杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

0.5ミリ

2020年11月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2014年11月8日公開 196分 G

介護ヘルパーの山岸サワ(安藤サクラ)は、派遣先の家族から「冥土の土産におじいちゃんと寝てほしい」との依頼を受ける。しかしその当日、サワはある事件に巻き込まれ、家も金も仕事も全てを失ってしまう。人生の崖っぷちに立たされたサワは、訳ありの老人を見つけては介護を買って出る、押しかけヘルパーとして生きていくことになる。(映画.comより)

 

奥田瑛二の長女で映画監督の安藤桃子が、実妹サクラを主演に姉妹タッグを組んだ作品です。自身の介護経験から着想を得て書き下ろした小説を映画化した人間ドラマとなっています。三時間超えの長編とは知らずに観始めましたが、どんどんサワの人間性に引き込まれていきました。

派遣先の片岡家で、寝たきり老人昭三(織本順吉)の身体介助を担当していたサワは、昭三の娘雪子(木内みどり)から出された別料金の依頼を、お金欲しさに引き受けます。雪子が用意した赤いワンピースを着て添い寝を始めたサワですが、猛然と迫る昭三に耐え兼ねてて思わず突き飛ばすと、衝撃でストーブが倒れて火事に。昭三を引きずって部屋から出て助けを求めに階下へ降りたサワが見たのは、雪子の息子マコト(土屋希望)が呆然と立ち尽くす傍で首を吊って死んでいる雪子の姿でした。・・・っていきなりハードな展開

この件で、仕事をクビになり、寮も追い出されたサワに追い打ちをかける出来事が!電車の中に全財産を入れた上着を置き忘れ、無一文になってしまったのね ところが、ここからが彼女の本領発揮です。

カラオケ屋をホテルと勘違いして宿泊しようとしていた老人康夫(井上竜夫)を見かけたサワは、強引に一緒に部屋に入ると、あっという間に康夫やの心を掴んで朝まで楽しく過ごします。介護ヘルパーという職業柄、老人の扱いは手慣れたものですもんね。妻に先立たれ遺産を狙う息子夫婦と暮らす孤独な老人の康夫にとって、サワとの出会いは束の間の憩いだったのでしょう、別れ際にサワに一万円を渡します。彼が小金を持っていることに気付いているサワですが、寝ている隙に持ち逃げしようとかは全く思っていなかったんですね このエピソードでサワの人間性が少し見えてきます。

次にサワは、スーパーの駐車場で憂さ晴らしに買物客の自転車をパンクさせていた老人茂(坂田利夫)と出会います。誰にも言わないからと脅し、一人暮らしの茂の家に上がり込んで強引に一緒に暮らし始めたサワ。料理はもちろん家事全般を完璧にこなすサワに徐々に心を許していく茂。彼もまた娘夫婦から邪険に扱われている孤独な老人なんですね。知人の斉藤(ベンガル)から怪しげな投資の話を持ち掛けられている現場を見たサワは、詐欺を疑い確認の電話を入れると、相手がヤクザだとわかります。乗り込んできた斉藤に妻だと嘘をついて撃退するサワ。あっぱれですショックを受けた茂は突然「家に帰る」と言い出し、自慢の愛車にサワを乗せ向かった先は高級老人ホームでした。タンス貯金の一千万円で手続きしていたのね サワに愛車を譲り、ありがとうと言ってホームに入って行く茂を見送るサワがちょっと寂しそう

あてどなく辿り着いたショッピングセンターで、ベンチで時間を潰す老人真壁義男(津川雅彦)を見て好奇心から後をつけたサワは、本屋でエロ写真集を万引きしようとする義男を捕まえ、家に連れていってと脅します。(茂の時もでしたが、老人の首根っこを摑まえるのが上手いなぁと変なところで感心してしまいました)義男は広い一軒家に寝たきりの妻静江(草笛光子)と二人で暮らしていました。サワは早速家政婦の浜田(角替和枝)と仲良くなって交代で静江の介護にあたることを勝手に決めてしまいます。近所にエロ本を盗もうとしたことをバレされそうになり、渋々サワを家に置いた義男ですが、料理上手で若く色気のあるサワに徐々に惹かれていきます。風呂場でサワの裸を盗み見して興奮するなんぞは老人でも男は男ってことね。 でも、サワの株が上がるにつれ仕事を奪われて不満が募った浜田が、遺産目当じゃないかと姪の久子(浅田美代子)に告げ口したことで居づらくなります。

駄菓子屋で万引きをしていたマコトと再会したサワは、雪子の別れた夫で父親の健(柄本明)の家に転がり込みます。飲んだくれでスケベな健にうんざりしながら、マコトとは程よい距離感で心を通わせるようになります。息子が話そうとせず本ばかり読んでいるのが気に入らなかった健は、ある日泥酔してマコトに暴力を振るい、無理やり伸ばした髪を切ろうとします。それを見て激昂したサワは、健を殴り倒して逃げ出したマコトを追いかけます。これまでの老人たちと比べ、健には同情すべき点が見当たらないですねぇ

マコトに追いついたサワは、マコトの足元を流れ出た月経の血が足をつたってスニーカーを赤く染めているのに気づき、マコトが女だと知ります。彼女が言葉を失ったのは、幼い頃から母に男として育てられ心を閉ざした結果だったんですね。その夜ホテルに泊まった二人。翌朝、サワは雪子から貰ったワンピースをマコトに返します。その時、車のトランクの裏に貼り付けられていた茂からの餞別の100万円が入った封筒を見つけます。母のワンピースを胸に涙するマコトと大金に嬉し泣きするサワ。涙は一緒でも意味がだいぶ違いますね

サワは自分には子宮がないのだとマコトに打ち明け、マコトは男の恰好をするのをやめ、健に別れを告げて別の町へと旅立つ二人。

これから二人で生きていくのかな~~

サワはかなり強引に老人たちの家(生活)に踏み込んでいきますが、お金を盗んだり悪いことをしているわけではなく、むしろ老人たちは彼女と出会ったことで人生に再び希望を見出しています。

サワが作る料理もどれも美味しそうで、やっぱ、「食」って大事だよな~と考えさせられるところもありました。

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