聞くので、よせばいいのに、わたしは思わず「雪男を探しに行きましたよ」と答えてしまった。すると女性は、怪訝な顔をして、言った。「雪男って……、いるんですか?」

おいおいおい、UFOに言われたくはないよ。一応、26日に本が出ました、と宣伝めいたことを言っておいた。まったく関心がなさそうだったが……。うーむ、UFOと雪男はつながりはないらしい。



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ナショジオ 北西航路

2011年08月26日 12時36分59秒 | 雑記
ナショナルジオグラフィックのサイトに、わたしの短期連載が始まりました。
昨日、ブログの記事とメールでもお知らせしたしましたが、URLが間違ってました。ただしくはこちらです。

ナショナルジオグラフィック日本版
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/web/

昨日お伝えしたのは、別のナショジオのサイトらしいです。自分でも全然掲載されないから、おかしいなと思ってました。

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週刊ブックレビュー

2011年08月26日 12時02分46秒 | 雑記
明日放映のNHK-BSプレミアム「週刊ブックレビュー」の特集で『雪男――』が取り上げられます。司会の藤沢周さんと滑川アナの質問に、わたしが答えるインタビューコーナーです。余計なことをしゃべった記憶がないでもないですが、うまく編集してくれてるでしょう。

ちょっと早いですが、午前6時半からです。その後も二度三度、再放送があるようです。

週刊ブックレビュー
http://www.nhk.or.jp/book/

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「雪男は向こうからやって来た」発売

2011年08月25日 22時00分00秒 | 書籍
雪男は向こうからやって来た
クリエーター情報なし
集英社


わたしの第二作となる『雪男は向こうからやって来た』が発売されました。

アマゾンなどのネットショップには在庫があるみたいで、都内の大型書店でも並んでいました(本日夕方、池袋ジュンク堂、神保町三省堂で確認。新宿紀伊国屋でも並んでいたそうです)。

この本は、わたしが朝日新聞退社後に参加したヒマラヤの雪男捜索隊の記録と、同じ場所で過去に雪男を目撃したり、その捜索に執念を燃やした男たちのルポを交差させたノンフィクションです。このブログを読んでいる方は必読。友達にもどんどん勧めましょう。ツイッターやフェイスブックに、ガンガン書き込んでください。あ、ツイッターを始めるのを忘れていた!

お知らせついでに恐縮ですが、ナショナルジオグラフィック日本版のウェブサイトで、26日から「北西航路」という北極探検史にまつわるエッセーの連載が始まります(午前10時すぎに更新されるそうです)。今回の北極圏徒歩旅行の話しもちょっと絡ませながら、なぜ探検家は北極を目指してきたのか、という点に焦点をあてて書きました。わかったようなわかんないような話かもしれませんが、覗いてみてください。

ナショナルジオグラフィック日本版公式サイト
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/web/

さらについで。

マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』を、3週間かけて読み終わる。長かった。でもすごかった。

おっと、この本を買わずに、『雪男――』を買ってくださいね~。

世界終末戦争
クリエーター情報なし
新潮社

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これが見納め

2011年08月24日 16時44分38秒 | 書籍
これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景
クリエーター情報なし
みすず書房


『銀河ヒッチハイク・ガイド』で有名なダグラス・アダムスの『これで見納め』を読む。マウンテン・ゴリラ、キタシロサイ、ヨウスコウカワイルカなど絶滅危惧種を見るため世界中を旅行したルポ・エッセー。邦訳版が発売されたのはこの7月だそうだが、著書は2001年に亡くなっており、原著の初版刊行は1991年だという。20年前の作品なので、ニュージーランドで電話のダイヤルが反時計回りだとか、細かい部分で時代のギャップを感じる。

『銀河――』を読んだとき、個人的には、この人のユーモアのためのユーモアみたいな文体があまり好きになれなかったが、この本では、その過剰なユーモアが、動物たちの本質を正確に記述するための有効な手段となっている。もちろん、アダムス独特の、一見斜に構えた、深い洞察があってのことだが。一番よかったのはゴリラの章。ゴリラの迫力と知性を描写した部分は最高だ。

アダムスファンと旅本好きには、格好の本だろう。

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いまさら「ヤノマミ」

2011年08月23日 11時07分57秒 | 書籍
ヤノマミ
クリエーター情報なし
日本放送出版協会


大宅賞を同時受賞した国分拓「ヤノマミ」を、今さらながら読む。NHKの映像のほうは放映時に見ていたので、本のほうも出版直後から、ずっときになってはいた。だが、Nスぺがあまりに強烈だったことと、まわりで絶賛する人が何人かいたので、そんなものは読むべきではないと思っていたのだ。なにせ秘境もののノンフィクションで、かつ同じ日本人。どうしても自分の作品と比較してしまう。自分の書いていることがつまらなく感じてしまうことが怖くて、どうしても手が出なかった。

読んでみて驚いた。うすうす想像はしていたが、この本にはわたしがツアンポー峡谷で感じたことと、まったく同じことが書かれていた。国分さんはヤノマミという昔ながらの生活スタイルを守っている先住民との濃厚な接触を通じて、自然の中しか存在しない生と死に関する唯一の確かなことを知った。わたしは同じことをツアンポー峡谷における過酷な単独行を通して知った。ただし、「ヤノマミ」のほうが、生身の人間の行為や儀式を描くことでそれを表現しているので、読者にはストレートに伝わりやすのだろう。冒険という行為を通じて表現すると、どうしても抽象的になってしまう。

この本のことを、文化人類学的な視点で描いていると書いた書評や感想をいくつか目にしたが、わたしにはそうは思われなかった。むしろ学術的な記述を用いてヤノマミ族を解釈することを、つとめて避けているように感じた。生のまま人間が空っぽの受信体となり、受けた印象や衝撃、垣間見たシーンを、テレビモニターに映し出すかのように、分かりやすい文体で表現したことが、この本が成功した理由だろう。

ちなみに現在、北海道の実家にいる。小さいころに住んでいた家――今は空き家となっている――を、十数年ぶりに訪れ、打ちのめされた。

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サイン

2011年08月20日 10時46分53秒 | 雑記
近々発売される『雪男は向こうからやって来た』の見本が昨日届いた。

この本は、わたしが2008年に参加した雪男捜索隊の話が、だいたい約半分を占めている(残りの4割は、捜索地であるヒマラヤのコーナボン谷で続いてきた雪男目撃談と、それを追い求めた人間たちの記録。あとの1割はその他)。その捜索隊の高橋隊長が、わたしの本を購入して、隊の支援者に報告書がわりに送ってくれるというので、昨日、その分をサインしてきた。

その数、235冊。さらに個人的にお世話になった取材先に配る分も含めると、サインしたのは300冊ほどに達した。さすがにこれだけの分量をこなすと、最後は芸能人みたいに書体が崩れ、自分でも何を書いているのか分からなくなる。角幡唯介という画数の多い名前を、わずか5秒ほどでスラスラと書いている自分に、思わず成長を跡を感じた。

『雪男』の発売は26日。すでに読んでくれた人は、『空白の五マイル』より面白い、という人がほとんどだ。というか全員だ。それはそれで複雑ではあるのだが。

なお集英社のPR誌「青春と読書」9月号に関川夏央さんが書評を書いてくださっている。また10月号には、『雪男』についての私のエッセイが載る。さらに9月6日に発売される「kotoba」で森達也さんが書評で取り上げてくださるという。ありがとうございます。

気になる人はゲットしよう。

青春と読書 http://seidoku.shueisha.co.jp/seishun.html
kotoba http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/


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ランニング

2011年08月12日 13時22分00秒 | 雑記
北極圏の徒歩旅行を終えて、はや一か月が過ぎた。先月の下旬に帰国してからというもの、連日のように友人、知人を飲み歩く日々を過ごしてきた結果、わたしの体は早くも北極圏旅行前よりもだぶつき始めた。このままでは取り返しのつかないことになる、と思い、先週あたりから時間のある時を見計らって、ランニングを始めたのだが、翌日からひどい筋肉痛になった。

北極圏で103日間ものきつい日々を過ごし、その結果、足腰は従来にはないほど鍛錬されていたはずなのに、10キロ走っただけで、翌日から階段を上り下りするのも苦痛になった。まったく、あの北極圏徒歩旅行は幻だったのか、と思ってしまいたくなる。一か月もたつと、はるか昔の出来事になりさがり、体ももはや記憶を失ってしまったらしい。

話は変わるが、「雪男は向こうからやって来た」が26日に発売されます。アマゾンで予約受付中。

雪男は向こうからやって来た
クリエーター情報なし
集英社


カバーは「空白の五マイル」に引き続き、鈴木成一さんが担当してくださった。ジャケットに騙されて買う人が続出することを期待している。





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