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感想:『占星術殺人事件 改訂完全版』

2009年11月18日 18時20分49秒 | 本と雑誌
占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社ノベルス)占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社ノベルス)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2008-01-11


初めての島田荘司。もちろん改訂前も読んだことはない。

久しぶりにミステリを読んだという気分になった。やはり、読者への挑戦状あってのミステリ、とまでは言わないが、奇抜なトリックと広言する名探偵、そしてボンクラなワトソン役あってのミステリと本書を読むと言いたくなる。

デビュー作ということだが、仕掛けは見事。
昭和初期の事件を四十数年後に解き明かすという設定、当時の事件の概要を複数の視点から描いた手法、単純なトリックを複雑に見せる技術、どれもよくできている。
発表されたのが1981年で、作品の舞台(現代)が1979年。そういう意味での古さはあるものの、作品の面白さは時代に左右されていない。
事件の時代設定を1936年にしたのは科学捜査を排除したかったからだろうが、携帯電話やインターネットのない時代のめんどくささが浮き彫りになっている点が興味深かった。

読者への挑戦の時点で、第三の事件「アゾート殺人」のトリックと犯人は分かった。
以下ネタバレ。
偽札のトリックを知れば易しい謎だろう。「AZOTH」の書が彼女のものとするならば、第一の殺人も彼女が犯人とすべきだったが、その点と彼女が第一発見者だったことを失念していて間違えた。彼女以外の家族が平吉殺害→それを動機に一枝及び5人の娘殺害という手順を考えたが、先に述べた2点において、彼女の単独犯とする方が妥当だった。第二の事件も暗闇にしたという記述で交換のトリックは予想されたが、誘った段階での入れ替わりにはリスクが大きく、これについてはトリックとしてちょっと疑問の余地を残した。

ヒントが易しかったせいもあり、驚きは得られなかったが、ミステリらしい面白さは端々に感じられて楽しかった。新本格ミステリは綾辻行人をかなり読んだ。(Wikiに掲載されている新本格派ミステリー作家では北村薫、森博嗣の名も挙がっているが、それらの作品を新本格だと感じない。)それ以来という感じで懐かしい想いもした。当面、 御手洗潔シリーズを順に読んでいこうかと思っている。(☆☆☆☆☆☆)

なお、感想を書く際にWikiを見て気付いたが、このトリックは「金田一少年の事件簿」で盗作問題が起きている。コミックは読んでいないしアニメではその話は放映されていないようだが、TVドラマでは恐らく見ていると思われる。読んでいる際にはそのことは全く覚えていなかったし、TVドラマについてもさっぱり記憶していないが、トリックに気付いた原因なのかもしれない。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やー、ありましたね、金田一パクリ事件。 (しずる)
2009-11-18 23:47:36
自分は金田一が後だっため被害にあわずに済んだんですが、この事件で金田一を読むのをスッパリと止めましたw 他にもあからさまな盗用が目立ちましたしね^^;

御手洗潔シリーズ、さきは相当長いですが、がんばってください! なかには、えーっwっていう作品もありますけど、そこはご愛嬌ということでww

吉敷竹史を主人公とするもう一方のシリーズも、見た目は松本清張風の社会派推理ですけど、トリックは本格物なので、楽しめると思いますよ。『Yの構図』とか『奇想、天を動かす』(奇天さんのためにあるようなタイトルだ!w)など、忘れがたい名作も生み出されてます。そして何よりも、御手洗物と世界が共通なので、登場人物がリンクしてくるんですよねw 困ったことにw

あ。北村薫ですけど、一作だけガチガチの本格物を書いています。『盤上の敵』という作品で、本格原理主義者とも称される彼の本格マニアぶりが遺憾なく発揮されております。興味がありましたら、ぜひどうぞ。
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金田一少年は、堂本剛の第1シリーズは見てたと思う... (奇天)
2009-11-19 02:03:57
Wikiなどで著作リストはチェックしてますが、思いのほか多いですね、御手洗潔シリーズw
まあのんびりと楽しみたいと思います。そんなに予約も多くはないので待つ必要がないですし。
『奇想、天を動かす』はタイトル見て必ず読もうと思ってましたwww

『盤上の敵』は面白そうですね。現在の3部作を読み終えたら手を出したいと思います。
本格ものばかりになるとまた飽きそうですが、やはり時々はこういうのも楽しいですねw
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