細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

教師の全力

2015-10-21 09:33:06 | 教育のこと

「そして、技術者はなくてはならない存在であると改めて感じました。」

横浜国大の教育学部の1年生の女子学生の、昨日の私の土木史の講義のレポートの最後に書いてあった文章です。

昨日は3回目の授業でした。相変わらず300人超えと思われますが、座席に座れない学生も少なくない状況での授業です。昨日のテーマは「橋梁の発達」。

例年、次回4回目の「都市の巨大化と環境問題」で、学生がぐっと引き寄せられるのですが、今年はさらに全力で講義を行っており、今回からレポートの質が相当に上がっています。何百枚のレポートに目を通して採点するのにはかなりの時間がかかりますが、本当に読んでいて楽しいです。

例年は、「橋」の語源についての話から始めます。さらに今年のこの講義の冒頭には、皇后美智子さまの「橋をかける」の中のお言葉も学生に見せました。私もこの講義は、教師としてまさに全力で臨んでいます。私が実際に訪れた国内外の橋や、私の実体験に基づいた話をたくさんするので、学生にとって大きな刺激になるようです。やはり、「現場」のもつ魅力、威力は偉大です。毎回、教えたいと準備した内容を使い切れずに終わってしまいます。話の派生や脱線が多いからなのですが、それでも学生たちに伝えたくて仕方ないことを伝えています。

昨年から、フランスのミヨー橋の写真や、本も見せるようにしていますが、この橋の魅力に取りつかれる学生は少なくありません。

私がこの講義に対して行っている工夫は無数にありますが、その一つに、学生を思考停止から解き放ち、いろいろと考え出す、考えたくなるキーワードを提示し、私の講義全体を通じて当事者意識をもって考え続けてもらう、という工夫があります。

多くのキーワードをすでに提示していますが、今日の講義については、「技術の伝承」「文明の持続可能性」「つなげる」などが学生たちの思考を刺激していたようです。「思考停止」も「当事者意識」も「東京一極集中」なども初回に提示したキーワードです。どんどんキーワードは増えていきますが、解き放たれた学生たちはどんどんと思考を深めていくことになります。

学生のレポートには各自のタイトルを付けさせていますが、「教師力」というタイトルのレポートもありました。教師の役割、影響が極めて大きいことを、学生たちも感じ取ってくれていますし、私も改めて感じています。

現代の若者たちに責任があるのではなく、現代社会を作り上げた大人に責任があります。若者たちは、本物を見せれば響きます。意識が変わり、実践に移す人も出てきます。今こそ、変わるべきときと思います。


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