月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

明日で退院。休日は終わる

2012-06-24 23:39:01 | 腹腔鏡下 子宮全摘術

6月24日 手術6日目



午前中、いつもの食堂で「いよいよ明日で退院だね」
「なんだか振り返ると貴重な体験して、愉しかったね」
などと、いつものメンバーで談笑。

午後1時~4時半まで、ブリーゼ・ブリーゼで開催されている大学の説明会になっちゃんと参加。
こうしていると、普通の人。待ち合わせの会場まで地下ではなく、光や風や人・車の行き交うところをみたくて路上を歩く。
説明会は、昨年のオープンキャンパスとほぼ同じ内容のことを、堂々となぞらえて説明していた。
クーラーがひどく効きすぎて寒いのでお腹のところにずっとタオルを置いて聞く。
後半、個別相談会があり、さてなっちゃんがどんなことを伺うのだろうかと傍観していたら、

「美学芸術って、専門的じゃありませんか。難しくありませんか?」と開口一番がこれだったので唖然!

「言語や原書で読んだり、なっちゃんには専門的すぎて少し難しいんじゃないかしら」とパンフレットをみながら
ふだん私が口にしていることを、そのまま教授に…。いうなんて…。

担当教授は穏やかでいい方で、
「大学で学ぶ美学芸術とは何か、何のために学ばせるのか」と基本的なことから、
幼稚園の子に説明するように、端折らず、ものすごく根気強く説明してくれていた。

久しぶりになっちゃんとの外出なので、門限を少しだけやぶって
ハービスエントにあるイタリアンカフェで、総菜パンとカプチーノを食べてから病院に戻る。

部屋にもどってホームウエアに着替え、大学のパンフレットに目を通しているうちに6時の夕食タイム。
今日の外出で皆、シュークリームやケーキ、御菓子などを買ってきてくれていて、食事の後で最後のお茶会をする。
「もう検温の時間なので、部屋へ戻ってください」と看護師さんに呼ばれたのが8時半だった。

明日でほんとうに退院である。今思えば、ほんとうに早かった。

手術後、感性が人一倍も敏感になっていて、いろんな思いがあふれていながら
時間が過ぎ、日々の混沌や人との交わりのなかに、それらが淘汰され愚鈍になっている。
再生された、などと安心してはいけない。時間とともに、神聖さも新生さも、失われようとしているのだ。


空は今日も灰色に曇り、空中庭園のビルとその前方にはウエスティンホテル。
あいかわらず点滅するオレンジの灯、路上にある蛍光灯の白、飛行機の道しるべとなる赤の灯、ビルの部屋を照らす明かり。
電車がいきかう音。
ゴトン、ゴトン。ゴトン、ゴトン…。

耳の奧であたりまえのように響く、電車の発着する音、大阪ステーションを走る音。
静かで空調管理され、温かい部屋「1214」。
満ち足りた「休日」だったのかもしれない。
みなさん、ありがとうございます。