環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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東日本大震災:汚染水 1.1万トン海へ放出(朝日新聞 朝刊)、  原子炉冷却 進まず(朝日新聞 夕刊)

2011-04-05 10:54:39 | 自然災害
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                              第6章の目次


ヨハンソン教授らが描いたもう一つのシナリオ

 スウェーデンの将来のエネルギー体系に関するシナリオとしては、スウェーデン・ルンド大学のトーマス・B・ヨハンソン教授らが描いたシナリオが1989年にスウェーデンのルンド大学から出版された960ページの大作『Electricity 』と題する英文書物の最後に「選り抜いた挑戦:スウェーデンの電力部門のための技術オプション』と題する論文として収載されております。

 このシナリオについては、1991年10月にダイヤモンド社から刊行された『グリーンピース・レポート:地球温暖化への挑戦』と題する本の第8章で「電力事業の進むべき道:スウェーデンの実験」と題して紹介されておりますので、興味のある方は同書を参照して下さい。その要約と結論の部分から、少々、引用しておきましょう。

   2010年のスウェーデンの電力需要シナリオを、電力最終利用効率のレベルを変えることにより4種類示した。これらの需要シナリオを、
   さまざまな燃料と発電技術を利用した場合を設定した3種類の発電シナリオと組み合わせた。どのシナリオでも、GDPの年間成長率を
   1.9%とし、それに対応して新たな建物の建設、工業生産、家庭が購入する家電製品などを想定した。

   どのシナリオの組み合わせでも、この経済成長に伴うエネルギー必要量は全量供給される。最終需要レベルと供給資源の内容に基づき、
   エネルギー供給量の総費用、それに伴うCO2 の排出量、ならびにその他の熱・発電の副産物を算定した。GDPがその   線から上下した場合の影響や、ライフスタイルが変わった場合の影響については検討していない。

   ここで紹介した問題と可能性は、スウェーデンに特有のものではない。最終利用効率の向上により、一次エネルギー利用を削減するという
   ことは社会が求めるエネルギー・サービスを提供し、同時に地球規模の問題を解決する上で鍵を握る戦略である。シナリオで示した効率の
   よいエネルギー利用により、スウェーデン は地球規模の問題の解決という線に沿ったエネルギー・システムを開発できる   であろう。

   21世紀が近づく現在、スウェーデン社会は電力およびエネルギーによるサービスの利用を拡大する計画がある。電力エネルギーによるサ
   ービスを供給することを企業活動とすれば、電力会社や企業家には大きなビジネスの機会が生まれる。需要と供給の両方の部分で先端技術
   が重要な役割を果たすという意味で、今後、活気にあふれた時代が訪れるであろう。政策決定と市場に対して、新たな挑戦が行われることになる。


 ここで重要なことは「電力エネルギーによるサービス」という言葉の意味です。社会が電力会社に求めるものは電力自体ではありません。電力需要というのは社会が必要とする電力量そのものではなく、電力によって提供されるサービスの反映であること、言い換えれば、社会が求めるのは温水シャワー、冷凍・冷蔵、洗濯、照明、空調、データの記憶・検索などの情報処理などのサービスということです。

 ですから、電力会社は電力を販売するだけの会社から脱皮して、「電力によるサービス」を社会に対して販売する企業となる時、電力会社のビジネスの機会が大きくなるということなのです。

 「電気事業の創始者といわれるトーマス・エジソンの野望は電力を販売することではなくて、照明というサービスを販売することであった。エジソンは電球の効率が向上すれば、彼の利益も増大すると考えていた」とこのシナリオの著者は述べています。