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J.K・ローリング(著) 亀井 よし子(訳) 講談社(刊)
一見のどかなイギリスの町パグフォード、ある男が40代の若さで死んだ。その死をきっかけに立て続けに起こる事件の連鎖……。普通の人々の内面が次々と暴かれてゆき、次の場面がどうなるか気になって、読み出したら止まらない。小さな出来事が集まってやがて大きな流れとなり、最後は奔流となって、胸を締め付ける結末へ。
「ハリー・ポッター」の著者の新作は大人向け小説でした。ファンタジーではないことは承知していましたが、ここまで赤裸々な人間のエゴが書かれているとは予想外でした。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_sup.gif)
舞台はイギリスの田舎町。40代の地区議員バリー・フェアブラザーの突然死によって行われる補欠選挙を軸に、彼の友人や対立者、その家族たちの思惑がそれぞれの視点で語られる群像劇で、人種や宗教、貧富の差、ドラッグや性といったダークな部分をこれでもかと炙りだします。
そこにはインターネット掲示板を使った個人攻撃や、生活保護受給の低所得者の抱える問題なども含まれ、まさに現代が抱える問題の縮図になっています。
登場人物の多さにもちょっと閉口。徐々に増えていくのではなく、同時進行で次々と死者の友人や対立者及びその配偶者や子供まで出てくるので、頭の中に相関図が出来上がる頃には物語の後半に入っていました![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
(登場人物)
・急死したバリー・フェアブラザーと妻のメアリー、4人の子供たち
・バリーの死に立ち会ったマイルズ・モリソンと妻のサマンサ
・マイルズの両親のハワードとシャーリー
・ハワードの共同経営者のモーリーン
・工場労働者のサイモン・プライスと妻で看護士のルース、息子のアンドルーとポール
・外科医のヴィクラム・ジャワンダと妻で医師のパーミンダー
・彼らの3人の子供たち(スクヴィンダー、ジャスワント、ラジパル)
・ソーシャルワーカーのケイ・ボ-ドウィンと娘のガイア
・ギャヴィン・ヒューズ:弁護士。ケイのBF。マイルズとは仕事のパートナー
・副校長のコリン・ウォールと妻で生徒指導部主任のテッサ、息子のスチュアート
・フィールズに住む生活保護世帯のテリと子供たち(クリスタル、ロビー)
フィールズという貧困地区の扱いを巡って対立するバリーとハワードの図式がバリーの急死で崩れます。バリーの空いた議席を争うのはハワードの息子のマイルズとバリーの友人のコリン、変わりもののサイモンの3人。
ところがコリンは長年強迫神経症に苦しんでいて、サイモンは家庭内暴力者です。彼らの息子は親友同士ですが親とはうまくいっておらず、一方サイモンと妻の仲もぎくしゃくしていて、サマンサと義母のシャーリーは共に嫌い合っているという(^^;
ギャヴィンは恋愛に優柔不断でケイをイラつかせ、挙句は未亡人のメアリーに熱を上げる始末。パーミンダーは亡きバリーの崇拝者であることがばらされます。ハワードとモーリーンの長年の不倫関係も暴露され、全く大人は何やってんだと呆れる相関図が![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_gaan.gif)
狭い町のことですから、医者と患者、学校関係、ソーシャルワーカーなど複雑に交差する人間関係は大人も子供も一緒です。アンドルーはガイアに恋し、スチュアート(通称ファッツ)は性のはけ口としてクリスタルを利用します。ファッツに苛められるスクヴィンダーは自傷行為に逃げ、ガイアは母の都合で田舎町に住むことになった不満と鬱屈を抱えています。
誰も彼もが醜いエゴを抱え、一発触発の危険をはらんで進む物語は、やがて議員候補者やその関係者の中傷合戦の様相を呈します。しかしそれは誹謗された人物たちの子供たちが書きこんだものだったのです。掲示板の管理者であるシャーリーの防御意識の低さは親世代の無知の露呈でもあります。この書き込みは登場人物たちの間でかなりの波紋を起こしますが、町全体としては黙殺されていき、やがて迎えた選挙はマイルズが勝利します。しかし一件落着に思えた直後、クリスタルと弟のロビーに起こった悲劇的な結末を迎えるのです。
初めは野卑な少女に見えたクリスタルが、本当は家族思いの優しい子で、ジャンキーの母親と幼い弟を何とかして守ろうと必死なことがわかってきます。今の暮らしから脱出し幸せを手に入れようとしてファッツとの間に子供を得ようとする姿は狡さより憐れさを誘いました。
ロビーの死の直前に彼を見かけながら通り過ぎた大人たちの姿はフィールズを切り捨てようとしているこの町の人々に重なってみえました。
一人の死の波紋が広がっていく物語。登場人物たちはいわゆる普通の人々です。それだけに本質が曝け出される展開は愉快とは言えませんが、同時に目を背けられない真実を突き付けられている気がしました。
唯一の救いはスクヴィンダーに起きた変化です。ロビーを助けようとしたことで自分自身をも救う結果になったことに安堵しました。
一見のどかなイギリスの町パグフォード、ある男が40代の若さで死んだ。その死をきっかけに立て続けに起こる事件の連鎖……。普通の人々の内面が次々と暴かれてゆき、次の場面がどうなるか気になって、読み出したら止まらない。小さな出来事が集まってやがて大きな流れとなり、最後は奔流となって、胸を締め付ける結末へ。
「ハリー・ポッター」の著者の新作は大人向け小説でした。ファンタジーではないことは承知していましたが、ここまで赤裸々な人間のエゴが書かれているとは予想外でした。
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舞台はイギリスの田舎町。40代の地区議員バリー・フェアブラザーの突然死によって行われる補欠選挙を軸に、彼の友人や対立者、その家族たちの思惑がそれぞれの視点で語られる群像劇で、人種や宗教、貧富の差、ドラッグや性といったダークな部分をこれでもかと炙りだします。
そこにはインターネット掲示板を使った個人攻撃や、生活保護受給の低所得者の抱える問題なども含まれ、まさに現代が抱える問題の縮図になっています。
登場人物の多さにもちょっと閉口。徐々に増えていくのではなく、同時進行で次々と死者の友人や対立者及びその配偶者や子供まで出てくるので、頭の中に相関図が出来上がる頃には物語の後半に入っていました
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(登場人物)
・急死したバリー・フェアブラザーと妻のメアリー、4人の子供たち
・バリーの死に立ち会ったマイルズ・モリソンと妻のサマンサ
・マイルズの両親のハワードとシャーリー
・ハワードの共同経営者のモーリーン
・工場労働者のサイモン・プライスと妻で看護士のルース、息子のアンドルーとポール
・外科医のヴィクラム・ジャワンダと妻で医師のパーミンダー
・彼らの3人の子供たち(スクヴィンダー、ジャスワント、ラジパル)
・ソーシャルワーカーのケイ・ボ-ドウィンと娘のガイア
・ギャヴィン・ヒューズ:弁護士。ケイのBF。マイルズとは仕事のパートナー
・副校長のコリン・ウォールと妻で生徒指導部主任のテッサ、息子のスチュアート
・フィールズに住む生活保護世帯のテリと子供たち(クリスタル、ロビー)
フィールズという貧困地区の扱いを巡って対立するバリーとハワードの図式がバリーの急死で崩れます。バリーの空いた議席を争うのはハワードの息子のマイルズとバリーの友人のコリン、変わりもののサイモンの3人。
ところがコリンは長年強迫神経症に苦しんでいて、サイモンは家庭内暴力者です。彼らの息子は親友同士ですが親とはうまくいっておらず、一方サイモンと妻の仲もぎくしゃくしていて、サマンサと義母のシャーリーは共に嫌い合っているという(^^;
ギャヴィンは恋愛に優柔不断でケイをイラつかせ、挙句は未亡人のメアリーに熱を上げる始末。パーミンダーは亡きバリーの崇拝者であることがばらされます。ハワードとモーリーンの長年の不倫関係も暴露され、全く大人は何やってんだと呆れる相関図が
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狭い町のことですから、医者と患者、学校関係、ソーシャルワーカーなど複雑に交差する人間関係は大人も子供も一緒です。アンドルーはガイアに恋し、スチュアート(通称ファッツ)は性のはけ口としてクリスタルを利用します。ファッツに苛められるスクヴィンダーは自傷行為に逃げ、ガイアは母の都合で田舎町に住むことになった不満と鬱屈を抱えています。
誰も彼もが醜いエゴを抱え、一発触発の危険をはらんで進む物語は、やがて議員候補者やその関係者の中傷合戦の様相を呈します。しかしそれは誹謗された人物たちの子供たちが書きこんだものだったのです。掲示板の管理者であるシャーリーの防御意識の低さは親世代の無知の露呈でもあります。この書き込みは登場人物たちの間でかなりの波紋を起こしますが、町全体としては黙殺されていき、やがて迎えた選挙はマイルズが勝利します。しかし一件落着に思えた直後、クリスタルと弟のロビーに起こった悲劇的な結末を迎えるのです。
初めは野卑な少女に見えたクリスタルが、本当は家族思いの優しい子で、ジャンキーの母親と幼い弟を何とかして守ろうと必死なことがわかってきます。今の暮らしから脱出し幸せを手に入れようとしてファッツとの間に子供を得ようとする姿は狡さより憐れさを誘いました。
ロビーの死の直前に彼を見かけながら通り過ぎた大人たちの姿はフィールズを切り捨てようとしているこの町の人々に重なってみえました。
一人の死の波紋が広がっていく物語。登場人物たちはいわゆる普通の人々です。それだけに本質が曝け出される展開は愉快とは言えませんが、同時に目を背けられない真実を突き付けられている気がしました。
唯一の救いはスクヴィンダーに起きた変化です。ロビーを助けようとしたことで自分自身をも救う結果になったことに安堵しました。
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