ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

エコマン

2009年07月17日 19時27分17秒 | 旅行
 北インドのラダックにやってきた。地図を一枚買って、ザンスカールの山々を10日間あまりひとりでさまよっていた。太陽が容赦なく照りつけるなか、月面のように荒涼とした標高4、5千メートル台の峠をいくつも越えていくトレッキングは、思いつきで始めた割には結構ハードだった。

 それはそれとして、山を歩いている最中、自分の体質が昔と比べて大きく変化していることに気がついた。あまり食べなくても動けるようになっているのだ。

 大学生のころ、僕の体は燃費が悪かった。朝食をとり、2時間も山を登ったらすぐに腹が減って動けなくなる。しかし、今回、トレッキングをしていて、歩いていても昔のようにおなかが減らなくなったことにきがついた。しかも、腹が減っても昔のようにすぐにばてて動けなくなるということがない。クライミングと違いこうしたトレッキングはひたすら歩くだけなので、純粋な高エネルギー消費活動である。最近、こうした歩く山登りをあまりしなくなったので気がつかなかった。

 年をとって新陳代謝が悪くなっただけかもしれないが、いいことには間違いない。アメ車からプリウスのような国産車に乗り換えたようなものだ。言ってみれば「エコカー」ならぬ「エコマン」である。

 考えてみると、これを登山だけでなく日常生活にまで広げるとどうなるだろう? これまでより少ない食事の量で生活できるので食費もセーブできるし、僕のような「覚醒エコマン」が増えたら、将来必ず迎えるであろう全世界的な食糧問題の切り札になるかもしれない。良いこと尽くめじゃないか! よし、日本に帰ったらエコマン生活をはじめるぞ。

 なんてことを考えながらトレッキングを終えて町に下りてきたら、羊の肉がうまいうまい。超高カロリー食を続けてしまっている。こんなんでは日本の焼肉やラーメンの誘惑にはとても勝てそうにない。
コメント (6)
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