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花のたより☆山のふみ~青森県立名久井農業高等学校~

農業と環境の研究グループ「チームフローラフォトニクス」と弟分である「ハンターズ」の取組みを紹介します!

ゆく年くる年

2019年12月31日 | 
今から20年ほど前から、高校生に大晦日とお正月で
何を食べたかを聞いています。
なぜなら昔からこの地域は大晦日である年取りの日にご馳走を食べ
お正月はその残りを食べるという農村文化があるからです。
理由は諸説ありますが、先人は日が沈むとその日は終わりなので
31日の夕食を食べる夜には、すでに家の中に
新しい年神様が来ていると考えていたからです。
神様をお迎えしての最初の食事だからご馳走を食べるというわけです。
調査を始めた最初の頃は、ほぼどの家庭もこの風習通りでしたが
食べる料理は煮しめや焼き魚などから、次第に寿司や焼肉に変わってきていました。
10年も経つと形勢逆転。大晦日は普通の食事で
逆にお正月には、お節料理などをいただくという都会風に変わります。
大晦日は年越しそばという中央の文化がだんだん浸透してきたのです。
祖父母と一緒に暮らさなくなったため
風習が継承できなくなったなど理由がありますが、少々残念に感じていました。
ところがここ数年では食文化はさらに大きく変わってきました。
なんと大晦日もお正月も、食事は平日と同じというのです。
逆に「何かご馳走を食べるものなの?」と尋ねられ困ることもあります。
最近は家族みんな忙しく働いているので、
特別準備するのが面倒になってきているのかもしれません。
中にはお餅を食べる習慣もない人もおり、びっくりします。
以前、これは貴重な調査なのでデータはありますかと言われましたが
残念ながらそんな正式な調査ではないため、頭の中に残っているだけ。
こんなにも変化するなら数値化しておけばよかったと反省しています。
さて今日は大晦日。この地域では年越しではなく年取りといいます。
皆さんは今晩、何を食べますか?
それでは良いお年を。
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リンゴを楽しむ

2019年12月30日 | 
この時期、町の直売所には「リンゴ箱」に入ったたくさんのリンゴが並びます。
リンゴにも9月に収穫する「つがる」などの早生種や
10月に収穫する「ジョナゴールド」「世界一」「紅玉」などの中生種、
そして11月以降に収穫する「ふじ」「王林」などの晩生種があります。
この他にも真夏に収穫できる青リンゴなどそれはたくさんの品種があります。
では今、店頭に並んでいるのは何でしょう。
これは時期的にいって晩生種。「ふじ」や「ぐんま名月」などです。
みかんと違って食べるにはナイフが必要で面倒という人がいますが
「1日1個のリンゴは病気を遠ざける」といいますから
ぜひ美味しく冬場の健康管理に努めてください。
昔、津軽の農業高校がお供え餅の上にみかんではなく
青森県は小玉リンゴを乗せようというメッセージを発信していましたが大賛成。
産地ならではのお供え餅はとてもいいアイデアだと思います。
さてリンゴは生食だけとは限りません。
アップルパイや煮リンゴ(コンポート)など美味しい食べ方がたくさんあります。
子供の頃、芯をくりぬいたリンゴに砂糖やバターを詰めてアルミホイルに包み
石炭ストーブの上で作った焼きリンゴの味は今も忘れられません。
もちろん当時の品種は酸味の強い紅玉(通称、満紅)や
国光(通称 雪の下)。今考えると贅沢な話です。
先日、今年も名農名物の「リンゴジュース」が出来上がりました。
リンゴ農家はどの家でも自家製リンゴでジュースを搾っていますが
名農のジュースは津軽地方の甘いリンゴジュースと違って
紅玉をたくさん使う甘酸っぱいタイプでさっぱりした味が自慢です。
リンゴの話はまだ続きます。
みなさんはビートルズのアップルレーベルをご存知ですか。
あの青いリンゴはグラニースミス。
日本ではあまり栽培されていませんが、海外ではポピュラーな品種。
一度食べましたが、紅玉のように酸っぱくてびっくりしました。
まさにアップルパイにはぴったりの品種というわけです。
長い間、雪に閉ざされる青森。我が家の自慢のリンゴジュースや
アップルパイを持ち寄って県民みんなでその年のNo.1を競う大会を
農業高校が主催して行ったら面白いとは思いませんか。
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元祖甘!

2019年12月28日 | 
ここに珍しい柿があります。
名前は「御所柿」。奈良や鳥取で栽培されている甘柿です。
富有柿のような大きく平らな柿ですが、少しお尻が飛び出ています。
青森県ではこのような姿の柿はどこのお店を探しても見ることはできません。
この柿の売りは濃厚な甘さ。甘柿なのでいつ食べてもいいのですが
少し柔らかくなってきたところを
手で割って食べるのが産地の食べ方だと紹介されています。
食べてみましたが、妙丹柿をはるかに超えたねっとりとした甘さです。
さてこの柿がすごいのは歴史です。
なんと室町時代に渋柿が突然変異を起こしたもので
日本に初めて誕生した甘柿だというのです。
つまり今、流通している甘柿のルーツ。
そう考えるとなんだかありがたくなってきます。
ビジネス類型のある環境システム科では
ビジネスの基礎や起業などについても学びます。
また生物生産科では地域の特産品を考える商品開発という授業もあります。
そこで学ぶのが商品のストーリー性。
商品の背景にある歴史や苦労を紹介することで売り上げが向上するのです。
この御所柿も知らずに食べるとただの柿ですが
歴史を知ることで貴重性を感じられて面白いものです。
渋柿の妙丹柿しかない青森県と違い
暖かな西日本にはまだまだ見たこともない柿がきっとあるはず。
歴史を学びながら食べてみたいものです。
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菊巻き

2019年12月26日 | 
青森県の太平洋側に位置する南部町や八戸市の特産に食用菊があります。
一説によると、江戸時代に南部藩主が
京都の九条家から「阿房宮」という品種を観賞用 としてもらい受けたのがきっかけで
南部町に広まったのが始まりだといいます。
この阿房宮、数ある食用菊の中でも苦味が少なく群を抜いて美味しい品種。
そこで独特の香りを楽しめるおひたしや酢の物、
味噌汁の具にして利用する食文化が生まれました。
でも面白い使い方をする料理もあります。
これは「菊巻き」という漬物。中に入っているのはダイコンやニンジン。
それを食用菊のシートで海苔巻きのように包んでいます。
冬になると食卓に上がる定番の食用菊料理ですが
最近は作るよりも購入する人の方が増えていると思われます。
先日、久しぶりにいただきましたが
食べてみるとびっくりするほどの薄味。
塩分の取りすぎで短命県といわれる青森県の食改善の指導の成果かもしれません。
また薄味にしたため、食用菊の風味も今まで以上に香って
美味しくなったように感じます。
漬物はかつて貴重な野菜を春まで食べるための保存食として
さまざまなものが生み出されました。
残念ながら自分の家で漬物を作る人は減ってしまいましたが
それでも食べる人がいれば、食文化は残ります。
妙丹柿同様、特産の食用菊を絶やさないよう食べる保存活動をしたいものです。
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超限定

2019年12月21日 | 
青森県の農産物といえば津軽地方のリンゴとお米、
そして名農のある県南地方ではニンニク、ナガイモなどが有名です。
中でもニンニクは福地ホワイト6片種というあまりにも優れた品種があるため
全国どこに行っても青森のニンニクは高い評価を得ています。
この福地という地名は現在の南部町。つまりこの地域の在来種だったのです。
しかし気候が適していたのでしょうか、
ニンニクの生産地で有名なのはお隣の田子町(たっこまち)。
東京の大田市場にたくさんのニンニクが並びますが
田子という文字が記載されているとそれだけで高値になるといわれるほど
優れたニンニク産地として知られています。
アメリカのニンニク産地である町と姉妹都市を結んだり、
町にガーリックレストランを作ったり、
ニンニク風味のコーラなど新しい加工品を開発するなど
びっくりするぐらいニンニクを使ったユニークな町おこししています。
そんな田子町が今、新たな挑戦をしています。
それが新品種の開発です。一般に品種改良は試験場が行いますが
田子町はニンニクの先進地。したがって地元農家と試験場が連携しながら
町が品種を開発して登録したのです。名前は「美六姫」(みろくひめ)。
田子町にある観光地「弥勒の滝」(みろくのたき)から名前を取りました。
弥勒の滝は、室町時代初期頃に弥勒菩薩を信仰し、この滝の元で修行を積んでいた
「キュウ岳坊」というお坊さんにちなんでつけれられた観光地です。
美六姫は、弥勒の滝をもじって美しい6片という意味で町の子供が名付けています。
福地ホワイトの後継者として次世代を担う新品種登場ということで
青森県では今年、大きなサクランボであるジュノハートとともに話題となりました。
美六姫の登録は2017年ですが、まだ生産量が少なく年5トンぐらいしか採れません。
その貴重な新品種が先日、全国先行販売と称して
田子町のガーリックセンターだけでごく少量ですが初めて販売されました。
球の締まりの良さ、濃厚な味と甘さが魅力ということですが、
町の生産量の半分ぐらいに増えるまでまであと10年もかかるようで
全国に流通するのはまだまだ先かもしれません。
年明けの1月に青森県は東京で大々的な披露イベントを計画しているようですが
問題なのは和牛同様、種の流出防止。貴重な地域資源を守りながら
早く全国の皆さんに楽しんでもらいたいものです。
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