ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

アグルーカ発売

2012年09月26日 15時32分50秒 | お知らせ
アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極
角幡唯介
集英社


『アグルーカ』が今日からついに店頭に並んだ。
たまたま池袋で「クロワッサン」の著者インタビュー(『探検家~』の方)があったので、それが終わった後、池袋がほこる二大書店、リブロとジュンク堂に、置き場所チェックに行く。リブロは新刊コーナーが充実しているので、私の本もかなり目立つところに置いてくれている。文庫本新刊には、『空白の五マイル』も平積みになっており、思わずほくそ笑む。自分の本が平積みになっている光景は何度見ても楽しい。しばらく経って、奥の目立たない方に移されると、激しいショックを受けるのだが……。売ってさえいない時は、自分の全存在を否定された気になる。なるべく長い間、平積みになっていてほしいものだ。

続いてジュンク堂へ。こちらは新刊台が小さいので、予想通り私の本は登山関連のコーナーに置かれていた。今回は歴史的な遭難をテーマにしていただけに、一般書扱いしてくれるのではないかと期待していたのだが……。これでは登山が趣味な人にしか存在が知られないではないか。私の本は、中身に関係なく、登山関係のコーナーに自動的に収納されるようになっているのだろう。くそ。悔しいし、自分の手元にもうなかったので、『アグルーカ』を二冊自分で購入。これで新刊台に移される可能性が0・5%ぐらい高まっただろう(本当は扱いの大きなリブロで買いたかったのだが)。

しかし、どういうわけか『探検家、36歳』が新刊台に並んでいた。発売直後は黙殺されていたのだが……。最近、書評で頻繁に取り上げられたからだろうか。それとも書店員さんが読んでくれて、面白いと思ってくれたのだろうか。ぜひとも『アグルーカ』も新刊台に並べてほしいものである。そういや、人文書コーナーを見るのを忘れていた。もしかしたら並んでいたのかも。今度行ってみよう。

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アグルーカのカバーなど

2012年09月19日 15時06分01秒 | お知らせ
アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極
角幡唯介
集英社


『アグルーカの行方』が26日に発売になります。アマゾンで検索してみると、表紙カバーがすでにアップされていました。デザインは今回も鈴木成一さんです。おそろしくかっこいい出来栄えになっているので、書店での売れ行き増に期待しています。ちなみに撮影は一緒に旅をした荻田君で、北米大陸北部の不毛地帯を縦断中の一コマです。

 私と荻田君は昨年、「幻の北西航路」を探して北極の地で全滅した英国のフランクリン隊の足跡をトレースするため、カナダ北極圏の氷海と荒野を103日間にわたり歩き続けました。この本は、フランクリン隊に何が起きたのか、彼らはどこで全滅したのかといった謎を交差させながら、自分たちの旅の模様をつづったものです。

私の中では極地とは歴史的に人の生き死に直結した土地であるというイメージがあり、フランクリン隊を題材にその「極地性」とでもいったものを描きたいと考え、作品化しました。自分でいうのもなんですが、なかなか迫力のある内容に仕上がったと思っています。興味のある方はぜひ読んでみてください。

なお『アグルーカ』の作業も終わり、たまっていた短い原稿書きも終わり、完全に仕事がなくなった! この前まであんなに時間がなくて、ひーひー言っていたのだが、私は現在無職です。気持ちいいなあ。何もしなくていいって……。

ということで、ようやく本を読む時間ができたのだが、『狼の群れと暮らした男』という本には度肝を抜かれた。

狼の群れと暮らした男
ショーン・エリス、ペニー・ジューノ
築地書館


著者はアメリカのロッキー山脈に二年間も山籠もりして、本当に狼の群れに受け入れられた経験があるらしく、それがこの本のクライマックスる。狼の群れへの潜り方が半端ではない。最初に英国の動物園で飼育されている狼の檻の中で暮らす。そして狼に痛めつけられながらも、狼の意思を理解し、群れに受け入れられる。この檻の中で狼から受けたイニシエーションも、肉片を食いちぎられたりと、なかなか半端ではない。

その経験をばねに、今度は野性の群れと共生したいと考えた著者は、群れをを探してロッキー山脈での孤独なサバイバル生活を開始する。群れと接触するまでに何カ月もかかるのだが、その生活自体が凄まじい。獣道に罠をしかけて、ウサギなどを捕獲し、それを生のまま食べていたというのだ。それだけで一冊の本が書けそうだが、一行か二行くらいでさらりと触れているだけである。そんな暮らしを続け、ついにオオカミの群れと接触する。群れに受け入れられるまでに何度も危機一髪のやり取りを乗り越え、最後はなんと狼が食料――シカの足の肉など――を持って来てくれるまでになったという。

とりわけ発情期のオオカミは半端ではないらしく、何度も体当たりを食らったり、噛みつかれたりして、さすがにくじけそうになったという。マウントポジションを食らい、殺されそうになったこともあったそうだ。

惜しむらくは、もともと本を書く気などなかったためか、この二年間のオオカミとの暮らしについては、本の一部にまとめれているに過ぎない。あとは彼の自伝的な内容や、体験的なオオカミ論やイヌ論がながながと語られているのだが、正直言ってオオカミの群れとのやり取りをもっと詳細に知りたかった。

とんでもない男であることは間違いない。人類の可能性を広げた人間の行為について読みたければ、ぜひ。

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『空白の五マイル』文庫発売

2012年09月18日 09時25分57秒 | お知らせ
空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫 か 60-1)
角幡唯介
集英社


『空白の五マイル』の文庫がそろそろ発売となります。
私にとってのデビュー作で、探検自体も学生の時からの人生最大の目標だったので、自分にとっては特別な本です。

今回新たに書いたあとがきでも触れましたが、自分にとって特別な旅だったからこそ、文庫化に際し、作品をもっと完璧にしておきたいという欲求は、拭い去りがたいものがありました。しかし、あの当時に書けたものを後から背伸びさせても仕方がないし、すでに世間に通ってしまった作品を、著者だからといって変形させるのは少し違うような気もしたので、基本的には中身にはまったく手をつけてません。

単行本と違うのは、地図のデザインが少し変わったのと、後書きが加わったのと、口絵写真がなくなったのぐらいでしょうか。

『アグルーカの行方』は26日が発売日です。こちらもよろしくお願いします。

話は全然かわるが、この前、爪水虫の話を書いたところ、実は私もそうなんです、という人と二人出会った。出会ったといっても、一人はメールでのやり取りだが。潜在的に患者数は多いのだろうか。ちなみに私はあの後、皮膚科に行き、内服薬と塗り薬をもらった。内服薬は肝臓にあまりよくないらしく、一応、血液検査もしてもらった。肝臓を傷めつけてまで水虫を根治させるか、あるいは多少の水虫には目をつむり、健康な肝臓機能を優先させるか、頭の痛い所である。

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衝撃的事実 しをん本解説

2012年09月08日 11時46分21秒 | 雑記
最近発覚した衝撃の事実からひとつ。

5、6年前に南アルプスでアイスクライミングをして凍傷に罹って以来、私の右足の親指の爪は黒ずみ、かさかさになり、外側に膨れ上がって、気持ち悪い感じになっている。その後もヤル・ツアンポーとか、北極とかで定期的に軽度の凍傷に罹り、爪の状態はしだいに悪化し、今ではカキの殻みたいになっている。放っておくとぼろぼろと崩れることもある。

最初は右足の親指だけだったのだが、何度も足に定期的にダメージを与えていたせいか、両の薬指の爪も内側から膨らみ始めている。爪と皮膚の組織が固い発泡スチロールのように変形し、外側に膨らんでいるような感じだ。ランニングする時には、この膨らんだ爪が靴に引っかかるのか、指先が水膨れになり、ひどく痛むこともある。

私はてっきりこの症状は凍傷でダメージが与えられて、爪が駄目になってしまったせいだと思っていた。夏場なんかはサンダル履きで、よく人から、「すごい爪ですね、どうしたんですか?」と訊ねられることも珍しくはなく、そんな時は、「いやー、昔、凍傷やっちゃって、それでこんなんなっちゃったんですよ」などと心持ち誇らしげに話していたものである。要は、自分の爪がひどいのは度重なる登山や探検による、いわば名誉の負傷みたいなもんだと思っていたわけだ。だから、治るわけがないとずーっと放置していた。そしてこれからも放置するつもりだった。

しかし先日、某山岳雑誌の取材で平ケ岳に行った時、カメラマンの西田君に、例によって「爪が最近ひどくてさ」と話すと、「それ、爪水虫じゃないですか?」と言われた。
「え、これ水虫なの?」
名誉の負傷だと思っていたのだが……。
「カイセンキンとかいうらしいですよ、確か。薬飲んだら治るらしいですが」
そんな簡単に治るのか!

帰宅して、爪水虫で検索して写真を見てみると、確かに私の爪の症状は、まさに爪水虫のそれである。そうだったのか……。凍傷とかヤル・ツアンポーとか北極は全然関係なかったんだ。ちなみにウィキペディアによると、菌の名称はカイセンキンではなく白癬菌だった。

ちょっとびっくりだが、治るのはよかった。今度、皮膚科に行こう。

   *   *


神去なあなあ日常 (徳間文庫)
三浦しをん
徳間書店



こんな話の後で恐縮だが、三浦しをんさんの『神去なあなあ日常』の文庫版が発売された。解説は、なぜか私が書いている。テーマは林業。非常に深い内容だと思うので、三浦ファンならずとも読んでみてください。林業だの、辞書編纂など、三浦さんの目のつけどころはとても面白い。大ベストセラー作家の尻馬に乗り、私の知名度もアップ、本の売り上げもアップ、となったら大変うれしい。

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