![]() | 高く手を振る日 |
黒井 千次 | |
新潮社 |
FMラジオの小川洋子Panasonic Melodious Libraryで取り上げられていた本。
新聞の連載小説だったと言う。
小川洋子さんの読みと解説が1節1節を宝物のように響いて、その足で図書館へ寄り道。
老いの恋というだけに収まらない、人生の行き止まり感。
これからは思春期の反対で自分の人生に後始末をつけてゆく時期だと言う。
老い坂手前でそんな思いを日々繰り返しながら、まだ後回しにしている。
いつか体が動かなくなる前におっくうになる前にと思いながらもうおっくうでもある。
図書館で黒井 千次の棚になかった。
館内検索の器械で調たら棚にあると出た。
図書館員さんを伴って一緒に探してもらったら、ちょっとズレたところに鎮座していた。
ちょっとしたブームなどとラジオでは言っていたけれど、田舎の図書館にまでは波及していなかったか。
地味目な本だし、若い人ほど新しい情報に敏感ではない年頃向きなのも書棚を温めていた原因か。
なにはともあれいそいそと借りて帰った。
書評とおり文章に無駄がない。
この年齢までには20年余あるのだけれど、
ふとした行動やその思いに至る心理描写が身につまされる。
三分の二ほど読み進んだところでケータイが鳴った。
訪問介護事業所からだった。
ヘルパーから利用者の異変連絡。
家族へ先だろうと思うが責任転嫁かどの事業所もケアマネの私にかけてくる。
私から家族に連絡をするが出ない。
どのような状態か利用者宅へ急ぐ方が先だと、取るものも取りあえず家を出た。
老夫婦世帯。
苦しい状況で妻は夫の夕食の心配をし、自分はこのまま寝ていれば治ると言い張る。
ふたたび家族へ連絡。やっと通じた。救急搬送に決まる。
「お父さんもためにも病院で診てもらって早く良く成りましょう」
駆けつけた親戚の人も乗せた救急車を見送って、
親戚の人に連絡がつかなかったら…
親戚すら近くに居なかったら…
どこまでが私の仕事なのか知らないが、
入院の小物まで買い揃えにに走ったついこの前のケースなど思いながら帰路に着いた。
小説の同居息子の海外転勤話と老人ホーム入居に迷うシーンがダブる。
小説は作り事だが、現実にもざらにある話。
都会に働く子供たちがら取り残された老母父が私の利用者で、
今後の私の姿なのだ。
主人公もケータイメールのひらがなばかりの交信がどこかほほえましく暖かい。
ここに至るまでも娘の力を借りてやっと。
PCの新機種にもうあきらめている私とそう変わらない。
人と人の距離の置き方を知っている年代は24時間年中通じるコミュニケーションツールの使い方も謙虚だ。
「高く手を振る日」題名に希望あり。
改札口で手を振る姿に希望が見えてそう暗くならずに読み終えた。
軽く読めるが深い。
さぁ~実母に会いに行ってこよう。妹と敬老ごっごなどして来る。


その本、次に読みます!
本は大好きなんです。忙しい時に限って読みたくなり変な人間です・・・
おしゃれ猫さんも現役。
お疲れ様です。
本は昔ほど集中力がなくなりました。
読むつもりの本が
山になって置いてありあます^^;
>小説は作り事だが、現実にもざらにある話。
確かに、そうだからこそリアルティがあるのですね。
皆さんに一度は読んで頂きたい本です。
先の自分をいろいろ考えさせられました。