細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

無知の知

2012-06-16 14:12:32 | 職場のこと

真の名言と思います。無知の知を自覚するたびに,生きていることを実感し,チャレンジする気が湧いてくるし,楽しくなります。

横浜市の職員に対する研修をここ数年やってきており,今年度は非常に多くなりそうです。コンクリート構造物の維持管理に関する研修を5回ほど,5月~6月に実施しています。夜の19:00~21:00に,横浜市の研修センターにて,50名以上を相手に行います。

私が3回,林さんが2回。コンクリートの基礎的なことや施工,初期欠陥などについて林さんが担当。その後,劣化のメカニズム,調査・診断,補修・補強などについて私が3回を担当。

コンクリート診断士を目指す,というのが一つの目標らしいので,それなりに踏み込んだ講義が必要です。かつ,JCIの診断士の受験者のための講習会のように完成されたテキストがあるわけでもないので,準備も大変です。

コンクリート診断士試験のための問題集を,受講者にテキストとして買ってもらい,補足資料を講師が作成,準備しての講義になりました。

6/19が最終回で,補修・補強です。

いざ,教えてみると,もちろんですが,自分自身の勉強になります。劣化のメカニズムくらいまでは,こちらも研究者なのである程度のことは話せても,調査・診断,補修・補強という内容になってくると,教科書や学会のテキストに載っている以上のことを話そうとするとなかなか大変です。

私もJR東日本での経験などがあるので,それなりの内容を提供することはできるとは思っていましたが,やはり維持管理の実務においては全くの素人です。すべてを知っているわけがないし,日々,維持管理の実務で奮闘しておられる方々の知識にかなうわけがない。

では,私のような大学の教員が実務的な維持管理について講義をする意義はないか,というとそうでもありません。実際の維持管理には多くの問題や課題が山積していると思っています。多岐に渡りますが,そのいくつかについて本質を説明し,どのような方向性に向かうべきか,を話すつもりです。技術者が力量を発揮し,構造物が適切に維持管理なされるようになるには,多くのチャレンジが必要だし,皆で協力すべきです。

6/19の最終回の補足資料の作成も週末の仕事になりましたが,いろいろと勉強しながら作っています。無知の知を認識し,いくらでも勉強することがあることにむしろ喜びを覚えます。

横浜市の方々には,知識よりは,維持管理の課題を一緒に認識していただき,ではどうすればよくできるのか,実践の方向性を一緒に考えてみたいと思います。 

結論としては,横浜市の研修,という「余分な」仕事をさせていただいたことにより,無知の知に気づき,勉強させていただき,結果としては総合力の向上につながると感じます。感謝いたします。