もう初日から約2週間近くたってからの観劇です(以下、いつものとおり敬称略です)。
劇場までの道は途中少々渋滞があったものの基本的に順調に予定時間どおり到着。
しかし、劇場に向かう歩道が工事で通行不可能なので何かと見たら、以前チケット売り場だった建物が解体されて更地に。あとは何が出来るんでしょうか。
劇場内はまだ早いのに結構な賑わいでした。当日券を買い求める人の列も長かったです。これって人気があるのかないのか?(笑)
まず売店で例のタカラヅカフィナンシェをお土産も含め3個ゲット。切手を買ってから横で昼食用のサンドイッチと盛合せを買って劇場へ。
今月2回の観劇は、兵庫と大劇場ともに良席での観劇です♪。
この日のチケットはWeb会員で頑張って9列目を確保。上手側の右端ブロックですが、いい席でした。
今回の「アンドレア・シェニエ」(植田景子脚本、演出)はベースとしてイタリアオペラの「アンドレア・シェニェ」があり、ストーリーも最初と最後の回想シーンの挿入以外はほぼそれに忠実に作られています。
話としては、「ベルサイユのばら」の続編あるいは後日談というべきフランス革命にまつわる悲劇です。しかしベルばらと違ってよくできた脚本で、これを観たら改めてベルばらの化石化・陳腐さ・型芝居ぶりがよくわかりました。(笑)
歌劇団も早く老害の呪縛(殴)から脱して古くさい演目をリニューアルしないとファンから見放されてしまいますよ。
本題に戻りますが、今回の作品、ベースがあるとはいえよく宝塚化・ミュージカル化されていました。
人物の造形も細部まで丁寧で、キャスティングも現花組メンバーの持ち味がよく生かされるなど、出色の出来ばえ。
なんでも蘭寿とむが「大恋愛物をやりたい」とリクエストし続けていたのに植田センセイが応えてくれたとか。なので、今回の芝居、ほぼあてがきと言ってもいい出来でした
日程さえ合えばまた観たいと思ったほど。今年上演のオリジナル作品としては一番の出来ですね。
舞台の全体の印象としては、セリフは少ないものの群衆シーンでは下級生をよく使っていて迫力がありました。群衆場面の演出はキムシンがうまいですが、植田景子はもっと細やかな感じの演出でいい仕事でした。たまたま最近スカステで放送していた「ハプスブルクの宝剣」を観ましたが、この人は最近とみに安定した力を身につけてきていますね。
写真ではわかりにくいですが、白と黒の天使が描かれています↓
幕が上がると、フランス革命から25年後のパリの文学サロン。
望海風斗扮するパンジュ侯爵が、革命末期ジャコバン党の恐怖政治の犠牲となった詩人アンドレア・シェニエを回想するところから始まります。
ここからフランス革命直前のパリ郊外コワニー伯爵の邸宅での夜会の場面に変わります。今回の場面転換はどれもよく考えられていて洒落た感じでした。
舞台装置も斬新でした。
巨大な天使の羽根が舞台を覆うように現れたときはびっくり。その羽根に当てる照明の変化とか、表裏を場面ごとに使い分けることで変化をもたらしています。舞台装置のデザインを松井るみが担当したと知って納得でした。
ストーリーは観てのお楽しみということでこのくらいにして、主な出演者ごとの感想です。
まずはアンドレアの蘭寿とむ。
彼女、容貌はますます痩せてきて少し痛々しいくらいですが、演技のほうは変わらずていねいで台詞も明瞭、歌も気になりません(殴)。
しかし舞台の進行とともに「復活」の主人公を思い出しました。実直で人格高潔、誠実を絵にかいたような役柄がそっくりです。「オーシャンズ11」のようないささか不似合いなチョイ悪役よりこういう役のほうがハマっています。
(以下、画像はすべてスカイステージ・「Now on Stage」から)
こういう信念に生きた詩人の詩はさぞやと思いましたが、歌詞やセリフに取り入れられていたものの劇中ではあまり紹介されていないのは物足りないところです。
マッダレーナ・ド・コワニーの蘭乃はな、まず気が付くのは歌。
ファントムではそれほどうまいと思わなかったのですが、「復活」とか「オーシャンズ」を観て歌ウマぶりを認識しました。今回は、のびのある歌にますます磨きがかかっていました。聞き心地のいい歌でした。
マッダレーナは、初めて出会った夜会ではアンドレアをからかったりして、ただのかわいいが無知な貴族の令嬢でしたが、革命勃発後の逃避生活のなかで、夜会でアンドレアに指摘された言葉を胸に秘めて生きていくうちに、たまたま目にした彼の作品を読んで次第にアンドレアを慕うようになっていきます。このあたりの苦難の生活ぶりとその下での人間としての成長ぶりをよく演じていました。
トップコンビのダンス、斬新な振り付けできれいです。
明日海りおのカルロ・ジェラールは、「スカピン」のショーヴランの延長のような役で、初めは春風弥里のジュール・モランとカブる厳しい反革命の摘発者役ですが、後半では主人公の人柄に共感して行く変化が観どころでした。
花組に来て最初の大劇場の舞台ですが、すっかり組になじんで安定した2番手ぶりでした。
ジェラールの同志である春風弥里のジュール・モランは厳格なジャコバン党員です。貧しい環境で育った彼は、反革命の摘発にひたすら没頭して片っ端からギロチンにかけています。こちらは最後まで冷酷な人物です。
望海風斗は回想シーンでの老後と劇中のリアルタイムのパンジュ侯爵を演じて安定した演技力を披露していました。この人の歌や演技は、オーシャンズを観てから強く印象づけられましたね。貫録さえ感じられました。
アンドレアの弟マリー=ジョゼフ・シェニエは華形ひかる。
彼の役は、おなじ詩人でも理想主義の兄とは好対照の、世間的な利害を優先する計算高い俗物です。でもすべてが欲得ずくかというとそうではなく、心の底では金銭に無頓着にあくまで芸術至上主義を貫く兄に対する敬意があり、それゆえに最後では兄を助け出そうと奔走します。この辺の屈折した人物をよく演じていました。
はじめは何というイヤなやつだと思いましたが。
後、全体の印象として印象的だったのは(男トップは別にして^^;)花組メンバーの歌のうまいこと。みんな演技力もあって、本当に若手からベテランまで層が厚いです。
とくに教会の腐敗を告発する歌を歌ったユディットの朝月希和と、最終の場面でマッダレーナと替わるレグリエ嬢役の乙羽映見が大抜擢されただけあって大した歌唱力でした。
よくできた脚本で、下級生まで役が多かったのですが、欲を言えば上で言ったようにセリフが少ないのが残念なところ。
それと、白い天使と黒い天使が善と悪を表現していますが、これは疑問でした。
あまりにも「エリザベート」や「ロミジュリ」と似すぎなので、せっかくのオリジナル作品なのにデジャブ感が強すぎ。両天使の役割もそれほどはっきりしていないので、敢えて入れるまでもないのにと思いました。
ショーのほうは歌場面が多く見応えがある作品でした。
Mr. Swingというだけあって男役が強く押し出された構成でした。最初の黒いスーツ軍団を率いる赤スーツの蘭とむが迫力のあるダンスで出だしから盛り上げます。最後もお約束の黒燕尾軍団で締めて、このショーは男役パワー全開。
フィナーレ↓
プロローグのトロピカルムードから船上ショー(短くて残念)や野球の場面、蘭とむと男役瀬戸かずや(3人の役替わり)の妖しいデュエットダンスの場面などがあったりと、いいショーになっていました。望海風斗の「マスカレード」もしっとり聞かせてくれます。
もっと見たかったセーラーの場面↓
全体的にショーのセットは、芝居の巨大な羽根に予算がとられたのか(笑)やや物足りなく感じましたが、場面ごとのセンスのある色彩の衣装となじみのある選曲で楽しめました。
何より、つまらないショーだとすぐ寝る私が一睡もしなかったのですから、間違いなくいいショーでした。(殴)
あとホッコリ気分になったのは、退団する春風弥里のために出番と歌詞の内容に暖かい配慮が見られたこと。
こういう気配りがタカラヅカらしくてうれしかったですね。
押されがちな娘役を代表して蘭はなも頑張って美声を聞かせてくれました。
そしてこの人が最後をしめくくり
花組は決してひいきな組ではなかったのですが、最近観た公演はみんな予想以上の出来でした。
今回の公演も、日程さえ許せばもう一度観たいと思ういい作品でした。
未見の方はぜひご覧ください。おすすめです。