2019年12月20日公開 アメリカ 125分 G
スラム街出身で無職、妻と息子にも見放されたデル(ケビン・ハート)は、ハンディキャップを持つ大富豪フィリップ(ブライアン・クランストン)の介護人として働くことになる。秘書のイヴォンヌ(ニコール・キッドマン)を始め周囲は、キャリアも教養もなくお調子者のデルを雇うことに反対する。だが、お互いに一人の人間として接し、刺激し合う二人は忘れていた充実した日々に満たされていく。しかしフィリップの心には、誰にも言えない秘密があった。そんなある日、ふたりを揺るがす出来事が起きてしまう。果たしてどん底だった彼らは<人生のアップサイド>に辿り着けるのか?
スラム街出身の無職の男とハンディキャップを持つ大富豪という、住む世界の全く違ったふたりが出会ったことで巻き起こる笑いと友情に心熱くなる物語で、実話に裏付けられているだけに説得力もあります。もちろんオリジナルのフランス版も鑑賞していますが、細かな内容は忘れていたかな エンディングはオリジナル版とは異なっていて、「え?予告で流れていたあのシーンはここで登場するの??」でした
フィリップがデルを介護者として採用したのは、彼の態度が障害者でも普通の人でも変わらないということの他に、利害関係のないデルなら自分の延命拒否に対しても素直に従うだろうという打算でしょう。これまで彼に対する周囲の腫れ物に触るような態度や、同情し見下すような視線に我慢がならなかったこともあるでしょう。フィリップが無意識に求めていたのは対等な関係なんですね。
デルは結婚と離婚を経験し、息子のいる父親です。身勝手な行動で妻に愛想を尽かされ、息子にも冷ややかな視線を浴びせられていたデルは、職に就くことで家族の信頼を取り戻そうとして、フィリップの提案を受け入れるのね。
フィリップを特別扱いしないデルの態度が逆にフィリップの気難しさを和らげます。二人の間に雇用主と介護者の枠を超えた友情が育っていく過程がいくつかのエピソードと共に語られます。オペラに全く興味のなかったデルが傾倒していく様子や、痛みを和らげるための「葉っぱ」でハイになったフィリップの行動など、コミカルでちょっと下ネタも入って描かれていました。
デルはフィリップの文通相手と強引に電話で会話させ、デートさせますが、相手はフィリップの素性を知った上で近づいてきたことがはっきりして、予想していたこととはいえフィリップは深く傷つき、感情に任せてデルを解雇してしまいます。
この一件の前に、傲慢な階下の住民からの嫌味の仕返しとしてデルが描いた絵を高額で売るというエピソードがあります。デルは渡された絵の代価を妻子のための家の購入にあて、彼の得意とする機械作業の仕事に就くんですね。
再び自分の殻に閉じこもってしまったフィリップを心配したスタッフからデルに連絡が入り、彼は強引にフィリップをドライブに連れ出すの。これが冒頭のパトカーとのカーチェイスに繋がります。このデルの荒療治に再びフィリップに笑顔が戻ります。そして彼の事故の原因となったパラグライダーに乗り空中に手を広げ、「自由」を楽しむ二人が映し出され、エンドロールです。
秘書のイヴォンヌのキャラ設定はオリジナルと異なり、聡明でフィリップには上司以上の好意を抱きながら胸に秘めて仕える女性として描かれていました。そして二人の関係もやっぱりハッピーな結末になりそうで 個人的にはこちらの方が好みですし、ハリウッドらしい結末だなぁ。