杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

私のちいさなお葬式

2020年11月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年12月6日公開 ロシア 100分 G

村にひとつしかない学校で教職をまっとうし、定年後は慎ましい年金暮らしを送っている73歳のエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)が、病院で突然の余命宣告を受けた。5年に1度しか顔を見せないひとり息子オレク(エヴゲーニー・ミローノフ)を心から愛しているエレーナは、都会で仕事に大忙しの彼に迷惑をかけまいとひとりぼっちでお葬式の準備を開始する。まずは埋葬許可証を得ようとバスで戸籍登録所を訪れるが、中年の女性職員に「死亡診断書がなければ駄目です」と素っ気なく告げられ、元教え子のセルゲイが勤める遺体安置所へ。「息子は忙しすぎて、葬儀だのお通夜だの手配できないわ。私はただ、いいお葬式にしたいだけなの」そう事情を説明してセルゲイにこっそり死亡診断書を交付してもらったエレーナは、戸籍登録所での手続きを済ませたのち、葬儀屋で真っ赤な棺を購入する。
 翌日、ふたりの墓掘り人を引き連れて森の墓地に出向いたエレーナは、そこに眠る夫の隣に自らの埋葬場所を確保する。隣人のリューダに秘密のお葬式計画を知られたのは誤算だったが、すぐさまエレーナの心情を察したリューダは、ふたりの友人とともにお通夜で振る舞う料理の準備まで手伝ってくれた。リューダらが去った後、生前の夫との思い出の曲をかけながら死化粧を施す。
 かくしてすべての段取りを整え終えたエレーナの“完璧なお葬式計画”は想定外の事態へと転がり出すのだった……。(公式HPより)

 

突然の余命宣告を受けた73歳の女性が自身のお葬式計画に奮闘する姿を描いたロシア映画です。いわゆる終活ものですが、そこには悲壮感のかけらもありません。

遅くに授かった息子を溺愛しているエレーナは、彼の迷惑にならないようにとお葬式の準備を始めます。文学をこよなく愛し、聡明なエレーナには全く悲壮感がありません。自ら役所や遺体安置所に出向き、棺桶を台車に乗せて自宅に持ち帰ってくる姿はユーモアとバイタリティに満ちあふれています。客観的にみたら滑稽に見える彼女の奮闘ぶりですが、本人は至って真剣なんですね セルゲイやリューダが敢えて協力したのは、エレーナを恩師として、友として心から愛していたからに他なりません。地元で長年暮らし、住民に愛されている彼女の人柄が透けてみえます。

物語の冒頭で登場する「鯉」が騒動に一役買っています。元教え子に半ば押し付けられたこの鯉、とってもしぶといんです。叩きつけられようが、冷凍されようが、不死身なんだから しまいに心配して駆けつけたオレクの車のキーを飲み込んでしまいます。

エレーナはこの鯉をペットのように可愛がっていたので、オレクが腹を裂こうとするのに猛反対。スパイスを使って排便させようとするなど、コミカルな描写もふんだんに盛り込まれています。

オレクが鯉を逃がしたのは、仕事を言い訳に母親と向き合ってこなかったことを後悔して母親のそばにいることを選んだのだと思ったのですが、ラストのシーンはどう解釈するのが正解なのかしら?エレーナは永眠したのか?それともただ眠っているだけなのか? タフな彼女の事ですから、そう簡単に逝ってしまったわけではないと思いたいですね。

オレクは昔付き合っていたナターシャとの交際をエレーナに反対された過去があり、未だに引きずっているため独身のよう。再会した二人をまたしても引き離すエレーナの姿はまさに母のエゴに見えます。このエピソードはごく短いものでしたが、オレクが村に残るのであれば、二人の行く末も気になるところではあります

気になるといえば、劇中で流れるザ・ピーナッツの「恋のバカンス」のロシア語カバー・バージョンも印象的。ロシアで世代を超えて広く愛されているんだそうな。まさか恋と鯉を掛けているんじゃなかろうな?

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