細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

目的からのマネジメント

2014-11-01 12:14:33 | 研究のこと

私たちのコンクリート構造物の品質確保の取組みは、マネジメントだと思っていますが、小澤一雅先生と議論を始めてから、私自身がマネジメントについてより考察するようになったように思います。

マネジメントについては、様々なところに定義がなされているのかもしれませんが、どうもしっくりくるものがありませんでした。日本語が無い、ということは日本にもともと無かった概念である、ということですね。

よく、マネジメントとは「やりくり」である、と言われます。人、物、金などの種々の制約条件がある中で、最善の結果を出すためのやりくり、ということでしょう。

この解釈には同意できますが、本来のマネジメントはもっと深いものであると思っています。

以下は、英英辞典(Oxford)に示されている、managementの説明の一つです。これが、私にはそれなりにしっくりきます。

"the act or skill of dealing with people or situations in a successful way"

「人々や状況に対処するための行為やスキル。ただし、成功しなければならない。」というようなニュアンスです。

日本語の国語辞典等でのマネジメントの定義は、まったく私には理解不能です。

さて、昨日は、横浜市の職員の研修で講師を務めました。タイトルは、「目的からのマネジメント」としました。

目的あっての、マネジメントです。困った状況等がある中で、適切に現状を把握し、状況を改善するための適切な目的を設定し、それを手段を選ばずやりくりして達成すること、それがマネジメントであろうと思います。

様々なマネジメント、マネジメント論が世の中に溢れていますが、目的がよく分からないものや、目的が間違っているんじゃないの?と思うケースもしばしばです。というかほとんどです。

ですから、まずは目的を適切に設定する必要がある。これが実は非常に難しい。

物事の本質が見通せていないと、課題を解決するための目的を適切に設定することはできません。

私は、24歳のときに「7つの習慣」を恩師の岡村甫先生から薦められ、弟子たちでむさぼるように読んで議論し、どうすればその本に書かれているような生き方をできるか、自分の人生で実践を重ねてきました。自分自身の行動原則を定める必要がありますが、それをミッション・ステートメントと呼びます。以下が、現時点での私のミッション・ステートメントです。昨日の研修でも配布資料にこれを記載しました。(このエッセーを書いた後も、少しずつ、ミッション・ステートメントに追記しています)

○ この世に生を受けたことに感謝し、私の心身を健康に保ち、生きがいを持って生活する。
○ 学び続ける。
○ 妻と子供とともに、健康で明るい家庭を築き、家族として高まりあい、真のレクリエーションを楽しむ。
○ 親からは「これが私の息子です」、妻からは「これが私の夫です」、子供からは「これが私の父親です」と胸を張って言ってもらえる人間になる。
○ 家族、親、兄弟などが、健康で明るく、コミュニケーションを十分に持ち、お互いを信頼する集団になるように、行動する。愛情は素直に表現する。
○ 日本人であることを誇りに思い、日本の歴史・伝統・文化を大切に思う気持ちを持ち続ける。
○ 私の能力を最大限に向上させるように努力し、その能力を自身だけでなく周囲のために活用する。
○ 所属する組織、および社会活動においてリーダーシップを発揮するため、リーダーとしての自覚を持ち、適確な方向性を示すための自己研鑽を怠らず、適切なマネジメント能力を身につける。
○ 学者として、誠実に、真実を探求し、「豊穣な社会」を構築するために有用な知識を発信する。
○ 自らを向上させながら、国家の最重要システムである教育に全力を注ぎ、多くの若者の育成に貢献する。また、シビルエンジニア(土木技術者)として日本および国際社会に貢献する。
○ 私にしかできない観点で研究を行い、土木工学の進展に寄与する。
○ 大学にいる環境を活かし、多くの人と議論し、一流のシビルエンジニアになるべく研鑽を積む。
○ 学生たちが「この人からはいろんなことを吸収したい」と思うような魅力的な人間になる。
○ 私の信念に基づく行動が周囲にとっても良い結果をもたらすような人間になる。
○ 私の信念に基づいて目標を設定し、それを確実に達成していく人生にする。
○ 私がいることによってその場が明るくなるような人間になる。 

私は自身の中に確固たる原則があるので、自身の判断や行動はすべてこれらの原則に基づいています。 もちろん、マネジメントするための目的も、これらの原則に基づいて設定します。

私自身、マネジメントの本質が最も凝縮されている本は、この「7つの習慣」であると今、感じています。ドラッカーの本等ももちろんたくさん読んでいますが、そう思います。

自分自身をマネジメントできない人が、家族や組織をマネジメントできるはずがない。

自分自身の時間の使い方を上手にできること、がマネジメントの本質です。第三の習慣は、「最重要事項を優先する」であり、重要であるが緊急でない、第二領域に属することを、どれだけ自分の日常の時間に組み込めるか、です。

以下、昨日の研修の時間に紹介した、私の10/24~31のスケジュールです。研修で見せるために、移動の横須賀線の中でしこしこ作りました。

黄色はいわゆる研究的な時間。ブルーは飲み会ですが、すべて濃厚な、この国の将来を良くするための議論をしている懇親会です。私にとっては欠かせない時間で、ある意味では研究の時間です。ピンクも普通の人であれば嫌な時間(会議等)なのでしょうが、すべて大事な、研究的な時間です。講義も、普通の先生にとっては負担かもしれませんが、私にとっては皆さんご存知のように無くてはならない大事な時間です。この週は、木曜日が、大学全体で金曜日の講義の振替日になっており、普段であれば行う2限と3限のがありませんでした。今学期は、前学期がフランス滞在で不在であったことの埋め合わせのため、講義や講義の準備だけでもかなりの時間を費やします。

 

現在は浦和の実家に住んでいることもあり、移動の時間が長いときもありますが、その分、育児や家事をしなくてよいので、このような過密スケジュールが成り立っている面もあります。

上記のスケジュールのほとんどの時間は、私にとっては第二領域の時間になります。どうやって、そのような時間の過ごし方に持っていくか、が自身のマネジメントの肝になります。

誰だって忙しい。大学教員だって決して暇ではなく、特に工学系の教員はむしろ激務の職業の一つでしょう。だから、マネジメントが重要になります。

上記のスケジュールはごく一部ですが、このようなスケジュールが3週間、休みなしで続いたため、最後の方、夜の黒い部分(寝てる)が増えてきてます。疲労が蓄積してきたのですね。

今日、久しぶりの休養日で、完全復活できるよう、もうすぐ昼寝です。

仕事の準備時間も、基本は移動時間等でこなすしかありません。 そのための能力を中長期的に高めていく必要がもちろんあります。また、質の高い仕事をしていれば、アウトプットが高まるので、実は、準備に必要な時間が格段に短くなってきます。外部での講演や研修も、過去の資料を少し手直しするだけで十分に使えたり、また、資料などなくても何時間でも話すことだってできるようになる。これも、質を高めた時間を重ねることによってのみ、できるようになることです。

マネジメント論に戻ります。

視野を広げて、見識を高めた上で、現状を適切に分析して、課題を解決するための目的を設定しなければならない。

解決する、ということは「実践する」ということですが、そのためにも知識やスキルがないとできない。

だから、マネジメントとは、皆にできることではない、というのが私の結論です。

誰もかれもが、大きな課題を解決するマネジメントをできる必要はない。逆に、マネジメントできる人に任せなければならない。舵取りを、です。その中で、皆が力を合わせて実践し、課題が解決され、状況が改善されていくのです。

ですが、誰でもマネジメントできます。身の丈に合ったマネジメントをすればよいのです。

自分のことがマネジメントできていない人はまずは自分のことを。自分のすべての時間をマネジメントできない人は、ごくごく一部でもよい。

少しでもできるようになれば、その領域を少しずつ拡げていけばよい。私もそのようにやってきたつもりです。

昨日の研修では、私の理解する、上記のマネジメントの本質を伝えた上で(参考図書等も紹介し)、私が実際にマネジメントした事例を紹介しました。

一つは、 10/29(水)に横須賀高校で行った講義の事例。講義そのものをマネジメントしました。結果的に、驚くほどの双方向の講義が達成でき、その成果は生徒たちと一緒に作り上げたワークシートで検証します。

次の事例は、山口県のひび割れ抑制システムです。それで時間が切れて、復興道路の品質確保のマネジメントは概要説明だけに留まりました。

非常に具体的な事例(課題)の中で、私が実際にどのような判断、行動を、どのような考え方に基づいて実践したのか、をすべて公開しました。

一人でも多くの方々が、マネジメント力を身の丈に合って養っていくことが、この国の状況を改善するための重要な要素になろうかと思っています。 


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