杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

楽園の烏

2021年07月23日 | 

阿部智里(著) 文藝春秋(出版)

「あのお方は慈悲深い」誰もが称えた。同じ笑顔で。

「この山を売ってはならない理由が分かるまで、売ってはいけない」
資産家である養父の奇妙な遺言とともに、ある「山」の権利を相続した安原はじめ。その途端、彼のもとに「山を売ってほしい」という依頼が次々と舞い込み始める。この山には一体、何が隠されているのか? その答えを知っていると囁く美女に誘われ、山の内部に入ったはじめは、そこで信じられないものを目にする――。(本紹介文より)

猿との大戦から20年後。東京から、八咫烏たちが住む異界「山内」で再び物語が動き始めます。

何より驚いたのは、金烏一家が全く登場しないこと。それに雪哉が博陸侯雪斎と名を変えて山内の最大権力者となっていることでした。(私にとっては雪哉という名前の方が馴染み深いので以後も雪哉と書きます

自堕落でお気楽そうに見える安原はじめの行動も、彼の正体が明かされてみればなるほど!と思わされます。

頼斗は北家の中流貴族の子息ですが、素直で純真な性質と貴族の高潔さは西家の明留にとても似ています。

今作では千早がはじめや頼斗を助ける形になるのですが、雪哉とは袂を分かつ関係になっていて(でも敵対しているわけではないのね)、彼の口から出た言葉から明留が亡き人になっていると推察されます。千早は元々雪哉のことを全面的に信用していない節がありましたが、茂丸があんなことになってからの雪哉の変わりようが恐ろしいほどです。

そもそ奈月彦は同族の八咫烏に対して、決して酷い扱いはしなかった筈。とすれば金烏一家が出てこないのは・・・

はじめを山内に連れてきた「幽霊」の正体とは そして彼女の名前はやっぱり最終頁に出てきました。新刊いつ出るんだろ??

今回の舞台は朝廷ではなく、谷間です。「空棺の烏」で朔王と雪哉の出会いが書かれましたが、今作では彼の跡を継いだ「トビ」という少年が頼人やはじめたちと行動を共にします。年齢以上に賢くリーダーとしての素質も持ち合わせていますが、何といってもまだ子供。最終的には雪哉の冷酷な計画に騙される形で「家族」を喪うんですね。

山内の平和を乱す八咫烏は20年前山内を襲ってきた「猿」と同じだと冷酷に言い放つ雪哉に、あのひねくれてはいたけれど故郷や家族をこよなく愛し若宮を支えようとしていた青年雪哉はどこに消えてしまったのだろうと悲しくなってきます。

ただ、これも最終章で、彼が敢えて酷薄さを装った疑惑が出て来ちゃうんですね~~ はじめと共に山内を去っていった頼斗の行動も意味深です。

ますます次巻が楽しみになりました。

 

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