最近読んだ本

	ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)
	ローワン・ジェイコブセン
	文藝春秋

連載の執筆で忙しくて、ブログを書く余裕がない。最近読んだ本の中から、印象に残ったものをいくつか紹介する。

ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』
世界レベルで起きたミツバチの大量死の原因を、スリリングな筆致で迫ったノンフィクション。優れた探偵小説は云々……、といううんちくが何カ所かで書かれている通り、ダニ・携帯電話、農薬など、大量死を引き起こした容疑者が次々と登場し、優れたミステリーなみに全体の構成と文体が練られている。要するに読み始めたら止まらない。

ミツバチがこんなに農業に深く関与していることも知らなかった。たまたまミツバチは私たちの食料生産に深く関与した、いなくてはならない「家畜」なので大量死は社会問題としてクローズアップされたが、他にも同様に大量死している昆虫や虫はたくさんいるだろうという。最終的には私たちを取り巻くシステム全体がおかしなことになっていることに目を向けさせる。

	代替医療のトリック
	サイモン・シン、エツァート・エルンスト
	新潮社

サイモン・シン、エツァート・エルンスト『代替医療のトリック』
『kotoba』編集長の田中さんに、面白いと紹介されて読んだ。鍼、カイロプラクティック、ホメオパシー、ハーブ療法という四つの代表的な代替医療について、臨床試験的な観点から本当に効果があるのかどうかを検証したもの。いずれも効果のほとんどはプラセボ効果で、医学的に見て症状は改善しないとしている。

なんということだ。私は鍼は医学的な見地から見て、効果があるものと思っていた。その昔、西荻窪の土木会社でアルバイトをしている時にぎっくり腰になって、社長が、よく効く鍼師がいるからとある鍼師のところに連れて行ってくれたことがあった。効果はてきめん、二、三日で歩けるようになり、一週間ほどで職場復帰できたのだが、あれはプラセボ効果だったのか！　基本的には自然治癒で寝ているだけでも治るらしい。そりゃそうだ。若かったんだから。

	ぬるい毒
	本谷有希子
	新潮社

本谷有希子『ぬるい毒』
本谷さんは美しいので昔からファンである。でも本は読んだことなかった。
どこかの雑誌の編集部から、誰か対談したいひといませんか？　と聞かれた時に、本谷さんと答えるため、自分の作品とテーマ的に何か共通点がないか探そうと思って読んでみた。

残念ながら、なかった。他の作品も読んでみよう。

	透明人間の告白　上 (河出文庫)
	Ｈ・Ｆ・セイント
	河出書房新社

Ｈ・Ｆ・セイント『透明人間の告白』
本の雑誌が選ぶこの三十年で一番の本という帯に惹かれて買った。男なら誰でも小さい頃、透明人間になったら、あんなこと、こんなことと妄想したことがあるだろうが、この本はそういう本ではない。

現代（といっても８０年代みたいだが）のアメリカ社会で透明人間として生きていくことがどれだけ大変か、ということが上下二巻にわたってたっぷりと語られる。あんなことや、こんなことは、ちょこっとだけする。

ちなみにこのブログを書くために、アマゾンのアファリエイトの検索ボックスに「透明人間」と打ち込んだら、エッチなＤＶＤだとかアニメがずらりと並んだ。やっぱりそういうことなのね。なお、この著者は明らかに巨乳好きで、女性が登場するたび、しつこく胸について描写する。そこは非常に良い。


本の雑誌と言えば、今年の三冊に『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』『マザーズ』『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったか』の三冊を選んだ。いずれも新潮社だが、他意はない。

	本の雑誌343号
	クリエーター情報なし
	本の雑誌社

ウメコバ沢

週末は年末年始山行のトレーニングで、足尾の松木沢ウメコバ沢に。群馬から沼田山岳会のＳさん、Ｎさん、太田山岳会のＨ１さん、Ｈ２さんと現地で合流し、とりあえず入門ルートのチコちゃんルートを登った。

途中のアイスルートはまだまだ氷結は甘く、ウメコバ沢の下部の滝もまだまったく氷っていなかった。
チコちゃんルートは、途中で御大の岩場という核心以外は岩稜という感じである。御大の岩場の上部はランナウト気味で悪かったが、がばホールドが見つかると楽に登れる。雪も少なく、登ってみるとアイゼンは不要だったが、一応練習なのでガリガリ登った。



アイゼンといえば、出発する時に車にアイゼンを忘れてしまった。Ｈ１さんがクライミングシューズがあるからと貸してくれた。ありがとうございました。

年末年始は北アルプスに行きたいが、時間もないので、今年も南アの予定。できればバットレス、天気と雪の状態によっては甲斐駒という予定である。

TBSラジオ「DIG」

今夜ＴＢＳラジオのＤＩＧという番組に出演します。
テーマは「冒険・探検」。よほどネタに困ったのでしょうか。
２２：００～２４：５０

高野さんも出ます。

黄連谷その後

さきほど、ヤマケイの編集部から連絡があった。取材のお誘いだったのだが、それはさておき、編集者いわく、なんとぼくらが土曜日に氷っていないのを確認して下山した、例の黄連谷が、翌日の日曜日は氷って登れるようになっていたらしい（たぶん右股だと思います）。

なんということだ……。ザーザー流れていたのに、一日でそんなに氷るの？

たしかに土曜日、女性二人組が五合目にテントを張っていたので、ぜったいに登れないから、さっさと下山してどっかに転進した方がいいですよとアドバイスした。一応行ってみますと言っていたが、たぶんあの人たちは登れたんだろう。

ということで黄連谷は氷ったらしいです。ご参考まで。

黄連谷～八ヶ岳阿弥陀岳北西稜

週末は今シーズン初めてのアイスをしに６人（東京２人、京都２人、神戸２人の異業種混成パーティー）で甲斐駒ケ岳黄連谷に。

土曜日に五合目から谷に下りたものの、まったく氷結しておらず、千丈の滝はジャージャーと水が流れている。地面の土すら凍っておらず、ぐしゃぐしゃだ。アイスというより沢登り、必要なのはバイルではなく沢足袋だったようだ。他パーティーも結構来ていたが、いずれも撤退したものと思われる。

＊１２月１０日現在、黄連谷は氷結状態最悪


千丈の滝を上から撮影

やむなく五合目まで登り返し、そのひのうちに下山し、八ヶ岳に転進。南沢大滝を登る予定でいたが、駐車場のおばさんに「氷ってないよ」と言われ、どこを登るか大いに頭を悩ませた。結局、私はアイスをあきらめ、北大ＯＢのＳ君と、アルムクラブＵ君と一緒に阿弥陀岳北西稜を登ってお茶を濁した。思ったより面白かったのでよかったが……。



他のメンバーは裏同心ルンゼを登ったらしい。下山後に判明したことだが、駐車場のおばちゃんの話は間違いだったらしく、南沢大滝は氷っていたようだ。裏同心パーティーによると、大同心大滝も氷っていたという。

甲斐駒なんかにいかず、おとなしく土曜から八ヶ岳に来てたら、ゆっくりと楽しめたというのが、今週の教訓である。

＊１２月１１日現在、八ヶ岳は裏同心、三叉峰、摩利支天は氷っている。大同心大滝、南沢大滝も氷っているという話。

来週、行く人は参考にしてください。

アグルーカの行方

	すばる 2012年 01月号 [雑誌]
	クリエーター情報なし
	集英社

「すばる」２０１２年１月号から、北極新連載「アグルーカの行方」が始まります。

今年３月から７月に、北極冒険家の荻田君と、１９世紀に１２９人が死亡した英国のフランクリン探検隊の足跡を追い、カナダ北極圏１６００キロを１０３日間かけて踏破しました。その冒険ルポルタージュ・ノンフィクションです。

タイトルにある、アグルーカとは……秘密です。最後まで読んだら分かる仕組みです。