杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

アクアマリンの神殿

2024年01月24日 | 
😓 海堂尊(著) 角川書店

桜宮市にある未来医学探究センター。そこでたったひとりで暮らしている佐々木アツシは、ある深刻な理由のため世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りにつき、五年の時を超えて目覚めた少年だ。“凍眠”中の睡眠学習により高度な学力を身につけていたが、中途編入した桜宮学園中等部では平凡な少年に見えるよう“擬態”する日々を送っていた。彼には、深夜に行う大切な業務がある。それは、センターで眠る美しい女性を見守ること。学園生活に馴染んでゆく一方で、少年は、ある重大な決断を迫られ苦悩することとなる。アツシが彼女のためにした「選択」とは?先端医療の歪みに挑む少年の成長を瑞々しく描いた、海堂尊の新境地長編!(「BOOK」データベースより)


「バチスタ」シリーズの桜宮ワールド に触れるのは久しぶりです。一通り完結したと思っていましたが、今作はあれからまた時間が流れているのね。「モルフェウスの領域」を踏まえた物語のようですが、肝心の「モルフェウス~」未読です。😥 

アツシ君はどうやら「ナイチンゲールの沈黙」に登場した男の子が「コールドスリープ」から目覚めた後の話で、医学ミステリーというより学園青春モノでした。
彼は「ナイチンゲールの沈黙」では、レティノブラストーマで小児病棟に入院している患者であり、「医学のたまご」ではスーパー高校医学生になっています。そして「モルフェウスの領域」で再び9歳の患者として登場するようで、時系列では前後していますが、キャラは一貫しています。

「佐々木アツシ問題」って何?と思いつつ読み進めていくと、どうやら「コールドスリープ」の間の個人情報の取り扱いについて政治的議論があるようで・・・
田口先生が彼のケースをちゃっかり論文発表して教授になっている時点でそもそも個人情報云々は解決してそうなものなのですが😓 そういえば、アツシ君の思考は田口センセにそっくりな気がしました😁 

こ難しい医学用語やらでひねくり回してはいても、根っこは思春期男子の揺れ動く感情がメインで描かれます。睡眠学習で膨大な知識は得られても、感情は学べないので、社会に適応し人として成長させるために西野は彼を二学年下の中学に編入させたわけです。

成績も含め平凡な生徒を装っていたアツシの正体を麻生夏美という少女が見抜きます。彼女の父親が有名なシンクタンクの上層部だったとしても、その観察眼は中学レベルじゃないけどね😝 
半ば強引にドロン同盟に入れられ、ボクシングバカで真っ直ぐな性格の蜂谷一航 と、悲劇のヒロイン願望の破綻的文学少女の北原野麦と4人の中学生活が、担任の門間 や日野原奈々、彼女の腰巾着の豊崎豊 とのいざこざを交えて面白おかしく進んでいきます。

中学高校でアツシはボクシング部に入りながら試合出場は頑なに拒否します。それは彼が義眼だからで、そもそも出場できないのね。高校の対抗試合で最初で最後のリングに上がり東雲高校の天才ボクサー神倉と拳を交えて彼の中で何かが変わります。(神倉がまた絵にかいたような気障なイケメンで逆にいつの時代だよ!と突っ込んでしまいました😙

西野がアツシの住むセンターでの合宿を夏美に許可したのも同年代の友人と交わることで心の成長を期待していたわけですね。蜂谷と野麦のバカップルぶりはともかく、夏美と野麦の立場が目まぐるしく移り変わったりのドタバタなど、高校生活もそれなりに楽しんでいるアツシです。

やがて涼子の凍眠の目覚めの時期が迫ってきます。涼子はアツシが凍眠中のメンテナンスをしていた元未来医学探求センター非常勤職員 でアツシが思慕する女性です。

涼子は西野に目覚め後の選択を聞かれ「佐々木アツシ問題が解決していたなら新しい記憶を、していなければ今までのままで」と答えています。その決定権はアツシに委ねられることになり悩む彼に的確なアドバイスをするのが夏美です。
夏美にも仄かな好意を抱いていたアツシでしたが、彼は涼子の記憶を消さないという最終決定をします。それは彼の個人情報が晒されることでもあるようですが、その辺の事情はよく理解できずに読了。😓 西野はアツシに飛び級で東城大医学部進学の道を示し去って行きます。西野と涼子は恋人関係だったように思えますが、だとしたら彼が涼子の記憶の消去を望んだ理由がよくわかりません。あるいは凍眠を選択した時点で涼子は西野ではなくアツシを選んだわけですから、アツシに嫉妬していた面もある?

田口先生の元を訪れたアツシは彼と一緒に現学長となっている高階 を訪ねます。立場が変わっても相も変わらず高階先生の掌で転がされてしまう田口先生でした。
そういえば、アツシがメールのやり取りをしている曾根崎伸一郎の名も登場し、シリーズの奥深さを感じさせてくれます。

いずれにしてもまずは「モルフェウス~」読まなきゃね😞 
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