杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

火天の城

2011年02月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年9月12日公開 

1575年、織田信長(椎名桔平)は長篠の戦いで、甲斐・武田勢を破り、翌1576年、琵琶湖を臨む安土の地に居城を建設することを決意する。その城は、五重七階の天主を持つ大城郭であった。設計及び現場の総棟梁は、金閣寺を建立した京の池上家・池上五郎右衛門 (石橋蓮司)、奈良の大仏殿を造った中井一門・中井孫太夫 (内田朝陽)らとの図面争いを勝ち抜いた熱田の宮番匠・岡部又右衛門(西田敏行)に一任された。右衛門は妻・田鶴(大竹しのぶ)や娘・凛(福田沙紀)、門下の番匠らに支えられながら、築城を進めていくが、巨大な城を支える主柱を木曽上松の檜に求め、信長の敵・武田勝頼の領国に危険を顧みず分け入っていく・・・。

山本兼一氏の同名歴史小説の映画化です。戦国時代といえば、武将たちの国盗り物語が主流ですが、幻の名城・安土城を築城した名工が主人公の異色の時代劇であるとともに、歴史に名を刻まれることもない名も無い男たち、女たちにも光が当てられています。

五層七階の楼閣、天主の部材だけでも40000点もあり、主柱は樹齢2000年の神木を使用した前代未聞の“城郭要塞”安土城。その壮大な築城の過程を目にするという楽しみもありますが、第一の見せ場は、池上・中井と競った図面争いの場面。

信長の意向そのままに吹き抜けの天主を考えた両家とは異なり、城主の身の安全を配慮した上で敢えて吹き抜けを作らなかった又右衛門が、その意図を模型に火をつけることで証明してみせるのです。華やかな模型が炎上する様に、現実的な論拠を見せ付けています。

第二は、敵方の木曾義昌(笹野高史)に檜を懇願するシーン・・よりは、その配下である大庄屋陣兵衛(緒形直人)と山を歩いて心を通わせるところかな。

そして圧巻なのが、礎の石の沈下で城の主柱が危うくなった時に、皆の力を合わせて難局を乗り切る場面でしょう。

又右衛門お田鶴の夫婦愛や、凛の市造(石田卓也)への恋心、熊蔵(山本太郎)のうね(水野美紀)に対する想いなどが、主たる築城のエピソードに寄り添うように描かれているのも好感が持てました。特に田鶴が「女子は常に笑顔を絶やさぬように」との父親からの教えを守り生きる姿が良かったなぁ。家の中にあっては妻は日輪(太陽)の如くあれ、という教えは、今でも十分に通用する考え方ですね。

ただ欲を言えば、築城そのものの過程をもっと見たかったな。

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