ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

猛牛

2010年01月25日 15時57分17秒 | 雑記
昨日、大相撲初場所が終わった。実は小さいころから恐竜と相撲が大好きで、恐竜のほうはご無沙汰だが、相撲は今でも深夜のダイジェストなどでほとんど欠かさず見ている。

今場所はなんといっても豊響がよかった。幕尻だったが12勝3敗で敢闘賞。なんといっても魅力は強引とも思えるくらいに押し相撲にこだわっていることだ。丸太のような太いかいなで、ごりごり相手を押し出す相撲は見ていて爽快だ。昨日も実力者の若の里を立ち会いでぶちかまして、ブルドーザーのように一気に土俵の外に押し出した。攻める時に腰を突き出して態勢が安定するようになったので、ひかれても落ちなくなった(と舞の海が言っていた)。

その相撲っぷりから、猛牛と呼ばれた元横綱の琴桜の再来と期待されている。なにせ顔がいい。目が細くて、根性がすわってそうで、生き物というより岩石か鉱物を思わせる。何度か幕内上位にあがったが、これまでは怪我などで定着できなかった。来場所こそ、旋風を巻き起こしてほしい。

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若い冒険心縛っていないか

2010年01月24日 09時59分42秒 | 雑記
朝日の国際面に沢村亙記者の「若い冒険心縛っていないか」というコラムが載っていた。「元気よく日本を飛び出す若者が、実はみるみる減っている。旅行大手JTBの調査では、海外旅行に出た若者(15~29歳)はこの10年で34%減少。……貧乏旅行の代名詞だったバックパッカーすら、あまりはやらない」という。原因としてはネット社会の発達、経済停滞、若者の内向き化などが叫ばれているそうだ。

まったく同感。外国に行って思うのは、本当に旅行をしている日本の若者が少なくなったことだ。外国に行くかどうかの話だけではなく、現状から一歩も踏み出さず、安全運転で人生を乗り切ろうという人の数が、たぶん多すぎる。一昨年、雪男探しに出かけた時、還暦をとっくに過ぎた隊長が「若い隊員が欲しい。昔はもっとプラプラした、暇な人間がたくさんいたのに」と嘆いていた。夢や希望を持って「積極的ヒマ人」になる若者は、今の時代、ほとんど存在しなくなった。

そういう人間を養う余力が日本の社会から失われたせいで、実は困っている。来年あたり、ニューギニアに冒険旅行に出かけるつもりなのだが、一緒に行ってくれる「積極的ヒマ人」を見つけるのに苦労しそうだからだ。ひとりでもいいけど、期間が長いからなあ。半年くらい、飲まず食わずで山登ったり、ジャングルはいずりまわったりすることに興味がある人は連絡ください。


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タイトル変更

2010年01月20日 14時08分56秒 | 雑記
飽きたので、ブログのタイトルを変えました。ブログなんて、どうせすぐやめるだろうと思って適当につけた名前だったので。

昨年、不帰で三回目の雪崩にあった時、パートナーだった後輩のSから言われた言葉を、そのままタイトルにしました。
危ないことは、もうしないぞという思いを込めてます。

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過食がとまりません2

2010年01月19日 22時15分27秒 | 雑記
昨日食べたメープルメロンパンの味が忘れられず、今日も近くのスーパーへ。

パンを片手に、鼻歌交じりでレジ向かうと、なんてことだ! 売れ残った菓子パンや和菓子の値下げコーナーができているではないか。くそ、なんてうまそうなんだ……。あん入り三色団子といちごホイップデニッシュの二つでなんとか我慢する。

それにしても、どうしてこんなに甘いものがおいしいのだろう。以前は、嫌いではなかったが、そんなに食べはしなかったのに。というわけで三色団子といちごデニッシュは、帰宅後にそっこうで食べた。いま僕のまわりには、安くておいしくて甘いものがいっぱいです。

大乃国の本でも買うか。

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過食がとまりません

2010年01月19日 00時26分28秒 | 雑記
ツアンポー探検で餓死寸前だった。そのリバウンドで、旅が終わってもう三週間以上たつのに、過食の症状が治まらない。

ちなみに今日の食事はパンとバナナで朝食。二時間後に納豆、野菜炒め、目玉やき、紅鮭、大根おろしなどの昼食。スーパーに出かけ、エクレアとシュークリーム、メープルメロンパンを三日かけて食べようと思い購入し、シュークリームとメロンパンを食べる。夕食は野菜、肉がたっぷり入った永谷園の煮込みラーメンを四人前。こんなに大きな食器はないので、直径三十センチくらいのボウルに入れて食べた。うまい! そしてたった今、昼に買ったエクレアを食べてしまった。明日もおやつを買わなければ……。夜食はこれからだが、冷蔵庫にとってもおいしいつけ麺が入っている。どうしよう。

探検中は一日千キロカロリーの食事で五千キロカロリーは動いていたが、今は五千キロカロリーを食べ、千キロカロリーしか動いていない。今日はこんなに食ったのに、動いたのはスーパーに行った時だけだ。探検直後は十キロ以上やせ、体脂肪率は確実に数パーセントだったと思うが、この暴食続きで、ついに二日前から腹周りに贅肉がつきだした。まだまだ食欲はとどまることを知らないというのに。

誰かいいクスリ、知りませんか?
コメント (2)
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狩猟サバイバル

2010年01月18日 00時52分25秒 | 書籍
ツアンポー探検の記事の打ち合わせで先日、岳人の編集部を訪れ、服部文祥さんと会った。服部さんといえば最近、新著の「狩猟サバイバル」をみすず書房から出した。服部さんが十年ほど前からライフワークとしているサバイバル登山に、狩猟という新たな方法を持ち込んだノンフィクションだ。

服部さんからは「深い人間になりたい」ということをよくきく。読んでみて最初の「サバイバル登山」の時よりも、その深さがなんとく伝わってくるような気がした。

考えてみると、サバイバル登山は所詮、登山というレジャーやスポーツといった余暇の一形態でしかない。それをしなくても生きていけるし、それで金を稼いでいるわけでもない。会社の休みを利用して行っている趣味に過ぎないといえなくもない。いくらハードな自給自足的な方法で登山を行っても、シカを殺して楽しんでいるだけでは、それほど深い行為とはいえない。

彼のサバイバル登山にひきつけられるのは、僕らが普段生活していて見落としがちな社会の偽善性やきれいごとに強い疑問の目が向けられているからだ。本の中でそうした前提やきれいごとは、スーパーでパックされ殺害、解体といった汚い過程を覆い隠された豚肉や、服部さんが駅でシカの生首を持ち歩いているのに気づき、目をむく電車の乗客などに象徴されている。社会が成立するそうした前提が実はちょっと違うのではないかと疑問をなげかけ、それが登山というかたちに昇華させられている。そのメッセージ性に僕らは深さを感じ、登山をしない人にも共感を与える。

そしてそのメッセージ性は、イワナを殺して山を登っていたこれまでより、大型哺乳類であるシカを殺して山を登った今回の本のほうが、より鋭角的に読者に伝わってくる。それはイワナよりもシカを食料として登る方が、殺害、解体という社会が覆い隠してきた汚いナマの過程をむき出しにしているからだ。

気になるのは、サバイバル登山の次の展開だ。魚から大型哺乳類に方法は進化し、思想性もより鮮明になってきた。次はどのように展開させて本にするのだろうか。もちろんプロのライター、編集者なので、サバイバル登山自体が完全に行為として純粋なわけではなく、おそらく書くことがどこかで意識されているはずだ。だから次にどのようなことが書けるかということを考えながら、サバイバル登山も行われている。本を書くために何らかのさらなる展開、もしくは深化がもたらされると僕は思っている。

うーん、なんだろう。ライチョウでも食べますか? ライチョウ食べたら極めて挑戦的な文明論になりそうだなあ。人間はやめてください。

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倒壊する巨塔

2010年01月15日 12時37分11秒 | 書籍
ローレンス・ライトの「倒壊する巨塔」(白水社)を読んだ。チベットに出発する前に、アマゾンから「おすすめの本があります」と言われて、すぐに買った本だ。上下巻で800ページくらいあるので、帰国してから読もうと思って楽しみにしていた。

ビンラディンやアイマン・ザワヒリ、FBI捜査官ジョン・オニールの人生を丹念に追って、9・11がなぜ、どのような過程を経て起きたのかを提示している。細かいエピソードやシーンをつなぎ合わせることで、テロリストたちの人間像をあぶりだしているところが素晴らしい。あれほど冷酷な犯罪をしでかしたテロリストも結局ひとりの人間で、何かのふとしたきっかけで、ひょっとしたら僕らもああした人たちになってしまうのかもしれないという「地続き感」を思わず抱かせられる。

著書のローレンス・ライトはニューヨーカー誌のライター。確か取材に5年(3年かも)かけたとか書いてあった。それだけの金と時間をかけても、ちゃんと売れて読まれるということなのだろう。アメリカのノンフィクション界の層の分厚さには感嘆するしかない。

最近、デビッド・ハルバースタムの傑作「ベスト・アンド・ブライテスト」が復刊されたので、こちらも購入。待ち遠しい。
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豚の丸干し

2010年01月12日 15時29分29秒 | 探検・冒険
チベット探検から先日帰国した。

目的はラサから東に約500キロ、世界最後の空白部と呼ばれるツアンポー峡谷の核心無人地区の完全踏査だった。ツアンポー峡谷の探検はかれこれ十年以上前から取り組んでいて、今回の旅はその総決算の意味合いが強かった。

許可なくチベットにもぐりこんだことから、旅はいささかスリリングなものとなった。詳細については雑誌や本にまとめるつもりなので、このブログには書きません。発表できる時にまたお知らせしますが、簡単にいうと地獄のようなツアンポー峡谷をなんとか脱出し、生き延びるのに必死だった。

写真はこの旅で見たもっとも強烈な風景。ギャラという村の近くで木に豚が何匹も干されていた。内臓を切り取って、塩をもみこんで乾燥させているのだというが、豪快すぎる!
コメント (3)
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