東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

新渡戸稲造旧居跡~小日向公園~薬罐坂

2011年02月14日 | 坂道

新渡戸稲造旧居跡 新渡戸稲造旧居跡説明板 新渡戸稲造旧居跡 埋込プレート 横町坂上にもどり、右折し、服部坂上を右手に進むと、やがて、左手に樹木でこんもりとしたところが見えてくる。その道路わきに新渡戸稲造旧居跡の説明板が立っている。以前も確か服部坂上からこの辺に来ているはずであるが、はじめてである。

新渡戸稲造(1862~1933)は、農学者、教育者で、明治37年(1904)から昭和8年(1933)までここに住み、その住居はニトベ・ハウスと呼ばれていたとのこと。内村鑑三や廣井勇などとともに明治10年(1877)から札幌農学校で学んだ(以前の記事参照)。

ちょっと荒れた感じもするが、古くなった説明板とよくあっている。いずれは工事がはじまって、なにかになるのであろう。説明板近くの道路面に案内プレートが埋め込まれているが、これで水道通りに面した日輪寺に真山青果のお墓があることを知った。

小日向台町小学校わき交差点 小日向台町小学校わき交差点 小日向台町小学校わき交差点 新渡戸稲造旧居跡からそのまま北へちょっと進むと、小日向台町小学校わきの交差点に至る。この交差点に来ておもしろいと思った。直進方向と直交方向ともに食い違っているからである。二方向とも食い違いの珍しい交差点である。

尾張屋板江戸切絵図を見ると、服部坂上を直進すると四差路に至るが、ここがこの交差点であると思われる。直進方向(南北方向)に食い違っているが、直交方向(東西方向)はまっすぐに描かれている。近江屋板も同様である。

現在も、左と右の写真からわかるように、南北方向はかなりの食い違い量である。これに比べると、東西方向は中の写真のように、少ないもののやはり食い違いがある。街歩きをしていると、このような交差点によく出くわす。なぜこのような食い違いができるのかいつも疑問に思う。別々に道をつくって、一直線にならなかっただけのことなのかもしれないが。

小日向公園 小日向公園 小日向公園 薬罐坂途中 食い違いの交差点を右折し東へ進むと、すこし下り坂になる。一本目を右折し南へ進むと、生西寺の前に出て薬罐坂(やかんざか)の坂上となるが、その手前、左手に小日向公園の標識があり、上り階段があるので、上って公園に行ってみる。 こじんまりとした公園である。小日向台地の南端の一画のようで、眺めがちょっとよいが、下側のみならず正面にお墓が並んでいる。水道通りの日輪寺や善仁寺の墓地と思われる。

薬罐坂のいわれなどは別の薬罐坂で書いたとおりである("上荻の薬罐坂"、"目白台の薬罐坂")。

尾張屋板を見ると、薬罐坂が上記とちょっと違った位置で、上記の交差点を右折したさきの道筋に、ヤカンサカ、とある。生西寺の北側である。近江屋板も同様で、△ヤカンサカとあり、坂マークの方向が東側上りを指している。

横関は、文京区小日向一丁目10番の生西寺北わきの坂であるとし、尾張屋板の絵図をのせている。

薬罐坂途中 薬罐坂下 薬罐坂下 薬罐坂下 石川は、横町坂の北方、小日向一丁目10番の浄土宗生西寺の上(北側)を、東南に曲がって下る坂道で、嘉永年間の東都小石川小日向絵図に「ヤカンサカ」と記入されているとし、その絵図はいわゆる尾張屋板(二版の最終版、安政四年(1857))とほぼ同じと思われるが、同書にある地図は、上記の道筋から右折し南へと下る道を薬罐坂とし、山野と同様である。

生西寺の上(北側)を東南に曲がって下る坂道とは、右折し南へ下る道ではなく、同じ道筋を指すと思われるのだが。

岡崎は、横町坂の坂下の道を迂曲しながら北に上る坂、坂の西に浄土宗生西寺があるとし、尾張屋板を同様にあげているが、石川の地図と同様の道筋を地図に示している。

今回のせた写真はいずれも上記の食い違いの交差点から東に進んで一本目を右折した先で撮ったもので、石川の地図、山野、岡崎が示すところである。薬罐坂とは、幽霊坂と同じような寂しいところの坂をいったが、ここもいかにも寂しそうな坂である。しかし、江戸切絵図(東都小石川絵図)が示す位置は、右折する前の道で、明らかに異なり、いずれが薬罐坂であるのか、ちょっとわからない。岡崎、石川は同じ切絵図を引用しながら、なぜ切絵図と同じ位置を示さないのか理由が不明である。このことはこれを書いていて気がついたので、切絵図が示す坂の写真は撮れなかった。この点は今後の課題である。

上記の写真の坂を下って二回屈曲しながら進み、やがて前回の横町坂の坂下が右に見えると、すぐに水道通りである。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
「切絵図・現代図で歩く江戸東京散歩」(人文社)
「古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩」(人文社)
「古地図・現代図で歩く戦前昭和東京散歩」(人文社)

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