東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

荷風住居跡巡り2013(3)

2013年01月13日 | 坂道

「浅利坂」上 街角地図 東都小石川絵図(安政四年(1857)) 薬罐坂上 前回の荒木坂上を左折しさらに上り、その上で右に曲がり、そのまま北へ進むと、右手に下り坂が見えてくる。ここが「浅利坂」(誤り)である。一枚目の写真は、この坂上から撮ったもので、坂下を横切る道は、荒木坂を直進してきた道である。

二枚目は、そのちょっと先のT字路に立っていた街角地図であるが、「浅利坂」が示されている。これには、上から、新坂(今井坂)、荒木坂、これから向かう薬罐坂、横町坂、服部坂、大日坂、その先の神田川にかかる華水橋などがあり、茗荷谷まで続く谷道もある。

三枚目の尾張屋板江戸切絵図 東都小石川絵図(安政四年(1857))の部分図にアサリサカがある。この江戸のアサリサカは、横関の説明にあるように、消滅している(以前の記事)。

二枚目の街角地図と、三枚目の江戸切絵図を比べると、先ほどのT字路は江戸切絵図にもあり、その北側にアサリサカがあるが、街角地図が示す「浅利坂」はT字路の南にあるので、これからも誤りであることがわかる。

T字路を左折し、西へ向かうとまもなく、四枚目のようにちょっとした下り坂となって坂下からまた緩やかな上りとなるが、この坂下の鞍部が薬罐坂の坂上(現代地図)である。荒木坂上からこの坂上まではじめて歩いた。

薬罐坂上 薬罐坂下 横町坂下 横町坂上 上四枚目の写真の坂下鞍部を左折すると、薬罐坂の坂上で南へ下っている。一枚目の写真は坂上から坂下を、二枚目は坂下から坂上を撮ったものである。

上三枚目の江戸切絵図には鞍部の先にヤカンサカとあり、近江屋板には鞍部のあたりにヤカンサカとあるため、この坂の位置について以前の記事その後の記事で、かならずしも鞍部から南へ下る坂(上二枚目の街角地図が示す位置)とはいえないかもと疑問を呈したが、今回訪れて、やはり一枚目の写真のように鞍部から下る坂であろうと思った。薬罐坂とは、幽霊坂のような寂しいところの坂であるが(横関)、坂上から下ってくると、坂下はむかし薄暗く寂しいところだったように想えてくるからである。

薬罐坂を下り、右折、左折して進み、水道通りの手前を右折し、細い道を進むと、上り坂になるが、ここが横町坂である。三枚目は途中から坂上側を、四枚目は坂上から坂下を撮ったものである。この坂は、標識などが立っていないが、上三枚目の江戸切絵図にもあり(福勝寺の門前の道)、江戸から続く坂である。

服部坂上 小日向神社上側から 大日坂中腹 雑司ヶ谷音羽絵図(安政四年(1857)) 横町坂上は、服部坂の上側で、一枚目の写真は、その坂上から坂下側を撮ったものである。

坂上を左折して進むと、そのあたりは小日向神社の上側であるが(現代地図)、神社側(南)の眺望がよいことに気がついた。二枚目はそこから撮ったものであるが、ビルに囲まれてビルしか見えないと云ってよいいつもの風景からいえば、これだけ見えるところはめずらしい。左右がよく見え視界が広いため開放感のある風景になっている。このあたりは小日向台地の南端である。

思いもかけずよい眺望を楽しんでから、北へ進み、適当なところで、左折し進むと、大日坂の坂上側に出た。服部坂上からここまでもはじめて歩く道である。

三枚目は大日坂中腹の標識が立っているところから坂上を撮ったもので、猫が歩いていてちょっとのんびりした感じがよい。

四枚目は、尾張屋板江戸切絵図 雑司ヶ谷音羽絵図(安政四年(1857))の部分図で、この坂があるが、服部坂が隠れてしまっている。「ハットリ坂」とあるが、ここはかなり坂上を進んだところである。

大日坂下 大日坂下 華水橋から大日坂下方面 大日坂を下り、坂下側で水道通りとの交差点方面を撮ったのが一枚目の写真で、交差点から坂下を撮ったのが二枚目である。坂下ではかなり緩やかになっている。

交差点を横断し、そのまま南へ向かうと、神田川にかかる華水橋である(現代地図)。ここを渡ってからふり返って北側を撮ったのが三枚目の写真である。

ここまでの道程を簡単にまとめると、JR水道橋駅→白山通り→富坂下→堀坂下→六角坂下→善光寺坂→伝通院門前→三百坂上→荷風生家跡→金剛寺坂→鶯谷の無名の階段坂上→新坂(今井坂)→荒木坂→薬罐坂→横町坂→服部坂上→大日坂→華水橋で、ちょうど神田川の水道橋からその上流の華水橋まで歩いたことになる。所要時間は1時間10分。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図集 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
デジタル古地図シリーズ第一集【復刻】江戸切絵図(人文社)
デジタル古地図シリーズ第二集【復刻】三都 江戸・京・大坂(人文社)
「古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩」(人文社)
「江戸から東京へ 明治の東京」(人文社)
「東京人 特集 東京は坂の町」④april 2007 no.238(都市出版)
「東京人 特集 東京地形散歩」⑧august 2012 no.314(都市出版)

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