月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

手術2日目 痛みは少ない

2012-06-20 22:26:10 | 腹腔鏡下 子宮全摘術
6月20日(水曜日)手術2日目



検温、脈拍、傷の状態の確認を
10時、昼2時、夜7時と、
毎日、3回看護師さんがチェックに来てくれる。
手術執刀医の佐伯愛先生も朝の診察前と、夕方必ず顔を見せて声をかけてくださる。

「大阪中央病院」。
ここは本当に快適で心地いい病院だ。

おそらく、12階の婦人科には手術を優先する、
良性疾患の患者さんに特化しているというポリシーもあって。
総合病院によくある、張りつめた重い空気がないせいなのかもしれない。

今日は昨日より、少し調子がいい。
胸の重さが軽減されてきたようだ。

手術2日目と1日目ではすいぶん違う。

朝食は手術前とかわらず食堂まで
そろり、そろりとお腹をかがめて歩いていき
懐かしい、6人グループの友達と一緒に頂いた。

「どうだった?心配していたのよ、昨日顔が見られなかったから」
「ありがとう。無事に生還しました。しんどかった二度とイヤと今は思うけれど、
ここに出てこられたのだから、早く回復できたんだと思う」。

同じ窯のメシを頂くうちに、どんどん気心がしれてくる。

体調は、少し胃のあたりと胸のあたりが重いのと、
お腹の下部に違和感がある。
でも痛みは少ない。

入院前に読み進めていた本を再び読み始めようか。
定位置の椅子に座る。
iフォンで音楽を聴く。

ドナドナの唄がまた頭の中でなり始めた。
仔牛から再び、理性を伴った
「人」の生活がすでに恋しくなってきた。



手術一日目

2012-06-20 12:48:55 | 腹腔鏡下 子宮全摘術


6月19日(火曜日)手術1日目


●朝6時
採血がある。検温、脈拍をはかる。
まだ朦朧としたままの状態だ。夜中に何度も目を覚まし、
窓の外のビル群をみようとするがよく見えない。

●9時 
佐伯愛先生がお腹の下にある傷の確認をしてくださり、
「きれいですね。いいでしょう」
「順調ですからドレーンをぬきましょうね。看護師さんに伝えておきます」
そういって退出される。たくさんの管から開放される時がくる、とぼんやりと思う。

●9時40分
「ゆっくりと起き上がれたら練習しましょう」
と声をかけられ、10度にベッドを傾けられるが、
血管が逆流するかのように苦しくなって、すぐに戻してもらう。

心電図、酸素マスク、血栓予防の機械をはずしてくれる。

一晩中、血栓予防のマッサージ機の音が耳障りだったので、静寂が戻る。うれしい。
昨日のあひるの看護師さんではなく、お洒落な看護師さんが体を拭いてくれた。

しばらくして佐伯愛先生が病室を訪れ、「あれ、まだ抜けていないの?」といって
ドレーンを私の大腸あたりからぬっーと引き抜く。
あまりにもけだるい、生温かいイヤな気持ち。
吐きそうになる。全身で嘔吐するような不快感でいっぱい。

●11時~14時
嘔吐感がとれなく、吐き気止めを依頼するが全く効果なし。時計の秒針が動くのがあまりにも、のろのろと過ぎ、窓の外の全くうごかない景色に目をやるが、
しんどくなって、すぐ瞳を閉じる。
立つ練習をするはずだったが、とても無理な話だ。
何もできない、体全体が重い。
若い看護師さんが見に来てくれるが、とても動けないので諦めて病室を後にする。
吸い口で水をわずかに口に含むのが精一杯の仕事。
「まだ気分悪いのね、起きられないのね、また後で体を拭きにきます」
と看護師さんがいい、退出する。

なっちゃんから電話。「何しているの?」「なんでしんどいの?楽じゃなかったの」
同じような電話が3回かかってくる。

●3時
お昼ごはんの3分粥は手をつけられず、そのまま看護師さんが引いていかれた。
昼すぎに、歩行の練習をするはずだが誰も来ない。時間だけが遅々と過ぎる。
曇り空だけが窓越しに見える。雨が降っているという。台風で学校は臨時休校だと聞く。

「もういいよ、入院はもう沢山!」と口に出していうが、
このままやり過ごし、残念な気持ちでいても仕方ないので、ベットを起こす訓練を自分でする。
45度に座る。無理、と思うとすぐ戻すを繰り返す。
しばらくしてゆっくりベットの横の手すりにつかまり、ふらふらと立ってみる。
頭から全身の血の気がさあーと下に落ち、びっくりするほどしんどい。
再び横になる。しばらくして、ゆっくりと立つ、を何度も試みるがまた横になる。

●4時
ようやく訪れた看護師さんが、私がベットで座ってみているのを驚き、尿の管をぬいて立つ練習に手を貸してくれる。
ふらふらで立ち上がれない。3度目にようやく成功、吐き気を我慢して1歩、2歩と歩いて…。

看護師さんに連れられて、院内をゆっくり一周手すりに寄りかかりながら、ほんとうにゆっくり左右に肩を揺らして、頼りなげな足取りで歩く。
お腹が45度に曲がっている姿をみて、
「みんなこんな感じです、みんなお腹を抱えて45度の角度で歩かれています」
と看護師さん。
2日前は3分で歩くところを20分くらいかけて、歩行練習。
一周回ると少し気分が良くなった。

●6時
手術後、5分粥を少しずる胃袋に流し込む。
米のニオイ、美味しいとは思わないがなつかしい味。

●7時
食事を6分ほど頂くと、少し気分が落ち着く。
コンコンとノックをして会社を早退した夫が顔を出す。
「もう椅子に座っていていいの?元気じゃないか」と安心した表情で話し、
8時の面会終了前に帰る。

●8時
寝ているより、起きてトイレへ行ったり、椅子に腰掛けているほうが気分がいい。
それで読みかけの本を読み9時前に就寝。一日50時間、と思うほど長い長い一日が終わる。

摘出した子宮筋腫は350gだったという。