ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

帰村

2014年03月25日 19時33分52秒 | 探検・冒険
長い橇旅行を終えて、22日に帰村した。色々理由があるが、今回は肉体的にかなりハードな旅となった。出発前はそろそろ太陽が昇るし、極夜といえども、もう一日中明るいので気楽な気分で出かけたが、やはりそこは北極。楽な旅などありはしない。

旅の詳しい話は今回も文藝春秋社の文芸誌「オール読物」誌上で執筆させていただく予定なので、とりあえずブログでは簡単な報告にとどめます。まず、シオラパルクからフィヨルド奥にある氷河をのぼり内陸氷床へ。この氷河が大変で氷床まで六日もかかった。その後、氷床を北東に向かって150キロほど進み、イングルフィールドランドへ下降。そこから海に出て海氷を歩き、アウンナトックという小屋から再びイングルフィールドランド陸地を越えて氷床からシオラパルクへ帰還、というルートである。

たぶん何のことやらわからないと思うけど、要するに氷点下35度から40度の氷と雪の中を(詳しい距離は測っていないけど)400、500キロ、犬と一緒に歩いてきたということである。

村に帰ってきたら、シオラパルクの人は私が全然帰ってこないので、もう死んでしまったと思っていたらしく、みんなから「生きててよかったなあ」と祝福された。そんなに心配されていたなんて、こっちは全然想像していなかった。

今回はあくまで偵察行で、本番は来年以降。グリーンランドと西隣のカナダ・エルズミア島を舞台に壮大な極夜の旅を展開することで、そのためにこの地域の雪や氷の状態、小屋の位置、白熊がどれぐらいいるかを調べたり、装備や犬と一緒に旅ができるのかなどということをテストしたりするのが目的だった。やっぱり実際に行ってみなければわからないもので、グリーンランドとこれまで通っていたカナダ北部の雪氷の状態や風の状態はぜんぜんちがって、それで大変な苦労をあじわった。

どんな苦労だったかというのは、ぜひ「オール」誌上で。

ちなみに犬は頑張ってくれた。最初はぜんぜん呼吸があわず言うことを聞かないので、犬の存在が物凄くストレスになったが、途中からはこっちの意図を理解して行動するようになったので、かわいくてかわいくて仕方がなくなった。今では犬なしの一人で北極を歩くことなど、ちょっと考えられない。

それにしても疲れて今は何もする気がしない。ずっと本を読んで、ごろごろしている。村にはあと一週間ほど滞在し、帰国は4月9日の予定。


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