ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

極夜探検計画書作成

2015年01月22日 00時19分45秒 | 探検・冒険
12月から小説新潮で連載予定の漂流ルポの執筆にかかりきりだったが、ちょっと切りのいいところまで来たので、今日から極夜探検の計画にとりかかった。

極夜探検は太陽の昇らない暗闇の地球を探検するのが目的で、来年冬に四カ月ほどかけてグリーンランドからカナダに向かうというものである。遠大な計画なので三月下旬から一人でシオラパルク入りし、春に橇でデポ設置旅行、さらに夏にカヤックでデポ設置旅行をおこない、冬に本番という予定だ。ちなみにデポとは、食料と燃料の貯蔵のこと。期間が長大なので、事前に荷物を配置しておかないと、とてもではないが不可能な計画だ。

そのデポの配置量を決めるためにも、本番の行動計画をまず作る必要がある。何月何日にどの場所にいて、その場所をいつ出発して、次に何月何日にこの場所に到着し……というものをかなり詳細に決めないと、事前のデポを配置できない。そしてそのすべての大もととなる行動計画は何に基づいて作成するかというと、実は月の動きである。なぜなら、極夜は太陽が昇らず真っ暗なので、月がないと何も見えないのだ。

今のところデポの配置場所は数カ所の候補地があり、そのデポ地に着くときは必ず月の出ている日を選ばなくてはならない。月が出ない日に着いても、デポが見つからない。そして、最大の難関であるグリーンランドーカナダ間の海峡を渡るときも、当然月の出ている期間である必要があり、さらに海氷が安定している小潮のときが望ましい。氷の衛星画像を見る限り、海峡の結氷状態は非常に悪く、来年も同じような状態だと海峡横断は非常にシビアなものになるだろう。大潮だと潮汐差が大きくて、海を渡っている最中に氷が割れてしまうかもしれないのである。

当然、潮も月の引力で動くもの。したがって計画のすべてのもととなるのは月の動きである。とういうことで、今日はまず北緯80度付近の2015年11月から2016年2月にかけての月の動きを調べ、月齢と潮も一緒にチェックした。ちなみに月の動きは国立天文台のプラネタリウムソフト「MITAKA」を使用した。

月の動きを調べてみると、海峡が渡れるタイミングは1月17日から20日前後。次は2月13日から17日まで待たないといけない。今年の結氷状態を見る限り1月のほうは厳しそう。となると海峡横断は2月中旬しかない。この時期に海峡をわたることを前提に、前後の行動計画を月の動きに従って立てると、なんと恐ろしいことにシオラパルク出発が11月25日で、カナダ最北の村グリスフィヨルド到着が4月23日。行動期間5カ月にも及ぶことが判明した。

といっても行動距離は約1285キロで、移動距離そのものは大した距離ではない。消耗を避けるために一日の行動距離を少なくし、月が出るのを待つための停滞日がかなりあるので、結果的に期間だけが長くなってしまったのである。

自分でも呆然としたが、しかし計画に着手するとなんだかんだと興奮してくる。興奮したあまり、ついつい久しぶりにブログなど更新してしまいました。

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